見出し画像

#屋久島の鳥たち 3月

春の訪れと旅立ち


 3月に入ると野山には可愛い花や新緑が見られ始めます。
小さな虫たちも活動し始めます。
 里ではいろんな鳥の声が聞こえるようになってきます。
 ウグイスの「ホ~ホケキョ」はさえずりと言い、雌へのアピールになります。

柔らかい新芽をついばむヒヨドリ
ウグイスのさえずりは2月頃から聞かれ始める。今年は1月26日確認

 冬の間はこの声が聞こえませんが、居なくなったわけではなく、「ジャッジャッ」と「笹鳴き」と呼ばれる地鳴きで鳴いています。
 似たような地味な地鳴きで鳴く鳥が多いのですが、この時期になるとさえずりの練習を始めるようです。
 冬の間、里に下りてきているコマドリやミソサザイのさえずりも聞こえてきます。

コマドリの下手なさえずりは里の方でも聞こえてくるが、期間は短い。山の方へ上がっていくよう
ミソサザイも冬は里に下りていて、さえずりが里でも聞かれることがある

「ヒン カラカラカラカラ」と馬のいななきに似た声で鳴くのがコマドリで、春先までは里の方にいるようで、下手なさえずりが聞こえてきます。
 ミソサザイのさえずりは、その小さな体からよくそんな通る大きな声が出るなぁと思うぐらい、大きくてきれいな声です。
 文字にするのが難しいですが、「ピーチュリピーチュリチーチーチー!」という感じでしょうか。
 どちらも里で確認できるのは3月頃までで、やがて山の方へ移っていくようです。
 また、屋久島で冬を過ごした鳥たちも、春の陽気に誘われてなのか、さえずることがあります。
 冬の間、藪の中やその近くの木で、「チッ チッ チッ」と声はするけどなかなか姿を現してくれないアオジやミヤマホオジロも、時々「チョリチョリチョリチョリ」とさえずっています。

アオジは普段は藪の中でチッチッと鳴いていて姿がなかなか見れないが、スズメサイズのお腹が黄色い小鳥でときどきさえずることがある
ミヤマホオジロも、普段は藪の近くでチ!チ!と鳴いているが、なかなか表に出てこない。黄色いモヒカン頭が特徴。時々さえずりが聞かれる

 冬鳥たちはまた北の方へ移動してそこで繁殖します。屋久島でさえずるのは練習の最中なのかもしれません。北へ向かう準備をしているのでしょう。
畑の近くの電柱や高い木によく見かけていたチョウゲンボウやノスリもそろそろみられなくなってきます。河口をすいすい泳いでいたオオバンもその姿が見られるのももう少しです。

冬鳥のノスリ。畑の近くでモグラやネズミを狙う。そろそろ北へ帰って行く
冬鳥のチョウゲンボウ。電柱の上にとまる小さなハヤブサの仲間。バッタなどの昆虫を捕まえているのを見かける
河口のオオバンたちも冬鳥。4月頃北へ帰って行く

 なんだか去って行くのを見送るのは寂しい気もします。
でも、鳥たちは新しい命をつなぎ、はぐくむために旅立っていきます。どうか無事に新しい場所でそれぞれの生活を送ってほしいものです。
 
 最後に、1年間、屋久島の鳥たちについて記事を書かせていただきました。そのような機会を与えてくださった編集者の方、拙い文章にもかかわらず読んでくださった方々に感謝申し上げます。この記事をとおして、身近な鳥たちを好きになってくれる方が増えるといいなと思います。1年間ありがとうございました。
…………
福留 千穂/ふくどめ ちほ
 鹿児島生まれの鹿児島育ち。県内の小中学校で養護教諭として勤めていましたが、ガイドを志し2014年に屋久島へ。屋久島の自然を案内する中で、野鳥の存在は避けては通れず、野鳥を覚えるために意識して見るようになったところ、野鳥のかわいさ、美しさ、たくましさに触れ、すっかり虜(とりこ)になってしまいました。
 現在はカメラを片手に、野鳥の姿や鳴き声を探して歩く「とりさんぽ」が生活の一部になっています。
 耳を澄ますと、いろんなところから鳥の声がする。
 よく見ると、いろんな鳥が近くにいる。
 そのことに気付いてもらえ、野鳥の生活に気持ちを寄せてもらえると嬉しいなと思い、屋久島で見られる野鳥の様子をお伝えしていきたいと思います。