ハイデルベルク(Heidelberg)へ①【ウィーン留学記】
はじめに
7月のなかば、ドイツへ行ってきた。ハイデルベルクに1週間、そしてミュンヘンに移動して2日滞在という、9泊10日の旅。目的地はハイデルベルク大学。知り合いの先生から、ぜひどうぞ、とお誘いいただき、授業やワークショップへ参加してきた。
今回は、ドイツへの旅、ハイデルベルク編、その1。
早速、遅延の洗礼を受ける
7月にハイデルベルクに行くんです、という話をすると、確実に言われたのが、ドイツの電車はよく遅れるよ、であった。鉄板ネタである。みんな一つは電車が遅れてトラブったエピソードを持っている。
よく言われるのが、日本人からするとビックリだよね?である。日本の電車は時間に正確なイメージを持たれているよう。しかし、事故や天候の影響を受けて頻繁に運行スケジュールが変わるので、逆にみんな日本に来たときにビックリするのでは、と内心思っていたりする。
今回のウィーンからハイデルベルクまでの道のりは、まずウィーン中央駅(Wien Hbf)からミュンヘン(München Hbf)へ、そしてマンハイム(Mannheim Hbf)からハイデルベルク中央駅(Heidelberg Hbf)へ。チケットは195ユーロ。ÖBBのアプリで事前に購入、チケットもアプリで提示した。
ウィーンからミュンヘンまでの電車は座席指定であったため、のんびり乗車し、着席。出発は時間通りであったが、途中、いきなり電車が停止し、そのまま30分ほど。車内アナウンスで説明が流れていたようだが、バリバリ音質のドイツ語を聞き取れるわけもなく。何で停止しているのかわからず、とりあえずジッとしていた。
そんなこんなで、無事にミュンヘンに到着したのは、予定時刻を過ぎたころ。乗り換えの電車が出発した後だった。代わりに何の電車に乗ればよいのか、何をどうすれば、とウロウロ。サービスカウンター(Reisezentrum)は長蛇の列。40分ほど並び、窓口で事情を説明すると、証明書(Bescheinigung)を発行してもらえ、代わりの電車も教えてもらえた。
さらにミュンヘンからマンハイムへの電車も遅延し、またサービスカウンターに行かないといけないのか、とビビりながらマンハイムに到着。しかし、マンハイムからハイデルベルクへの電車も遅延しており、無事に予定の電車に乗車。いろいろありつつ、なんとかハイデルベルクへ到着。
トラブルのうちには入らない程度の遅延であったが、すべてはじめての出来事であったので、終始ハラハラだった。
ハイデルベルク中央駅からホテルへ到着したのは、18時を過ぎたころ。ウィーンを出発したのが午前8時だったので、10時間ほどの移動となった。ホテルに到着すると緊張がほぐれ、どっと疲れが出た。
ハイデルベルク大学
ハイデルベルクに到着し、翌日から授業や講演会、ワークショップに連日参加。ウィーンと同じくドイツ語圏ではあるが、街の雰囲気はけっこう違うな、という印象。おおらかな、のびのびした空気。
ハイデルベルク大学(Ruprecht-Karls-Universität Heidelberg)は、とにかく大きい。大きいというか、街全体に大学の建物が散らばっている。歩いていると、これも大学の建物?これも?と、びっくりする。キャンパスというよりは街。旧市街は観光地エリアで、学生や観光客で、終日にぎわっている。
こちらの学生さんにメインの建物はどれか尋ねると、強いて言うなら、あの赤い建物かな、と。Karl-Jaspers Centre for Advanced Transcultural Studies. 学生さん曰く、正門や、大学の顔という感じのものが無いんだよ、とのこと。3日目はここでワークショップに参加した。
建物への入り方がわからないでいると、こちらの学生さんがやって来た。そして扉の横のベルを押すと、ビ―――!と、古いベル音がなり、中にいるスタッフの方が開錠してくれた。よそ者には、難易度が高い。
午前9時にスタートしたワークショップだったが、やっとまとまった休憩を取ったのは午後2時半。そして終了したのは午後6時半だった。終日ワークショップがあるよ、と事前に聞いていたが、こんな長時間とは思わず、びっくり。紅茶やコーヒー、そしてビスケットという簡易のケータリングが設置されており、各々好きに休憩しながら参加してください、というスタイル。
この「各々で」という空気感にも、そろそろ慣れてきた。眠気を飛ばすためにコーヒーを飲み、頭をはたらかせるためにビスケットをかじり。ウィーンでもそうだが、ワークショップなどのイベントでは、充実したケータリングが用意されている。コーヒー、紅茶、水は定番で、ジュースが置かれているときは決まってオレンジジュース。小さめのリンゴがごろごろ置かれているときもある。お好きにどうぞ、という感じ。
ワークショップの合間には、こちらの学生さんがランチに誘ってくれて、一緒に食堂(Mensa)へ。すでに夏休み期間に入っていたそうだが、食堂は学生でにぎわっていた。好きな食べ物をお皿にのせ、レジで計量器にのせて精算、という流れ。テラス席がたくさんあって、みんな風を感じながら、ゆったりランチ。
ミュージアムと学生牢
講義が無い日、こちらの学生さんが、ミュージアムと学生牢に行こう、と誘ってくれた。学生はみんな一度は足を運ぶ場所、とのこと。大学の公式グッズのTシャツやキャップなど、いろいろ売られていた。
ミュージアムには大学の歴史が展示されていた。ハイデルベルク大学は医学系、特に薬学が有名であるようで、特に力を入れて説明されていた。門外漢すぎて、詳しい内容はよくわからなかったが、ハイデルベルク大学が長い歴史を持つ大学であることは十分に伝わった。
ミュージアムの上には講堂があり、実際にイベントで使用される場所だそう。教会さながらの厳かな雰囲気。最終講義なんかも、ここで行われるという。講義というより、なんだか教えを授けられるという感じがするな、と。
そして学生牢(Studentenkarzer)へも案内してもらった。昔、問題をおこした学生たちが入れられた牢屋らしく、壁という壁すべて落書きで埋められている。名前と、牢屋に入っていた期間が書かれていたり、誰かの似顔絵が書かれていたり。どうやって天井に書いたんだ?と思いつつ。
学生牢を出た後は、オススメのパン屋さんに連れて行ってくれた。シナモンロールがいちばんおいしいよ、と勧められ、アイスコーヒーと一緒に。シナモンがじわっと来る感じ。甘いが、決してしつこくない。結構大きかったが、ペロッと食べてしまった。
美味しいシナモンロールを食べながら、学生さんたちとおしゃべり。みな日本語勉強中、なおかつ日本への留学を目指しているとのことで、話がはずんだ。同年代の学生同士、学んでいる場所は異なるが、悩みや関心は同じである。いろいろと情報交換ができ、一緒に頑張っていこう、と鼓舞しあえて、とても良い時間を過ごすことができた。
おわりに
もし電車でトラブったら連絡してきな!と、ウィーンの友人から冗談めかして言われていたが、自力でなんとかできたのは、我ながらよくやった、と思う。まったくスマートにはいかないが、なんとかする馬力は出るようになった。
学生さんたちからは、日本の大学での講義の雰囲気など、いろいろと質問され、興味を持たれるということは、結構嬉しいものだな、と思った。また、質問に答えていくなかで、自分のホームである日本がクリアに見えてきた。外から見る、ことの大切さも実感。
外に出て交流するなかで、自分自身が見えてくる。自分の輪郭が定まってくる。古い街並みと、おおらかな空気の中で、そんなことをじっくり考える機会となった。