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暮らしの薬学【ペット用品編】~②ペットフードの種類


~家族としてペットが健康で幸せに過ごせるように~

ドラッグストアで販売しているペット(犬と猫)用品について解説します。

ペットの健康を維持する上でペットフードは大事ですね。ペットフードは、バランスの取れた栄養素、消化吸収が良いもの、さらにはグレインフリーやオーガニックなど、特定の健康ニーズに応じた製品もあります。

ペットフードってどんな種類があるの?

 ペットフードの種類としては、水分含有量、ライフステージ、目的、形状、容器によって分類されます。目的は、「総合栄養食」、「療法食」、「間食」、「その他の目的食」に分かれます。
 総合栄養食とは、毎日の主要な食事として与えるものです。新鮮な水と一緒に与えることでペットの健康を維持できるよう、栄養バランスが整えられています。療法食とは、病気の治療を補助するために与えるものです。糖尿病や腎臓病等の治療の内容に合わせて栄養成分を調整しています。獣医師の指導の元で使用します。間食とは、主食以外のおやつを指します。与えすぎて栄養バランスを損なうことのないように、また、1日当たりのエネルギー所要量の20%以内に抑えたいので、一日に与えて良い量・回数がパッケージに記載されています。その他の目的食とは、上記3つに当てはまらないもので、サプリメントなどを指します。食欲増進や特定の栄養成分の補給を目的としています。パッケージに「副食」「一般食(おかずタイプ)」「栄養補完食」などと記載されています。

ペットフードの表示を確認しよう!

ペットフードは、人の食べ物である「食品」という分類ではないため、食品衛生法や食品表示法などの法律は適用されません。かわりに「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(通称:ペットフード安全法)と「ペットフードの表示に関する公正競争規約」で安全性や表示等が規制されています。ペットフードのラベルには、「ペットの種類」、前に説明した「目的」、「成分」「使われている原材料」「給与方法」「原産国」「賞味期限」「製造業者、輸入業者、販売業者」が表記されています。
「療法食」は、特定の栄養成分の量や比率なども表示されていて「獣医師専用食事療法食」ならびにケアする内容が記載されています。
「総合栄養食」には、「成長段階別(*)」記載されています。ペットの種類、年齢などに応じて選択し、「給与方法」に従って適切な量を与えましょう。適切なカロリーの摂取が、肥満や疾病予防に繋がります。

*犬の場合は、「幼犬期」「成犬期」「妊娠期」「維持期」など


ペットに食べさせてはいけない食材、与えすぎに注意したい食材

 ペットは人と同じようなものを食べたがりますが、食べさせてはいけない食材、与えすぎないようにしたい食材があります。キッチンや室内に置いている食材や植物に興味を示し、食べたり、かじったりすることがあるので注意しましょう。またペットの健康を考えれば、基本的にはペットフードを食べさせるのが良いと思われます。

(1) 食べさせてはいけないもの

・たまねぎ、長ネギ、ニラ、ニンニク
  犬や猫にとって有害なアリルプロピルジスルファイドが含まれます。食べることで血液中の赤血球が壊され、貧血、血尿、下痢、嘔吐などを引き起こします。ません。
・ブドウ、干しブドウ
  原因ははっきりわかっていませんが、腎不全の原因となります。1、2日で尿量減少などの症状が出ます。食べさせてしまったら、すぐに動物病院を受診しましょう。
・ガム(キシリトール)
  虫歯予防の成分キシリトールは、犬が食べてしまうと少量でも血糖値の低下、嘔吐、肝不全を引き起こします。インスリンの分泌を強力に促進するためです。
・香辛料
  胃腸を刺激し、下痢を起こします。また、代謝しきれず、肝障害を引き起こします。
・鶏の骨
  他の動物の骨に比べて、縦に避けるため喉や消化管に刺ささりやすいです。骨付きの鶏肉を、良かれと思って犬に食べさせると思わぬ事故を起こします。

(2)与え過ぎない方がいいもの

・イカやタコなどの魚介類、エビなど甲殻類
  スルメや生の魚介類は消化が悪いので下痢や嘔吐の原因となります。また、生のイカや貝、甲殻類はビタミンB1を分解する酵素が含まれるため、猫が食べると体内のビタミンB1が不足して後ろ足の麻痺を起こします(加熱してあれば問題ありません)。
・ほうれん草
  シュウ酸を多く含むため、シュウ酸カルシウム尿血症の原因となります。ゆでてあく抜きをすれば含有量は減ります。
・チョコレート
  犬に与えると、テオブロミンという成分により嘔吐、下痢、発熱、痙攣を引き起こします。猫でも同様の症状が出ることがあります。
・生卵
  アビジンという酵素により皮膚炎、成長不良を起こします。加熱すればOK。
・砂糖
  糖質を吸収するためにビタミンB1やカルシウムが余分に使われてしまいます。また、肥満や下痢の原因にもなります。
・牛乳などの乳製品
  犬には牛乳に含まれる乳糖を分解する酵素が少ないため、下痢を起こします。犬用、猫用ミルクが販売されているので、人用の牛乳は避けた方がよいでしょう。
・塩
  人と異なり、汗をあまりかかないため、塩分が体から出ていくことが少ないため、犬猫は塩分をほとんど必要としません。人の食べ物(煮干しやチーズなど)は塩分が多いため、塩が体内に溜まっていき、心臓や腎臓に負担をかけます。

Q.「グレインフリー」って何ですか?

グレインは穀物のことで、主にイネ科植物(米、麦、トウモロコシ、キビ)の種子のことを指します。グレインフリーのペットフードは、これらの穀物を含まないフードのことです。もともと、犬や猫は野生では穀物を食べないと言われています。というのは、穀類に含まれる炭水化物はそのままでは消化することが困難なのです。人も米を生のまま食べることはせず、水を加えて炊いて食べるように、ペットフードもきちんと加熱調理され炭水化物もアルファ化されていますので、食べても問題なく体内で利用されます。ただし、猫は完全な肉食動物であるため、雑食動物の犬と比べて炭水化物の利用が上手ではありません。そのため、食事中の炭水化物の含有量は40%以内を目安にすると良いと言われています。
グレインフリーのペットフードは、複数の穀類にアレルギーがある場合に利用しますが、穀類を含む食物アレルギーが疑われる場合には、動物病院でアレルゲンの確定診断をしてもらってから利用するといいでしょう。

もっと勉強したい人に~参考リンク・参考図書

●犬と猫の栄養コラム(ROYAL CANIN)
https://www.royalcanin.co.jp/dictionary/column/

<参考図書>
『4歳からはじめる愛犬の健康生活習慣』(ナツメ社 2013)
『愛犬のための症状・目的別 高齢犬ケア百科』(講談社 2017)
『ペットフードのひみつ』(学習研究社 2009)
『愛犬を長生きさせる食事』(小学館 2015)

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<書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。