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ユネスコの「世界の記憶」に「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」件を推薦する国が、なぜ核兵器禁止条約に加わらないのか。

 11月28日に、文部科学省は、ユネスコの「世界の記憶」の国内候補として、「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」と「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」を推薦する、と発表しました(ユネスコ「世界の記憶」事業における 国際登録(2024-2025登録サイクル)への登録申請案件の決定について)。

  また、11月27日(日本時間では28日)から5日間、核兵器の保有や使用、開発などを全面的に禁じる核兵器禁止条約の第2回締約国会議が、米ニューヨークの国連本部で開催され、核兵器のない世界実現に向けて協議されています。アメリカやロシアなどの核保有国のほか、核の傘のもとにある日本やNATOの加盟国は参加していませんが、NATOの加盟国の一部はオブザーバーとして参加し、広島・長崎の被爆者が証言を行い、広島・長崎の両市長も発言することになっているにもかかわらず、日本政府は参加する姿勢を示していません。

 「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」の意義、重要性を、「国連の場などで重要性が指摘されている軍縮教育の素材としても意義が大きい。世界の人々が原爆投下で何が起こったかを知り、決して繰り返さないという人類共通の課題に取り組むために失ってはならない遺産である。」としているにもかかわらず、オブザーバーとしてすら参加する姿勢を示さないというのは、どういうことでしょうか。

 「唯一の被爆国である」だからこそ、それを繰り返させないようにしたいという訴えが一番効くのが日本であり、過ちを決して繰り返さないための「広島原爆の視覚的資料―1945年の写真と映像」を重要な遺産として「世界の記憶」に推薦する日本が、核をめぐる世界の状況が厳しさを増すいまこそ、核廃絶に向けた議論が必要だという意見が各国から相次いでいる現状の中で、核兵器の保有や使用、開発などを全面的に禁じる核兵器禁止条約の議論に加わらないという矛盾した状況にあることに、居心地の悪さを感じているのは私以外にも多いと思いますが…。

 なお「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」は、
①中国、南宋時代(12 世紀)に開版(版木が作成)された思渓版大蔵経 5,342 帖
②中国、元時代(13 世紀)に開版された普寧寺版大蔵経 5,228 帖
③朝鮮、高麗時代(13 世紀)に開版された高麗版大蔵経 1,357 冊
という、総数約 12,000 点に及ぶ木版大蔵経群で、徳川家康が収集し、増上寺に寄進したものです。15 世紀以前に作られた三つの大蔵経がほぼ完全な状態で所在されていることは、世界で他に類を見ない大変貴重なものです。
 ちなみに、「浄土宗大本山増上寺蔵 三大蔵経 電子化プロジェクト」として今年11月、この三大蔵を高精細デジタル画像にして、「浄土宗大本山増上寺所蔵三大蔵」の名称で、無償公開されました。

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