➀魔術を解読するとお猿さんの気持ちに近づくのか【古代西洋魔術編】
ヤク学長です. 本日も魔法の歴史を紐解いて未来を考える.
前回は、「魔法」や「呪術」で扱う「呪術道具」に着目し話を進めてきた.
◆前回までのまとめ
今まで述べたことをおさらいする. 要約すると2つにまとまる.
➀魔法(魔術)の全体的な分類 ➁呪術装具の介入による集団幻想
上記の2つがメインのテーマだった.
現在から過去を見たときに, 哲学者が名前をつけて分類分けした「全体観」を傍観してきた. 次に, 魔術や呪術的な道具が象徴として崇拝され「集団幻想」の構築に一躍かっているのではと述べてきた。更には、今後の未来が高度な科学技術 VS 想像力の壮絶な戦いになると予想し着地点はどうなるのか…などの余韻を残して終了したと思う.
◇なぜ魔法を引っ張り出すのか?
改めて振り返ると, 未来は計算機が叩き出す神秘的なものに魅了されていくと予想される. 魔術的な集団幻想といった複雑な事象を理解しないまま, 次の時代に突入すると極めて危険であると考えるからだ. 「科学的かつ合理的なもの VS 人間がもつ抽象的な集団の意識」の揺れ動きにより世界が成り立つならば、宗教や神秘的な背景により脈々と練り込まれた魔術といった学問を知る意義はあるのだろう.
◇今回のテーマは? 西洋の魔法【ハリーポッターの世界】
今回からは、皆さんが誰しも一度は夢を見たことがある? キラキラ, ピカピカしたハリーポッターの世界の様な古代西洋の魔法の歴史を見ていく. これはやはりと言うべきか非常に面白い.
魔法を学ぶ上でとても大切なキーワードである, 「集団(共同)幻想」や「想像力」を心に留めて聞いて欲しい. 今後の世界がより高度な科学技術に寄せていくのか, 人間が持つ想像力によっていくのか壮絶な戦いの着地地点はどこになるのか考えてみて欲しい.
古代西洋魔術~中世期
古代魔術の歴史は3種類の魔術からの派生で成り立つ. 古代ギリシアには
➀ゴエティア ➁マゲティア ➂エウルギアと言う3種類の魔術が存在していた. これは, なにかの呪文みたいで口に出して唱えたくなってこないだろうか.
➀ゴエティア【下等な魔術】
「妖術」と訳される. 術者は死霊を呼び出す術を駆使することができたと
言われており, 後に黒魔術と呼ばれるものの原型である. どうやら霊の口
寄せをする際のうなり声から生じた言葉とも言われている.
➁マゲティア【中級の魔術】
「魔術」と訳される. 術者はマゴスと呼ばれ, 古代ペルシアのゾロアスター
教の神官階級を表す言葉からとられている. つまり, 位の高い魔術なので
ある. このことからも推測されるように, 人々に徳をもたらすような連想
が伴っている. 戦勝祈願や恋愛成就、豊漁など願望をかなえる手段とし
て用いられた.
➂テウルギア【高級の魔術】
「降神術」と訳される. 教育を受けた神官や哲学者が担っていた, 神秘な実
践形態として高等魔術として扱われていた. 日本だと憑依のようなもの
に通ずるのだろうか. 神的なものと一体化するようなので恐るべき魔術
である.
まとめると, 要するにこれら神秘な能力を身に付けることで, 人々の願望を
叶えることが目的であった.
聖地と怪しげな補助薬
これら魔術がどんな場所で行われていたのか気になったので調査をした.
【聖地】
古代ギリシア(ローマに占領されるまで)における魔術治療の聖地は, ペロポネソス半島の東部にあるエピタウルスである. この世紀には, 医学の父でも有名なアスクレピオスを中心にして劇場が設置されていた. エピダウロスと呼ばれたこの劇場の魔術治療は「睡眠」がメインテーマだった. 「籠り」と呼ばれていたようだ. 病気は人間の精神的な調和と静寂性が失われて起きるといった発想が元になっていたようだ.
医師、薬剤師にとっては有名だがアスクレピオスは蛇の巻きつく杖がモチーフとなっている. 劇場などあらゆる所に蛇が飼われていたようである. 蛇も治療のモチーフとなり, この頃からすでに精神的な疾患に関しては, 催眠術などの古代魔術に通ずる治療法が存在していたことになる.
【聖地と怪しげな補助薬】
ギリシア最大の聖地デルポイをご存知だろうか?アポロン神殿がある所である. 信託的なものを扱う場所であったが, この際に使われていたとても怪しげなある作法がある.
月桂樹の葉を焼いて煙で身を清めると言う方法だ. 月桂樹の葉にはもともと「催眠効果」のある物質が含まれていることに着目してほしい. つまり、人間をある程度気持ちよくさせて妄想の中に閉じ込めて信託と言うものを受けさせる.
ここで簡単に人間の脳の構造をご紹介する. 人間の脳みその構造的に中心ほど生存本能に関わるような機能が備わっている. 外側ほど人間の思考部分である海馬のような論理・ロジカルを扱うような部分がある. 催眠状態の時はなかなか人間の脳の外側まで回路が働かない点が面白い. これを意図的か感覚的に実行していたかは察して欲しい.
要するに人間を気持ちよい状態にしておくと論理的判断が鈍り、神秘的なものを信じこみやすくなってしまう. 他にも補助薬としてはアヘン, モルヒネ, コカイン, クロロホルムなど幻覚作用を有する薬物が補助薬として使用されていた.
こうすることで人は神秘的なものを信じていった, 信じる者が増加しマジョリティになった結果, 集団共通認識として魅了され「魔術」が浸透していったのかもしれない. ↓気持ちの良いお猿さんのよう
古代中世~ルネサンス期
ここからは12世紀(中世)の話だ. この時代にはイスラムの世界から世界最先端の数学天文学物理学医学などの化学技術が入ってくる. ヨーロッパの世界は文字通り長い眠りから覚醒し始める. キーワードは「ユダヤ教神秘主義」「錬金術」「占星魔術」の3大要素である.
ついに, 「鋼の錬金術師」でもこの言葉が有名になったと思うが, 「錬金術」といった科学が流入した. 今まで魔術だけの世界に,物質に着目する概念が現れた. 圧倒的な理論と実践を備えた「科学」が襲い掛かってくるのである.
当時の錬金術師にとって完全な金属である金の探究は物質のみならず, 精神の探究でもあり, より物質を洗練させ生命エネルギー的なものを抽出することを目指した.実際に当時の教会によって禁断の知識とされていたが、錬金術や魔術と自然は対立するものではなかったという.
続く…