ミュージカル【ウィーン留学記】
はじめに
ウィーンといえば音楽。ウィーンに出発する空港で、楽器を背負った音楽教室ご一行に出くわし、やはり音楽やりに行く人が多いんだな、と思っていた。今身を置いているアパートでは、夕方になるとヴァイオリンを練習している音が外から聞こえてくる。
スーパーマーケットにクラシック音楽のCDが売られていたり。ベートーベンの名が入った地名があったり。まだ訪ねたことはないがモーツァルトが暮らした家がミュージアムとして遺っていたり。
今回は、そんなウィーンでミュージカルを見に行った話を。
「民衆の劇場」
音楽を聴きに行きたい、とずっと思ってたが、なかなか時間が無く。また、どうやって公演情報を見つけるのか、チケットはどうやって取るのか、など、何もわからず。調べてみるとTicket Gretchenというアプリが便利だとか。早速ダウンロードして、公演情報をチェック。
コンサートや演劇などジャンルに分けて公演情報を紹介してくれる。眺めていると、「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music)のミュージカルの公演情報が!
これを見に行こう、と決めてチケットを購入。座席の種類も値段も、日本でミュージカルを見るのと、そんなに変わらない。良い座席は100ユーロを越えるが、上階の端の席は30ユーロほど。わたしは2階の席を35ユーロで購入。2階といっても、ヨーロッパはエントランスを1階にカウントするため、3階席である。
劇場はフォルクスオーパ(Volksoper)という古い劇場。ウィーンにはいくつか有名な劇場があり、フォルクスオーパはその一つ。
はやめに劇場に到着すると、すでに劇場前には人がわんさか。ドレスコードが気になっていたが、特別な日らしく着飾った人もいれば、Tシャツ姿の人も。みなそれぞれ好きな格好でミュージカルを楽しみに来ている、という印象。気取った雰囲気はなく、まさに「民衆の劇場」(Volksoper)という感じだった。
劇場前にはシャンパンを売る小さな屋台が出ていて、シャンパン片手にゆったり談笑している人もチラホラ。周囲にはレストランやカフェが並び、そこで公演開始を待っている人も。楽しみ方は人それぞれ、という感じ。
スタッフの方にアプリのバーコードを見せると、手持ちの機械でピピッと読み取ってくれて、スムーズに入場。座席についても英語でササッと案内してもらえた。
The Sound of Music
公演は全ドイツ語だが、難しいセリフは無いため、ストーリーを知っていれば聞き取れる範囲だった。ドイツ語のスキルはまだまだだが、英語字幕も見つつ理解できた。3階の席であるが、ステージ全体はしっかり見えた。むしろステージの奥行まで見えたので、良かったかも。
笑えるシーンでは笑い声があがり、見せ場の歌唱が終わると拍手とともに指笛も響く。フォ―――!という熱狂した声もときどき。客席がにぎやか、大盛り上がり。
ステージ前での生演奏もすごい音量で、音圧がすごい。日本と比べると湿度が低く、空気が乾燥しているが、そのせいか音がビシビシ鮮明に聞こえてくる(気がした)。特に弦楽器の、弦のビリビリした震動に驚かされた。そういえば音とは空気の振動であった、と思い出させられた。
公演の最後には会場全体でエーデルワイスを合唱。ドイツ語歌詞が字幕で流れ、それを見ながら気持ちよく一緒に歌う。
後日、こちらでお世話になっているウィーン出身の先生に、ミュージカルを見に行ってきたことを伝えると、「こっちでは、サウンド・オブ・ミュージックは全然有名な作品じゃないよ」と教えてくれた。えっ、そうなのか。その先生は日本に留学経験があり、日本に行ったときにサウンド・オブ・ミュージックがあまりにポピュラーな作品でびっくりした、とのこと。
しかし、この劇場では繰り返し、長く上演されている作品のようである。
おわりに
サウンド・オブ・ミュージックは馴染みのある作品で、映画は何度も見ているが、全編ドイツ語で鑑賞できたのは良い経験だった。作品を鑑賞すると同時に、鑑賞する会場の雰囲気を味わえたのも、また。家でひとりで映画を見ることが多いが、舞台上と客席のコミュニケーションを肌で感じる体験は格別だな、と。隣に座っていたおばあさんが、ちょいちょい話しかけてきたことも含め、よい劇場体験となった。