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かかりつけ薬剤師&かかりつけ薬局  ~制度が変わった時に考えること~

どうも、薬剤師の川島敦です。

今日は「何かが変わった時に何を考えますか?」というテーマで書いていこうと思います。

今回、なぜこういうことを書こうと思ったかというと

「かかりつけ薬局の制度化」という記事を見たからです。

かかりつけ薬局とは

かかりつけ薬局というのをザックリ説明しますと

行きつけの薬局を一つ決めておいて、病院にかかって処方せんを出されたら、その薬局で薬をもらうようにしましょう。

ということです。

ただ日本の医薬分業の仕組みからいうと、この制度はあまり機能してないんですよね。

何故かというと、病院のとなり(もしくは向かい)に必ずと言っていいほど薬局があるので、大多数の患者さんはその薬局で薬をもらっていると思います。

では、わざわざ病院の隣の薬局でなく、行きつけの薬局で薬をもらうメリットって何でしょうか?

かかりつけを選ぶメリット

①話しやすい薬剤師がいる

②話しやすいスタッフがいる

③結果、色んな心配事を相談できて安心。

平たく言うと、以上です。

一にも二にも、人なんですよね。

もちろん、家の近くで待ち時間が少なくてすむから、という利便性が理由の方もいますが、それでも家の近くの薬局の中でどこを選ぶか?というと人で選ばれます。

(エリア的に薬局が無い、一軒しかない、という地域は除きます。)

かかりつけのシステム的なメリット

人以外のメリットで言うと一番はコレですね。

・一つの薬局で薬をもらうと薬の重複投与(ダブり)を防げる

A病院でもらっている薬とB病院の薬の飲み合わせのチェックだけでなく、患者さんが今まで薬を使ってきた記録があるので、薬のアレルギーのチェックの精度も上がります。

また、その人の体調変化も追えているので、薬を飲んだ後の効果や副作用の確認もしやすいですね。

この辺は、いわゆる「点」でなく「線」で追えた方が、薬剤師としても薬の効果や副作用が推測しやすいので助かります。

※ちなみに、マイナンバーカードの保険証化、医療データ(レセプトデータ)との連携により、理論上、薬の重複に関しては防げるシステムは既に構築されています。

話がそれたので本題に戻ります。

「かかりつけ薬局という制度」が明文化された理由

実は2016年に「かかりつけ薬剤師」という制度が始まりました。

それまでにも「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」という言葉は業界内には生まれており、重要視されてはいたものの、なかなか浸透しないという現実がありました。(理由は先に書いた通り、病院の目の前に薬局があるから)

そこで厚生労働省は「かかりつけ薬剤師」を制度化して、患者さんに「かかりつけ薬剤師」を選んでもらう、という手を打ってきました。

「かかりつけ薬剤師」に選んでもらった薬剤師のフィー(報酬)を増やす、というインセンティブを付けて。

(服薬指導1件あたり約300円、3割負担の方では約90円の差額)

この時の業界の反応は?というと

「薬剤師をホスト(ホステス)化する気か!?」

「今までと同じことをやってお金を多くいただくのは患者さんに対して出来ない!!」

という声が大きかったと思います。(実際、今でもそういう声が大きい)

(※お金のメンタルブロックについては別記事で書けそうですね。)

じゃあ、僕たちの薬局はどうだったか?というと

選ぶのは患者さんだから、全ての患者さんに制度の話をしよう」

というのが社長のスタンスでした。

「かかりつけ薬剤師」を一人選んでおくと安心だよ、という制度が出来たこと。

選んでおくと「薬の飲み合わせのチェック」だけでなく、体調変化の相談や、必要に応じて医者へのフィードバックもしてもらえるよ。

といったメリット。

当然、その分「服薬指導料」が上がることもきちんと伝えました。

結果どうなったか?というと、100人以上の方が「かかりつけ薬剤師」に選んでくださいました

この結果には、僕だけでなく、スタッフ、指示を出した社長も驚きました。

多くの患者さんから「一人選んでおいた方が良いというのなら、あなたにするわ」と言ってもらえたことは、非常にうれしく、身が引き締まる思いをしたものです。

それだけ自分たちのやってきたコトが認められた、ということなので。

話がそれたので戻します・・・。

今回は「かかりつけ薬剤師」ではなく、「かかりつけ薬局」という制度が発足しました。

これが意味するのは何なのか?

・薬局の立地依存(隣で薬をもらおう)から人依存(かかりつけ薬剤師制度)へ舵を切った

これが思った以上に進まなかったわけですね。

(※業界内でも反対の声が大きければ進むわけがないですよね。)

人依存から箱依存へ?

だったら人依存(かかりつけ薬剤師)ではなく箱依存(かかりつけ薬局)にした方が、かかりつけは進むのではないか?

と今回の制度化につながったのではないか、と思っています。

今回の「かかりつけ薬局」の要件には「医師へのフィードバックが平均月に30件以上」というものがあります。

個人的には、これを「薬局で医者に声をあげて、薬の出しすぎ(処方)を何とか止めてくれ」というメッセージじゃないか、と受けとめています。

そして、このメッセージに応えられない薬局(箱)や薬剤師(人)ならば、システムで防ぐので要らないよという最後通告。にさえ思うこともあります。

※あくまで個人の見解です。

薬剤師の使命は「医薬品の適正使用」をもって「国民の健康に寄与する」ということという本分に立ち返る。

お隣の医者(処方元)ではなく、患者さんと向き合うことが求められている。

これを改めて感じた次第です。

話の主題と逸れてしまったので、タイトルを変えておきます。

(もともとは「制度が変わった時に何を考えるか?」がテーマでした)

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薬剤師 川島敦
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