芒種(ぼうしゅ)
6月6日から6月20日頃、稲や麦などの「穂」が出る植物の種を蒔く時期を芒種(ぼうしゅ)といいます。
冬の間何もなかった田畑に、苗が植えられ、雨の日が増えてくる頃。
小さな自然の変化は、音を立てることなく徐々に変化していき、よそ見をしていると小さな変化を見逃してしまいます。
日本人は一年の変化を72に分け、七十二の“候(時季)“として楽しんでいたと思うと、とても豊かな気持ちで暮らしていたんだと思います。
芒(ぼう)は「のぎ」とも読み、稲科の植物の穂先にあるピンピンと針状の突起のことです。
昔から「芒」のある植物の種まきをこの時期にし、麦の刈入れや田植えをする目安でした。
四季の中では3番目の「夏」
七十二候では、
・螳螂生(かまきりしょうず)
・腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)
・梅子黄(うめのみきばむ)
七十二候を読んでいると、昔の人が何を信じて暮らしていたのかを垣間見ることができ、くすっと心が緩みます。
昔は腐った草が蛍に生まれ変わると信じられていたらしいと聞き、ファンタジーですが、想像力の高さに少しうらやましくもあります。
この時期には、紫陽花があちこちで花が先ます。品種改良や育った土壌で色が変化するため、雨の日にも紫陽花のおかげで、雨の景色を鮮やかに彩ってくれます。
食べ物は、「とまと」「らっきょ」「梅」などが旬になります。
とまとの旬は、真夏のイメージですが、実は芒種の頃に旬を迎えます。
甘味と酸味の組み合わせで、体の熱を冷ましてくれます。
暑さによるのぼせや、口の中を潤してくれます。また胃腸の働きを良くし、消化を助けます。
肝の働きをよくし、血を綺麗にするとされているので、コレステロールが気になる方や動脈硬化、成人病が気になる方にもおすすめの食材です。
らっきょうは中国が原産で、日本に伝わったのがいつなのかは明確ではないようです。昔は匂いの強さから薬用としては使用されてていただけで、室町時代になり食用とされ、江戸時代になりらっきょうの栽培方法が普及し全国へ広まります。
6月になると、新鮮ならっきょうが出回り、保存食をつくる家仕事がはじまります。
薬膳では、陽気の通りをよくして、体やお腹を温める働きがあるといわれています。肺や胃、大腸の気を流してくれるため、血瘀や気滞タイプの人におすすめの食材です。
梅もまた中国から1500年程前に遣唐使により持ち込まれたとされています。
慢性の下痢や、食中毒による下痢にも効果があります。喉のかわきや腫れを感じた時に梅をお湯で割って飲むのもおすすめです。
この時期には、太陽の日差しが届かない日が多いため、気分が上がらないと感じる方も多いのではないでしょうか?
実は、今日はなんだか「気が重いな」と何気に感じることは、とても自然なことです。
水は空気より重たく下へ溜まる性質があります。
空気中の水分が多いと当然私たちの体の中の水分も多くなり、汗や尿で出せない水分は体に溜まります。そして水分は体を冷やします。
水分が冷えて溜まると。。体のあちこちで不調が出てきやすい状態になります。
(言葉で伝えると、これだけなのですが)
季節を知り、「水を出す」知恵と工夫を知ることで、体の水分を上手に外に出せるようになります。
雨の多いこの時期を、軽やかに過ごす工夫をしてみてはいかがでしょうか?