Colabo「タコ部屋」訴訟のメモ その1(事件の争点とか尋問について)
最近、話題になっているColaboの訴訟、暇空氏が言うところの「Colabo生活保護タコ部屋訴訟」こと東京地裁令4(ワ)第30091号・損害賠償等請求事件について、数点思うことがありましたので私見を述べさせていただこうと思います。
「タコ部屋訴訟」はどこまで進んだのか?
名誉毀損訴訟における「違法性阻却事由」
名誉毀損の要件を満たしていても、①公共の利害に関する事実で、②もっぱら公益を図る目的で、③その内容が真実であると認める理由がある、などの一定の条件を満たしている場合には、違法性が阻却され、名誉毀損罪および民事上の不法行為が成立しないこととされています。
実際違法性阻却事由の争いに発展するときは、③の「真実相当性」がもっぱら議論になり、①②は争いになることがほとんどありません。
被告が生活保護の不正受給の実態があることについて主張立証をした(被告準備書面3)とのことですが、原告側は「生活保護の話は争うのやめよう」と言い出してるようです(期日調書)。
証拠申出書の提出と証人尋問について
まあ、原告側の証拠申出書、よりにもよってすごい対象者を指名してきたなって思いましたけども。
はっきり言っていいですか?
正直、意味不明です。
陳述書はなぜ提出するのか?
原告代表仁藤夢乃名義の陳述書(甲28)が提出されたことについて、被告である暇空氏は畢竟独自の見解を持っているようですが、証拠申出と同時に陳述書が提出されるのは被告当人が尋問を嫌がるかどうかと全く関係ない話です。一応。
尋問は事前に対象者に陳述書を提出させ、陳述書の記載内容に沿って、あるいは裁判官の裁量によって補充的ことについて尋問する流れであるところ、その台本たる陳述書は(特に自身の立てた証人ないしは当事者のものは)、申出書と一緒に、ないしは直近の期日の準備期間内に提出というのが、必然的な流れとなります。
申し出たら尋問は行われるものなのか
当然裁判所は証拠申出対象者を取捨選択します。陳述書の内容などを精査して、心証を固める最後のピースが、尋問によって得られる期待が大きければ、実施するし、既に十分心証が固まっていて、尋問の結果によって判断が変わる見込みがなければ実施しません。
陳述書は尋問のためならず?
尋問を実施しなくても陳述書の内容は準備書面で援用する限りにおいて訴訟の記録として残すことは可能ですから、尋問が行われるか否かにかかわらず、あるいは尋問を申請しないけど、提出するということはあり得ます。
むしろ間接証拠の趣旨を当事者が補充したり、請求原因にかかるバックグラウンドのストーリーを補完する目的で、あえて訴訟の序盤から中盤あたりに陳述書を間接証拠として出すことも、まあよくある話であって、今回の事件でその手が取り得たかはさておき、依頼者と弁護士(事案によっては+補佐人)が密に連携して、当事者尋問に頼らない効果的な立証をしたほうが、勝ち筋なのではないかなと思います(個人の感想です)。
【重要】 敵性尋問(相手方への主尋問)が悪手な理由
証人を立てる場合は、自分の有利な立証をしてもらうわけですから、あらかじめある程度の口裏合わせをしておくというか、本人の記憶にないことでも「こう問われたらこう答える」みたいな簡単なことは弁護士が吹き込んでおくことはよくあるのですが、それだと証言が正しいのかよくわからないので、相手方や裁判官にも同様の尋問をさせて嘘がないことを確認するわけです。
基本的に相手方当事者や証人は相手方が証人を申請してからそれのカウンターとして反対尋問する流れになるわけであって、わざわざ相手方当事者を指名して尋問することは、よほどのことがない限り、普通はやりません。
仮に裁判所が暇空氏への尋問を認めたとしましょう。当然被告側弁護団は尋問対策のためにどう答えるかの対策を組むでしょうね。で、弁護士が指南した通りに暇空氏が淡々と用意された問いに答えて、裁判官は暇空氏の証言について心証を固めるだけの結果になりかねません。
まして、原告側が立証したがってる「本件各投稿に公共目的がないこと」だとか「本件各摘示事実に真実相当性がないこと」って、罷り間違ってそれが本人の「自白」によって立証された場合って、暇空氏は刑事訴追を受ける余地があるわけじゃないですか?
当然暇空氏側には黙秘権があるし、尋問そのものを拒絶して然るべきですね。
一つだけ言える真理がある。
とりあえず神原元は民事訴訟法196条を読め!
なぜ原告側はわざわざ暇空氏を尋問したいのか
要するに不正受給云々の事実を指摘されたことで、タコ部屋・生活保護不正受給などの事実如何とは別の方法をもって被告の不法行為を必死で成立させたがってるみたいです。たいへん苦しいように見えますね。
まあ、裁判官の心証がどっちに傾いてるかは知る由もないので、万全を期して臨むべきですけど。
次回期日への課題について
期日調書は、裁判所が記録としてまとめて、基本的に事前に提出した準備書面の内容について確認して、次回期日の予定を共有するために、各期日ごとに担当書記官が記録に残すものです。
この調書は、裁判の途中で裁判官が変わったりした場合の引き継ぎ資料になったり、控訴審・上告審の際に裁判官が手続の流れをチェックする時に用いたりします。この調書は特にことわりがなければ公開資料であって、訴訟関係者のみならず誰でも閲覧可能な資料です。
なぜ被告だけに課題が課されているのか?
裁判所が被告にだけ課題を課したのは、いい方にも悪い方にも想像を膨らませる余地があるので、正直わからんと言わざるを得ないです。
被告が反論および補充の主張立証すべきことは?
さて、この期日の両当事者の主張のまとめを読み解けば、裁判官がどう言う方向で判決書を纏めようとしているかはだいたい想像がつくと思われます。要チェックですよ。
被告側としては、これに沿って原告ら第3準備書面に反論していきつつ、人証の申請があればするというながれになるのではないでしょうか。
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