ぼんやりニート日記2023/7/20~23「配られたカード」
2023/7/20(木)
誕生日。29歳になりました。コケシさんと叙々苑のランチを食べる。生まれて初めて叙々苑に来たけど、野菜も肉も全部美味くて感動した。ご飯の美味しさにはしゃぎつつ、近況などを話し合う。コケシさんは九月から僕が住んでる立川のシェアハウスに引っ越すらしい。新しい環境で心機一転し脱無職して労働に励みたいのだそうだ。そしてゆくゆくはお金を稼ぎまくりタワマンに住みたい……などと夢を語っていた。頑張ってほしい。
帰りにジュンク堂に寄って漫画を買う。幾花にいろ先生の『あんじゅう』という漫画。
ルームシェアで二人暮らしをしている女子たちの日常を描いた作品。女子二人の日常会話の内容が妙に生々しくてリアリティがある。にいろ先生が描く女性の絵はシャープでスッキリしていて好きだ。
IKEAにも寄る。座椅子に敷いているクッションがヘタってきたので新しいモノを買った。結構大きなクッションで材質が良いものを買ったのだけど2000円もしなかった。安いなIKEA。それにしても立川は駅前に大きな本屋や家具屋や電気屋やスーパーが集まっていて買い物がすごく便利だ。「立川にはこの世の全てのものがある」と僕はよくシェアハウスの住人に冗談まじりで言うのだけどあながち嘘ではない。
久しぶりに絵を描く。夏らしく水着のヰ世界情緒さんのイラストを描いた。
が、Twitterではあまり伸びず。イラストってどうやったら伸びるのだろう。本気で描いた絵が全然伸びなかったり、落書きみたいなイラストが思いの外反応が良かったりするから本当にわからないな。
『ANIARA アニアーラ』という映画を見る。
火星への移住者を乗せた宇宙船が事故で軌道を外れて遭難してしまうという話。3、4年と遭難しているうちに船内でカルト宗教ができたり、新しい文化や秩序が生まれたりするのを淡々と描いた作品。遭難して年がたつにつれ、船員の目に希望の煌めきなくなっていく様がリアルで見ていて辛くなった。作中で人間の感情を落ち着かせる精神治療AIが登場するのだけどそのAIにすがりつく劇中の人々の様子を見て、近い将来現実でも起こりそうだなと思った。
2023/7/21(金)
「ピクミン4」を買って遊ぶ。
自分のあとをテクテク着いてくるピクミンたちを見てると癒される。今作で登場する「オッチン」という毛が生えた金玉袋みたいな犬も可愛くて好きだ。クーラーで冷えきった部屋でふかふかのクッションに座りながら、ピクミンたちをあくせく働かせてこき使うのは気持ち良すぎるな。ただ下手に働かせると、敵にピクミンが食われて大損害がでたりするから気が抜けなかったりする。管理職の大変さがわかるゲームだな。
2023/7/22(土)
「博物ふぇすてぃばる!」というイベントに参加するため九段下にある科学技術館に行く。「博物ふぇすてぃばる!」は博物学の創作、展示、研究の販売・発表を行う大規模なミュージアムショップである。初めて参加したのだが、なるほどコミティアの雑貨ジャンルに近い雰囲気があった。実際にコミティアで会ったことのある作家さんもちらほら見かける。
コミティアと違うところは、モノを売らず研究の発表をメインにしたサークルがあるところだ。海ガメや鯨などの水生生物の死骸を研究しているサークルを見かけて発表を聞く。大きな水生生物の骨の内部にはあちこちに小さな空間があり、死骸になった後その空間にプランクトンが棲み着き特殊な生態系を生み出しているらしい。その場で発表者に質問もできて面白い体験だった。また参加したいな。
お土産にオオタカの羽を模したネックレスを買う。
本物に見えるが粘土で作った精巧な模造品らしい。よく出来ているな。
帰りに後楽園に寄って「不適応者の居場所」に参加する。http://tsurumitext.seesaa.net/category/27207981-1.html
「いま盆踊りが熱い」という話を聞く。盆踊りはみんなで同じ動きをしながら一体感を楽しむライブに近いコンテンツなのだそうだ。無料で参加できるから無職にも優しい、なんてことも言っていた。なんだか興味が湧いてきたぞ盆踊り。立川で盆踊りができる祭りとかないかな。今度参加してみよう。
帰宅後、自室の窓の外から祭り囃子の音が聞こえてきた。どうやら近所で祭りがやっているらしい。「これは早速、盆踊りに参加できるチャンスか!?」と思い、急いで外に出て囃子が聞こえる方へ向かう。すると近所の小さな公園で小規模な盆踊り大会が開かれているのを見つける。
なんとか踊りの輪に入りたいけど、参加している人が子どもばかりなので、僕が入るのは場違いじゃないかとビビって結局何もできずにすごすごと退散してしまった。盆踊り童貞卒業失敗。次はもっと大きな規模の盆踊り祭りを見つけて参加したいな。誰でも気軽に参加できそうなやつに。
2023/7/23(日)
山口つばさ先生の『ブルーピリオド』の新刊が出ていたので読む。
若き芸術家の卵たちの青春群像劇を描いた作品。今作も抜群に面白くて一気に読んでしまった。作中で「東京に実家のある時点で才能」という言葉を見つけ、地方出身の僕は激しく同意してしまった。僕も地方出身勢の仲間内でよく似た言葉を言い合うことがある。東京と地方の格差はすごいよな。東京にはギャラリーや美術館やアート系のイベントがたくさんあって作品を出展するチャンスがたくさんある。だから圧倒的に地方よりアーティストにとっての出世の機会が多い。同時に多くの作品に触れ合うことができるから芸術を学べる機会も多かったりする。僕もコミケやコミティアなどの創作イベントを通して多くのことを学んだし、実際に自分の作品の世に出す機会をもらった。そして思うのが「もっと早くこういう場に出会いたかったな」ということだ。もっと早くコミケにも参加したかったし、上野の美術館にも若いうちから通いたかった。そしたらもっと違う未来があったんじゃないか……思ってしまう。まあ今さらそんなことを言っても仕方がないのだけど。境遇に格差があるのは当たり前だ。結局のところ人間は配られたカードで戦うしかない。だからいち早く自分の境遇を憐れむのを止めて動き出した者が、この世の何かを掴んでいくのだと思う。掴んだものが成功か、ただのゴミかは本人にしかわからないけど。
『ファーザー』という映画を見る。
認知症の主人公が、混濁する記憶の渦に飲まれていく悲しみを描いた作品。主人公の存在を通して認知症がどのような病気であるかを追体験できるような映画だった。自分の記憶が満ちたり欠けたりする認知症患者にとって現実はまさしくサスペンスだ。知らない人間が現れたり、時間がシャッフルしたり、自分の存在を見失ったり。そんな不安定な心理状態にある主人公の視界は、本人にとって驚くほどミステリアスである。そんな主人公と同じ目線で撮られたこの映画はミステリー映画を見ているかのようにスリリングで抜群の面白さがあった。と、同時に愛知に居る認知症の祖母のことを思い出さずにはいられない。祖母もこんな不安の中で生活しているのか、と思うとやるせない気持ちでいっぱいになる。面白い映画だったが、見ていて辛くなった。