4月から始まったリフィル処方とは?~薬局とお金の話㉒
2022年の4月の診療報酬改定に伴い、公的保険や患者の負担する医療費にも幾つか変更点が現れますが、今回は「リフィル処方」という制度が新たに追加されました。このリフィル処方について、私gorisanが薬剤師とファイナンシャルプランナーの立場から解説させて頂きます。
リフィル処方とは?
リフィル処方とは、2022年4月より始まる制度であり、処方せんを繰り返し使用できるようにすることで、病院で受診を受けなくても薬局へ行くだけで薬がもらえるという制度です。
症状の安定している慢性疾患の方や病院までが遠く通うのが大変な方、病院を受診する時間がなかなかとれない方にはピッタリの制度ですが、薬局薬剤師の立場からするとなかなか難しい制度だと思います。
まずリフィル処方には医師の許可が必要であるということ。リフィル処方は1回28日程度が望ましく、使用回数は最大3回までとされているので、医師が90日以上など長期処方をしている方がリフィル処方に置きかわるというイメージです。
そのため患者数が多く長期処方が多い大病院で取り入れられることはイメージできますが、地域のクリニックなどでは受診回数が減ることになるので、経営面などの理由から考えても導入されるケースは少ないでしょう。
理由のひとつに、日本の薬剤師に処方権がないことが挙げられます。海外ではリフィル処方という制度は昔から存在しており、アメリカでは数十年前から行われています。これは薬剤師といっても日本とアメリカでは、中身が全く違うからです。
日本の薬剤師は医師の診察・処方に基づき調剤を行うのに対し、アメリカの薬剤師は患者を診察し症状に合わせて薬を処方することができます。まるで地域のかかりつけ医のような存在なのです。
アメリカでは薬局へ行けば症状を診てもらえるので、リフィル処方でも体調をコントロールすることは難しくありません。しかし、日本の薬剤師にそれは不可能です。知識や経験がないだけでなく、医師の診察内容や病気の詳しい情報を知らされていないためです。
そして問診や簡単なバイタルチェックは認められていますが、診察や検査を行うことはできないので病状についてキッチリと把握することは困難だと考えられます。そのため私はリフィル処方はなかなか難しい制度であると思っているのです。
ファイナンシャルプランナーの立場から金銭面について考えると、リフィル処方で薬局を複数回利用するよりも、90日以上の長期処方のほうが金銭的にも時間的にもコストがかかりません。
ただし信頼できる薬剤師がいる薬局があれば、なかなか有効な制度かもしれません。かかりつけ薬剤師の制度を利用しており、薬剤師にもっと自分の体調管理をお願いしたい方は検討してもよいかもしれません。
わずかな情報から患者の状態を読み取り、リフィル処方に求められる薬学的管理を行える薬剤師がいれば...血圧計や血液検査など各種バイタルチェックが行えるほど機能が充実している薬局があれば...そこまでして採算が取れる報酬体系があれば...
リフィル処方は素晴らしいものとなると思いますが、筆者の能力や勤める薬局では難しいと考えます。まだまだ始まったばかりで実用的になるのはもっと先になるのではないでしょうか?
またリフィル処方が不適と薬剤師が判断した場合、調剤を行わず患者に受診を推奨し医師にすみやかに報告することとされていますが、実際に現場でこのような事態になれば薬局内で怒り出す方が続出することがイメージできます。
日本の薬剤師にはリフィル処方に求められる能力が不足しており、リフィル処方に求められる機能を有している薬局は稀で、薬剤師への信頼が日本には足りていない。残念ながら、現状ではリフィル処方が普及するのは困難でしょう。
<この記事を書いた人>
gorisan
地方の小規模チェーン調剤薬局の薬剤師。薬剤師歴12年。3児の父。認定実務実習指導薬剤師。FP技能士3級。