見出し画像

超巨大ブラックホールに「ガスの噴水」!?

 11月5日の朝日新聞デジタルに、「超巨大ブラックホールに「ガスの噴水」 解像度アップで動き確認」という記事が出ています。

 国立天文台の泉拓磨助教を中心とする国際研究チームが、アルマ望遠鏡を用いて、地球から約1400万光年の位置にあるコンパス座銀河の中心部にある超巨大ブラックホールを観測し、「超巨大ブラックホール周辺わずか数光年の空間スケールでのガス流とその構造を、プラズマ・原子・分子の全ての相において定量的に測定することに世界で初めて成功」したということです。
 また「その結果、超巨大ブラックホールへ向かう降着流を明確にとらえ、降着流が「重力不安定」と呼ばれる物理機構により生じていることをも明らかにしました。さらに、降着流の大半はブラックホールの成長には使われず、原子ガスか分子ガスとして一度ブラックホール付近から噴き出た後に、ガス円盤に舞い戻って再びブラックホールへの降着流と化す、あたかも噴水のようなガスの循環が起きていること」も分かりました。

 望遠鏡は、その口径が大きければ大きいほど弱い光や電波をとらえることができ、また解像度(視力)も向上するのですが、ある程度以上大きな望遠鏡は、技術的な限界から作ることが困難なため、「小さな望遠鏡を広い場所にたくさん並べ、それらを連動させて1つの巨大な望遠鏡として機能させる」という「干渉計」と呼ばれる仕組みを採用しています。
 南米チリのアルマ望遠鏡は、口径12mのパラボラアンテナ54台と、口径7mのパラボラアンテナ12台、合計66台を結合させることで、1つの巨大な電波望遠鏡を作りだしており、最大で直径16kmの範囲内に設置することができます。これは、東京の山手線の直径距離(田端〜品川間)に匹敵する大きさで、このときのアルマ望遠鏡の口径は実質16kmとなり、解像度は人間の視力に例えると「視力6,000」、大阪に落ちている1円玉の大きさが東京から見分けられる能力を持つ高い解像度のおかげで、今回このような詳細な情報を初めて明確に捉えることができたわけです。

 これらの観測成果は、 “Supermassive black hole feeding and feedback observed on sub-parsec scales”として米国学術雑誌Scienceに2023年11月3日付で掲載されています。

 アルマ望遠鏡のような巨大プロジェクトは、一国だけで開発・運用できるものではなく、世界中の国々が手を取りあい、人と技術と資金を出しあうことでアルマ望遠鏡は生まれたわけです。現在のアルマ望遠鏡の運用は、日本・台湾・韓国の東アジア、アメリカとカナダからなる北米、欧州南天天文台を構成する16か国と建設地のチリ共和国の協力で行われています。非常に重要なプロジェクトですね。


いいなと思ったら応援しよう!