調剤薬局の領収書、何が書いてあるの?明細書の項目について(前編)~薬局とお金の話⑧
この連載の第1回・第2回で<調剤薬局の領収書、何が書いてあるの?>というテーマについて簡単に解説させてもらいましたが、今回は明細書に書いてある内容まで詳しく説明させて頂きます。
具体的には第1回・第2回の連載で紹介した調剤技術料、薬学管理料、薬剤料、特定保険医療材料料の内訳について、薬剤師でありファイナンシャルプランナーのgorisanが解説していきますので、よろしくお願いします。
【参考】
厚生労働省-00医療費の内容の分かる領収書及び個別診療報酬の算定項目の分かる明細書の交付について
<調剤基本料の内訳>
調剤技術料は「調剤基本料」=調剤できる体制を整えている評価と「調剤料」=実際の調剤にかかる手数料と以前説明しましたが、調剤基本料は調剤基本料・地域支援体制加算・後発医薬品調剤体制加算の3つによって決まります。
(調剤基本料)
通常「調剤基本料1(42点)」を算定している薬局が多いですが、「妥結率」、「処方箋回数&集中率」、「同一グループの受付回数&集中率・不動産賃貸関係の有無」、「後発品シェア」などにより減算されます。つまりどういうことなのでしょうか?
具体的には、未妥結つまり医薬品の卸売業者から購入前に購入価格が決まっていないような取引をしている薬局の場合は50%調剤基本料が減算され、同じ医療機関からの患者さんの受付回数が多く集中率が高いほど調剤基本料の区分が下がります。そして後発品シェアが40%を切ると2点減算となります。
ちなみに1点=10円換算です。
簡単に言うと… 卸売業者と誠実に取引してください。1つの病院に依存するのではなく地域の薬局として機能してください。グループ薬局は儲けすぎなので病院と組んで処方箋を独占しないでください。後発品はしっかり揃えてください。という厚生労働省からのメッセージです。
薬局は外からは見えませんがそれぞれ備えている体制や条件によって提供している医療の質が違うことから調剤基本料も薬局ごとに異なります。
(地域支援体制加算)
地域支援体制加算は、薬の品揃えがよい・24時間対応や在宅など地域医療に貢献している・十分な経験を持つ管理薬剤師・市販薬の販売やプライバシーの配慮などがされていれば38点算定することができ、具体的には次の要件を全て満たす薬局が対象となります。
・1200品目以上の保険医薬品の備蓄
・24時間調剤および在宅業務に対応できる体制、及び周知
・患者または家族に連絡先などを文書にて交付、薬局の外側に掲示
・患者ごとに必要な薬歴、薬学的管理、必要事項、指導ができている
・1日8時間以上の開局、土または日に一定時間以上、週45時間以上の開局
・管理薬剤師は、保険薬剤師として5年以上の薬局勤務経験、週32時間以上勤務、現在の薬局に継続して1年以上在籍
・在宅患者訪問薬剤管理指導の届出、体制、周知(在宅医療への対応が出来ている薬局かどうか)
・定期的な研修の実施、学会への参加等
・PMDAメディナビ(※)に登録
(※PMDAが配信する医薬品・医療機器の安全上、特に重要な情報が発出された際にタイムリーにメールで配信するサービス)
・医薬品情報の提供体制の確保
・患者のプライバシーへの配慮
・市販薬(OTC)の販売
・健康相談または健康教室の取組、掲示、周知
・医療材料および衛生材料の供給体制
・地域の診療所または病院、訪問看護ステーション、ケアマネージャーや社会福祉士などとの連携がとれているかどうか
・直近1年以内のプレアボイド事例(※)の把握そして収集に関する取組報告
(※患者に対して薬物療法の安全を守ることができた事例や、経済的に貢献できた事例)
・副作用報告に係る手順書の作成、体制の構築
・(特定の医療機関からの処方箋集中率が85%超の場合)後発医薬品の使用数量の割合が50%以上
(後発医薬品調剤体制加算)
後発医薬品を調剤している割合が高い薬局が算定しています。計算法は(後発医薬品調剤数)/(後発医薬品の存在する先発品調剤数+後発医薬品調剤数)です。ただし漢方など後発品が存在しない医薬品は計算対象外です。
この割合が75%以上であれば後発医薬品調剤体制加算1(15点)、80%以上であれば後発医薬品調剤体制加算1(22点)、75%以上であれば後発医薬品調剤体制加算3(28点)となります。
<技術料の内訳>
技術料は、内服薬があれば3剤まで日数に応じた加算、外用薬があれば薬剤ごとに3剤まで10点、頓服薬があれば処方せん受付1回につき21点の技術料がかかります。
また散剤やシロップそして軟膏の混合があれば計量混合加算、一包化があれば一包化加算、半錠や粉砕があれば自家製剤加算などが加算されていきます。これらは全国一律の価格設定となっています。
そして薬局にも時間外割増料金の設定があります。夜間・休日等加算や時間外加算も調剤料に含められています。平日の午後7時以降や土曜日の午後1時以降は、夜間・休日等加算として40点加算している薬局が多いので、できるだけ時間内に処方せんを持ち込むようにしましょう。
(後編へ続く)
<この記事を書いた人>
gorisan
地方の小規模チェーン調剤薬局の薬剤師。薬剤師歴12年。3児の父。認定実務実習指導薬剤師。FP技能士3級。