外に出て、考える【ウィーン留学記】
歩くことが好きだ。どこかに行こうとするとき、グーグルマップで生き方を調べるが、徒歩で40分くらいなら、よし歩いて行こう、と思う。基本的に椅子に座って作業する毎日であるため、外に出て風を浴びながらフラフラ歩くのが楽しい。
4月にウィーンに来たころは、目に入るものがすべて新しかった。ウィーンはそこまで大きな街ではなく、観光地がギュッと集まっている。歩いていると、観光スポットとして紹介されている建物が続々と現れてくる。
広場、銅像、教会、博物館。地面や壁に目を向けると、誰々さんがここにいました、と伝える小さな碑がそっと佇んでいたり。著名人の上半身の像がそこら中に。街が積み重ねてきた歴史が、あちらこちらに散らばっている。
少しずつ、街に馴染んできた感じはある。しかし、よく似た建物が並び、角を曲がる時には道の名前を確認しないと、すぐに迷子になる。まさに迷宮。最初のころは、文字通り、右も左もわからなかった。
何気なく、地名にベートーベンやフロイトの名前が入っていたり。何か看板が出ているぞ、と近づくのモーツァルトの家の一つだったり。風景に目が馴染んできたとはいっても、歩いてみて、街をよく眺めると、驚きがたくさん。トラムに揺られて街を眺めるのも好きだが、歩いて、立ち止まってみて、見えてくるものもある。
そして良いなと思うのは、ベンチが多い。どこにでも座るスペースがある。おしゃべりしている人たちや、読書をしている人、のんびり煙草を吸っている人など、ベンチの使い方はさまざま。歩き疲れたな、というとき、腰を下ろせる場所がどこにでもあるのは、とてもいいな、と思う。
部屋で資料を読んでいても、どうも集中できない、というときは、思い切って外に出てベンチで読んでみる。環境が変わると、気分が変わって作業が進む。机に向かって文章を書いていても、何も言葉が出てこない、というときは、外に出て歩きながら考えを整理する。
大学のキャンパス内も芝生が広がり、ベンチや、ハンモックまで吊られている。シートを引いて寝っ転がって本を読んだり、木の根元に腰かけてパソコンで作業している学生など、ちらほら。机に向かい集中して取り組む勉強も大事だが、何より大切なのはリラックスすることだ、と最近思っている。
公共空間でくつろぐ、という習慣は、日本で持つことが難しい。人目がある場所では、ちゃんとしましょう、という空気が強い。それはそれで、もちろん大切なことだと思うが。たくさん人がいる場面でも、リラックスして、自分を解放することもまた、大切なことだな、と。
最近は暑すぎて外に出る気が失せるが、意を決してドアを開けてみると、風がブワッと吹いてきて驚く。太陽の光は容赦ないが、いつもいい風が吹いている。日陰のベンチを見つけて座れば、スッと暑さもやわらぐ。日照時間が長い期間も、そろそろ終わりに近づいている。今のうちに、まぶしい光を浴びておこう、と思う。
と、ここまで記事を書いておいて、先週は暑さでダウンしてしまっていた。完全に夏バテで、やる気も出ず、食欲もなく、という感じ。ダラダラ、ゴロゴロ過ごしてしまったことを、少し反省。今日は朝から強い雨で、気温も16℃。雨の音を聞きながら、今日は久しぶりに集中できそうである。