8.6
眠れない日が増えた。過去、眠れない日々にはいつも傲慢ながらにも理由があった。ベランダから見渡せば、何時だろうと絶えぬ光が見えたことは、どこかできっと安心だった。手紙に結ぶ最後の言葉は、静かな夜が増えてった。心配で眠れない夜に音がないことは、真っ暗闇の中にたったひとつ光を放つ火災報知器のランプの一点に吸い込まれてしまいそうな怖さがあった。だから、瞼を閉じる前に鳥の声が聴こえてくることは安心。
どうせ眠れないのなら定点観測してしまおう、というのは思いつきだが、眠れないでいるこの部屋で書くことができるものを置いておこうと思う。そんな夜の雑記をnoteのマガジン『定点観測』とする。
今日は、もう眠れないことがなんとなくわかっていたので、本を読んでいた。この眠れないから本を読むのが、一番夢中になって本を読めることがここ最近の発見だった。ちなみに今は三島由紀夫の『命売ります』を読んでいる。多分高校生くらいで買ったか先生にもらったかした気がするけど、何年も本棚と一緒に移動してきて、ようやく手をつけたという感じ。日常のいろいろなことの中に、死がぬっと近づいた出来事が7月にあった。なんとなく手に取ったのも無関係ではないような気はしている。死は、それが直接的に語られなくとも、ふわふわ姿形を自在に変えて、これ以降の自分の文体に溶け込むんだ、そんな確信があったし、あらゆる書かれたものの背後にもそうした死の気配が、図らずとも静かに溶けているのかもしれないと思った。それはなんとなく、ほんとうのことであるような気がした。それは良し悪しではなく、書き手にとってのほんとうの滋養になるのだろうと思う。
明るくなってきたので今日はここまでにする。湿った風が音を立てている朝。