ZOOM要約R4.10.13

質問①

「仕事で漢方薬に触れる機会が少ない。お客さんも西洋薬の方を好まれるがどのように漢方で対処したらいいか?」

回答:
無理に漢方薬にこだわる必要はないです。

例えば銀翹散は風邪の中でも炎症系の症状によく使いますが、それならイブプロフェンとか使っちゃった方が早いので(笑)

何らかの理由でイブが使えない時の選択肢として銀翹散…みたいに、

・明確な治療のターゲットがある場合は西洋薬
・西洋薬では不十分な隙間を埋める感じで漢方薬

として使うのがいいと思います。

また、漢方の相談経験が少ないことに関してはこのスクールで事例をたくさん共有していきましょう。

漢方薬への苦手意識がある方にはカタカナ名で販売している漢方薬(ダスモック、アルピタンなど)があればとっつきやすいかも?


質問②
「胃薬にも生薬が入ってますがこれは漢方薬と同じ考え方でいいですか?」

回答:
例えばパンシロンには人参や桂皮入っていたり、太田胃散なら陳皮やゲンチアナなどが入ってる感じですね。

生薬以外の成分がたくさん複合されているので単純に漢方と同じように考えるのは難しいですが、

例えばパンシロンなら人参が入っているので
「気を補う」→食欲不振の人向け
などは推測できます。

人参を含む代表的な漢方薬は六君子湯ですが、これも脾胃に気を補う薬です。

太田胃散の場合は例えば陳皮は理気薬といって、「気はあるけど上手く巡らない」という人向けですね。ストレスなどで胃が悪い場合は選択肢になるでしょう。

例えば補中益気湯にも柴胡や陳皮が含まれますので、ストレスで消耗しきった胃腸に人参で気を補いつつ柴胡でストレスを抑え、陳皮で気を巡らすような役割があります。


質問③
「子どもで眠気が出ない酔い止めとして五苓散は選択肢になるか?」

回答:
別件で添付文書の適応の問題がありますが、そこさえクリアできれば五苓散や半夏瀉心湯は選択肢になると思います。

どちらも酔い止め効果があるというよりは、乗り物酔いによって出てくる症状を抑える感じです。

五苓散は腹部で水が停滞するようなタイプの吐き気を改善します。お腹の動きは悪くて水がチャポチャポたまるタイプの人向けです。

半夏瀉心湯はその逆で消化管が暴れてる感じの人向けです。強い吐き気でお腹がゴロゴロ言ってたら半夏瀉心湯はありです。

ただ、どちらも西洋薬の酔い止めと比べて作用の持続時間は短いです。

例えば予防的に飲む場合、2〜3時間のバスぐらいなら漢方薬で問題ないですが、10時間とか乗る場合は漢方薬なら繰り返し飲む必要があります。この点はメクリジンみたいな西洋薬の酔い止めが便利ですね。


質問④
「このスクールでの勉強の進め方ですが、今後はその週に配信された動画に関する質問に答える感じですか?」

回答:
ZOOMでの質問は漢方に関することなら基本何でもOKです。

人によって動画教材の進み具合も違うと思うので、その時に気になったことや仕事で生じた疑問などを持ち寄ってくれればOKです。

このスクールでは

漢方薬⇒生薬⇒症状別⇒基礎理論

の順でコンテンツを出しますが、例えば極端な話、最初の動画を見た後で「気血水の気って何?」みたいに後半の範囲について聞いてもらっても大丈夫ですし、その逆もOKです。

ZOOMでは漢方のことなら好きなことを質問してください。(同じことを何回聞いてくれてもOKなので既出とかも気にしなくてOKです。何度も聞かれるということはそれだけ重要ということなので何度でも答えます)


質問⑤
「漢方は錠剤の方が粉よりも効果は弱まる?」


回答:
たしかに漢方の通説としては
「加工するステップが多くなるほど成分が失われていく」
というのはあります。

なので「粉よりも錠剤の方が加工されているから効果は弱そう」と思うかもしれませんし、多少はあるのかもしれませんが、そこまで大きくは変わらないと考えてもらって大丈夫です。

煎じ薬とエキス剤の違いはイメージとしてはドリップコーヒーとインスタントコーヒーです。

煎じ薬はドリップコーヒーです。ひきたてのドリップコーヒーは風味や香りがあって美味しいです。

エキス剤はインスタントコーヒーです。ひきたてのコーヒーほどの香りは少し失われていますが、それでもコーヒーとして最低限の機能は保っています。

イメージとしてはこんな感じで考えてください。

例えばツムラの顆粒なんかは1度錠剤にしてから砕いて作ってるそうです。

こういったこともあるので錠剤と粉で大きな違いは無さそうです。


質問⑥
「同じ漢方薬でもメーカーによって配合が異なりますか?」

回答:
微妙に違うことはあります。

漢方薬にも製法のレシピみたいなのが国で定められたやつがあって、そのレシピが複数ある感じです。

メーカーによってどのレシピを採用するかが違うので生薬の比率などは微妙に変わります。

五苓散の場合は「蒼朮または白朮」を使うとされてるのですが、例えばツムラの五苓散は蒼朮で、コタローの五苓散は白朮だったりします。

蒼朮は利水作用に優れガッツリ水を追い出すのに対し、白朮はお腹に体力を補ったりお腹に溜まった水を回すなど、どちらかと言うと虚弱体質の人向けです。

柴胡加竜骨牡蛎湯の場合はツムラには大黄が入っていないけど、クラシエなら大黄が入ってるとかの違いもあったりします。


質問⑦
「葛根湯を乳腺炎に使う時は辛涼解表ですか?」


回答:
乳腺炎に葛根湯がしばしば使われるのは事実ですが、メカニズムまではハッキリしていないと思います。

麻黄や桂皮で温めて巡らせたり、芍薬で鎮痙・鎮痛などの効果があったりと言ったニュアンスが強いです。

なのでこれなら葛根湯よりもいい漢方薬ありそうですね(笑)


質問⑧
「睡眠改善薬を頻繁に買いにくる年配のお客さんにどんな漢方を勧めたらいい?」


回答:
細かい状況によって変わりますが、ご高齢の方で

「すぐに目が覚める」
「眠りが浅い」

といった場合に釣藤散が使えることはあります。

イライラが強めなら抑肝散ですし、

比較的若い人向けだけど高齢者でも汎用性は高い酸棗仁湯なども選択肢です。

体力虚弱でメンタルの落ち込みなどがある人なら加味帰脾湯もありです。

柴胡加竜骨牡蛎湯は神経過敏な人向けです。細かい音などが気になったりイライラしてる場合向けなので、このお客さんには適応になりにくそうな気がします。

質問⑨
「自分の今の証について考えています。身体は冷えていてどちらかというと虚証かなと思うのですが寝汗は出ないのでどっちかなと悩んでいます」


回答:
寝汗はたしかに虚証の方の特徴の1つですが、
「寝汗がないから実証」とも限りません。

寝汗は主に表の気が足りない状態です。
ここには防已黄耆湯などの黄耆を含む薬を使います。(黄耆は肺から取り込んだ気を表に巡らせる薬です)

一方で虚の人に多いのはどちらかと言うと「胃腸が弱っている人」です。この場合は人参を含む四君子湯や六君子湯で胃腸に気を補います。

表も裏も気が足りない場合は補中益気湯や加味帰脾湯のような参耆剤(人参と黄耆を両方含む薬)を使います。

このように同じ「虚」に使う薬でも守備範囲が違う感じです。


質問⑩
「高齢者の熟眠困難に桂枝加竜骨牡蛎湯はどうでしょうか?」

回答:
ありだと思います。
桂枝加竜骨牡蛎湯や柴胡加竜骨牡蛎湯みたいに「竜骨+牡蛎」の薬の特徴としては、動悸がしたり胸のあたりが落ち着かない感じの人に向きますね。

桂枝加竜骨牡蛎湯は桂枝湯+竜骨+牡蛎なのでどちらかというと温めて巡らす系です。

柴胡加竜骨牡蛎湯は小柴胡湯+竜骨+牡蛎なのでその反対に胸あたりの余計な熱をとります。なのでイライラして神経過敏な人に向く感じです。


質問⑪
「虚証の判断基準の1つに色白がありますが、日焼けしてる人や黒人の方などは判断に困ります」

回答:
基準として「いつもと比べて顔色はどうか?」というのを考えるといいかもです。

同じ人でも虚の時もあれば実の時もあるので。


【半夏がまずい理由(タコ先生より)】

半夏そのものは味がほぼ無いが、半夏で刺激を感じるメカニズムとして大きく2つの説があり

・シュウ酸カルシウムの結晶が物理的に刺激
・半夏の他の成分による化学的な刺激

が考えられているが、まだハッキリはしていない。

半夏の解毒に生姜が定番なので、半夏と生姜はよく併用される。例外的に麦門冬湯は半夏を含むが生姜は含まない。(理由は不明)

【タコ先生エピソード】

・半夏をたくさん味見しすぎたら呼吸困難に近い状態になった(本来はそんな危険なものではないが、直接味見する時は気をつけて)

・半夏ふりかけ事件(詳細は自粛…笑)


質問⑫
「高齢者で腰が曲がっている腰痛の方の尿失禁に漢方薬なら何がいい?(補中益気湯を勧めてみた)」

回答:
補中益気湯もありだとは思いますが、補中益気湯はあくまで気を補う薬です。

一方でご高齢の方で身体のバッテリーが切れてきているような感じで尿トラブルが出ているなら「腎を補う」系の薬が合うかもしれません。

定番は八味地黄丸です。腎は身体の水を回すバッテリーなので、このバッテリー切れが起こった時に八味地黄丸の系統を使います。(養命酒とかもこれと方向性は近いです)

温めなくていいなら附子や桂皮を抜いた六味丸

むくみや関節痛、しびれなどが目立つなら利水薬を加えた牛車腎気丸がいいと思います。

ただしそこまでひどい状態であれば泌尿器科でクレンブテロールなどを出してもらった方が早いかもしれません(笑)

R4.10.13 22〜23時
きたくん漢方オンラインスクールZOOMセッションより

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