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帽子が似合わないはずだった、今年の夏までは

2024年夏、カンカン帽(麦わら帽子)を買った。

かつて私が野球少年だった頃、帽子は五厘に刈られた坊主頭を日差しから防御するためだけのものだった。当時の高校球児がつばを洗濯バサミで止めて、絶妙な角度にこだわっていたあの帽子。(2005年頃)

私は帽子が嫌いだった。


祖母から「頭の形が綺麗やね〜」と言われて育ってきた私。野球少年時代は、その坊主頭をよく人に褒められた。実際、私の後頭部は丸く、当時の私は「坊主が似合ういい頭だ…」と自認していた。自分にとって、野球帽はオシャレなアイテムではなく、日差しから命を守るツールのひとつでしかなかった。なので、私の野球帽はチームメイトがかぶっているような、つばの形にこだわったそれではなく、なんのこだわりもない野球帽のままだった。

そんな高校1年の秋頃、野球を辞めて、坊主頭もやめた。髪を伸ばすのも小学生以来、坊主以外の髪型がしっくりこない日々を過ごす中で、ファッションとしての帽子が自分に似合うものだと、どうしても思えず、かぶろうとも思えなかった。そういったマインドを引きずったまま30代に入り、何故いまさら帽子をかぶるようになったのか?きっかけのひとつは「薄毛」である


30代に入ったぐらいからか、唐突に体毛が若干濃くなり、頭髪が薄くなってきたのだ。もともと髪型に無頓着だった私も、これには流石に若干焦った。いつのまにか青年の身体から、おじさんの身体へと成長しようとしはじめていたのだ。ただでさえ髪型なんかどうでもいいのに、薄毛という個性を追加されても困る!と思った。(本格的に薄毛になったら、ジェイソンステイサムみたいになろうとは思っている)

そんな時、たまに行く洋服屋さんでひとつのキャップに出会った。Golden Sombrero(ゴールデンソンブレロ)というブランドの、チープな6パネルのキャップだった。正面には女性の横顔のような刺繍が施してあるなんとも緩いそのキャップを、私はかぶってみたいと思った。キャップを試着した姿を鏡で見た時、「帽子は似合わないからかぶらない」と決めつけていた自分のことが、急にバカバカしく思えた。「帽子似合うじゃん!」と、昔の自分に言ってあげたかった。

このキャップとの出会いが6月頃で、それからは早かった。8月までの2ヶ月の間に、4つのキャップを買った。夏の日差しも相まって、出かけるときにはよくキャップをかぶるようになった。薄毛を隠すために帽子をかぶるわけではないけど、きっかけのひとつであることには間違いない。帽子をかぶれば髪型を気にすることもないし、なにより、帽子をかぶった自分も好きだ。


お盆も明けたつい先日、出先で気になっていた帽子屋さんのポップアップストアに出会った。100年以上前に創業したというその帽子屋さんは、麦わら帽子やストローハットを中心に帽子を製作されている。もともとその帽子屋さんのことを知っていて、どこか懐かしいカンカン帽に憧れもあった私にとって、この出会いはありがたかった。ポップアップストアに並んだカンカン帽を試着すると、「お似合いですよ」と店員さんが褒めてくれた。セールストークでも褒められると嬉しい。

帽子のメンテナンス方法を聞きながら1万円程度の支払いを済ませ、私は憧れのカンカン帽を手に入れた。夏を満喫する準備がついにととのった!(8月も終わり頃なので、準備がととのうのが遅すぎる)

カンカン帽が活躍してくれる来年の夏を、待ち遠しく思う。


古い建物の側面にある、幾何学模様を思わせる階段
直線で構成された階段、どれだけの人が歩いたのか




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