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暮らしの薬学【介護用品編】~③介護用品のいろいろ

介護用品は、要介護者の自立を支えるのと同時に、介護者の負担を軽減するよう工夫されています。ケアマネージャーさんのアドバイスを受けながら介護用品をうまく活用しましょう。


ドラッグストアで生活用品として便利な介護用品を探してみよう!

介護・福祉用具は、介護者の負担を軽減することも考え設計されているので、いろいろな商品をうまく活用することで、作業の負担を減らし、要介護者の日常生活が清潔で心地よいものにすることができます。在宅介護で必要とされる介護用品は多数ありますが、ここでは、薬局・ドラッグストアで購入でき、準備しておくと便利な生活用品などがありますので紹介します。

(1)着替えのとき

要介護者にとって毎日、服を着替えることはとても重要で、パジャマから部屋着にかわるだけで生活にメリハリがつき気分も変わります。
“前あきシャツ”“肩・わきあきシャツ”で、マジックテープが施され、着替えやすくなっています。また“股割れシャツ”、“前あきパンツ”など用を足すときに介護するときに便利なものがあります。ボタンをはめやすくする“ボタンエイド”、靴下をはく“靴下エイド”など自助具もあります。

(2)食事のとき

自分の力で、食べたいものを食べたい順に食べられるのはとても重要です。
手指や肘などの機能が低下し、食器から口元まで食べ物を運ぶことが困難になった場合でも自分で食事を摂れるよう動作をサポートする食事用の自助具があります。底に傾斜が付いているため、食べ物が楽にすくえる“すくいやすい皿”、握力が弱い、指が曲がらない、麻痺している場合には“ホルダー付きスプーンとフォーク”“ピンセット型箸・ばねつき箸”があります。スプーンやフォークは口のサイズ(口を開けたときのサイズ)を考慮して選びます。また、食事以外でも日中の要介護者の水分補給はとても重要です。寝た状態でも水分を取れるように“ふたつきコップ”があります。また、上半身を起こせる場合には両手つきコップ”があり、できるだけ積極的に水分を取るようにします。
食後の歯磨き、つまり口腔ケアについて、便利な口腔ケア用品があります。「スポンジタイプの歯ブラシ」「歯茎にうるおいをもたらす歯磨きジェル」「口内の健康を守るうがい薬」「歯磨きティッシュ」などがあります。

(3)介護用おむつ

尿意や便意を感じづらくなっている人には介護用おむつを使用します。しかし、自分自身でトイレに行ける場合であっても、トイレに行くことが間に合わないことがある、トイレに行く道中で転倒が心配であるなど、介護用おむつを使用する場合もあります。
紙おむつは外側のおむつ(アウター)とおむつの内側にいれて使うパッド(インナー)があり、これを組み合わせて使用する人が多いです。アウターにはそのままはけるパンツタイプとテープで止めるタイプがあり、そのままはけるタイプは、立ち上がり、歩くことができる人に適しています。テープ止めタイプは、足を通さなくてもよいので、寝て過ごす時間が長い人になどに適しています。アウターとインナーが一体化したおむつもありますが、尿や便で汚れて交換するたびに廃棄するため費用がかさみます。そのため、アウターとインナーを組み合わせ汚れたらパットだけ廃棄し交換するのが経済的です。
アウターは、使用者の体格に応じてサイズがあります。またパッドは別名「尿取りパッド」とも呼ばれる通り、尿の量によって種類があります。日中、夜間の尿量と交換回数によって適当なパッドを選択できます。おむつは、正しくあてれば漏れません。おむつの種類によってあて方の違い、男性、女性それぞれにあったあて方があります。おむつの包装に説明が書かれているのでよく読んで正しく使用します。
おむつ交換の際にあると便利なものがあります。特に寝たきりの方はおむつの交換をベッドの上で行います。汚れたおむつを交換する際は使い捨てのビニール手袋、また捨てる際にいれる消臭効果付きのビニール袋があります。また、ベッドなど寝具を汚さないようにするための防水シート、陰部を清潔にするためのおしりふき(ウエットティッシュ)があります。これらをうまく利用して、お互いが快適にまた清潔におむつ交換をします。

(4)トイレ、便器

筋力が低下している人にとって、洋式便座が低いと、立ったり、座ったりするのが難しいです。低い便座を高くする「補高便座」があります。また、日中はトレイに行くことができても夜間は難しい場合には、ポータブルトイレ、差し込み便器、尿器があります。

(5)入浴用品

「浴槽用手すり」は、浴槽の出入り時に便利で浴槽に後付けできます。「シャワーチェアー」は腰かけたまま、体が洗えます。「バスボード」は、浴槽に渡す板で、一旦、ボードに腰をかけてから浴槽にはいるため体が安定して入りやすくなります。浴槽の中で滑らないようにする「すべり止めマット」もあります。
寝たきりの人には、入浴の代わりに体を清拭する便利な商品があります。「ドライシャンプー」は水を使わないで洗えるシャンプ―で、その泡を使って汚れをタオルで拭きとります。タオルに「清拭剤」をつけて体をふくと汚れが簡単に落とせます。

これらの介護用品・福祉用具は、ドラッグストアで購入することができます。
または、介護保険を利用して購入することが可能ですが、介護保険を利用する場合は事前にケアマネージャーに相談が必要です。ただし、介護用品の中でも、消耗品である「紙おむつ」や「介護食」、「シルバーカー」などは、介護保険の適用外です。しかし、紙おむつは居住する市区町村で現物支給や購入費助成を実施している場合があります。

Q. 介護用品として販売されている「おしりふき」は赤ちゃんに使ってもいいですか?逆はどうでしょうか?


「おしりふき」に使用している成分は赤ちゃんに使用しても問題ない成分ですが、赤ちゃんに使用する前提で作られた商品ではないので、使用は控えましょう。また、赤ちゃん用のおしりふきは、化粧品基準に基づいて設計・製造されておりますが、大人用のおしりふきは乳幼児以外を対象とした商品となります。
おしり以外、陰部に使用は可能ですが、いずれにせよ、傷やはれもの、湿疹等、異常がある場合は使用しないでください。

もっと勉強したい人に ~ 参考リンク・参考図書

●介護保険で購入できるもの(セントケア・ホールディング株式会社)
https://www.saint-care.com/service/tool/buyable/
●介護保険法優先の「補装具」「日常生活用具」について(唐津市)
https://www.city.karatsu.lg.jp/shougai-shien/kenko/fukushi/shogai/hojo/documents/kaigohoken.pdf

【参考資料】
『介護なんでも110番』(株式会社主婦の友社2000)
『介護というお仕事』(株式会社講談社,2017)

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<書いた人・監修>
藤田知子
京都薬科⼤学卒業後、メーカー勤務を経て、ドラッグストアでOTC医薬品販売から処⽅箋調剤など薬剤師業務 に従事。“薬剤師は町の科学者”をテーマに薬系新聞に寄稿、「ドラッグストアQ&A」(薬事⽇報社)を編集。