朝日新聞は今頃になって「指定相当の埋蔵文化財」の話を取り上げているんだけど、なんで?
12月2日の朝日新聞デジタルに、「「史跡に相当」の全国42遺跡、国がリスト初公表 保存と開発に配慮」という記事が出ていますが、これって文化庁から10月27日に公表されたもの(日経新聞電子版には、ちゃんと10月27日の22:26に出ています)なのに、なんで今頃取りあげているんでしょう?
これは、史跡相当の価値を有する27県の計42件の埋蔵文化財包蔵地(以下、「指定相当の埋蔵文化財」)を選び、公表したもので、「指定相当の埋蔵文化財」の候補を関係地方公共団体との協議により選択し、文化審議会文化財分科会の助言を得て、「指定相当の埋蔵文化財」としてリストに登載する遺跡(以下、「リスト登載遺跡」)を決定し、史跡になれば開発行為に強い規制がかかりますが、その前段階で土地の開発事業者らに保存に向けた配慮を促す狙いで、富雄丸山古墳(奈良市)や平城貝塚(愛媛県愛南町)などが選ばれています(「第一期リスト登載遺跡一覧」はこちら) 。
遺跡のある土地は全国に約47万件あり、各自治体が「周知の埋蔵文化財包蔵地」として地図で公表するなどしており、このうち史跡指定されるのは学術的価値が高く所有者の同意が得られたものに限られ、多くは発掘調査を行って文書や写真で記録を残して取り壊されるので、史跡指定前の遺跡の情報を国が把握し、あらかじめ価値を示すことで貴重な遺跡を守るだけでなく、事業者側も開発計画が立てやすくなることで、保存と開発の両立を図るのが狙いです。
リスト化のきっかけは、私も批判的にとらえている「高輪築堤」保存問題なのですが、確かの事前にこのようなものを掲げられていれば、そもそも開発計画を検討する際に配慮する可能性はあり得ますが、「指定相当の埋蔵文化財」だから開発しないというわけにもいかない場合もありますし、遺跡の残存状態は発掘してみないと分からない場合も多いですから、難しい問題です。
静岡県では、韮山城跡が第一期リストにあがっていますが、今後、韮山城跡周辺が大々的に開発されるという可能性は、それほど高くないように思いますので、韮山城跡は開発という点はあまり問題にはならないような気がしますが、昨今の状況を考えると自然災害で遺跡が破損するという可能性はあると思います。今回の話は開発で遺跡が無くなることを想定しているのみですが、自然災害による破損という点も何かしら考慮した方が良いように思います。