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知っておきたい高齢者の薬の使い方~⑤皮脂欠乏症

皮脂欠乏症とは

皮脂欠乏症とは、皮膚の水分と油分の減少によって皮膚が乾燥する病気のことです。乾皮症とも呼ばれ、いわゆるドライスキンや乾燥肌の状態です
高齢者は「老人性皮膚掻痒(そうよう)症」という、発疹や湿疹がないのにもかかわらず、かゆみが出る病気になることがあります。この病気は皮脂欠乏症による皮膚の乾燥が原因となるほか、モルヒネなどの薬による副作用や腎機能低下などの影響が考えられます。

かゆみが起こるメカニズム

かゆみは、皮膚の表皮と真皮の境界部にある「C繊維」と呼ばれる神経線維が関係して起こります。
健康な皮膚では皮膚に備わっている神経反発作用(神経の伸びを抑制する作用)が強いため、C繊維が表皮まで伸びてきません。そのためかゆみを感じることはあまりありません。
一方乾燥した皮膚では、神経反発作用が弱くなります。するとC繊維が表皮まで伸びてきてしまうため、かゆみを感じやすくなってしまいます。

神経は伸びてくる!

またかゆみがある時に皮膚を掻くと快感を得られますが、掻くことにでさらにC繊維が伸びてくるため、余計にかゆみを感じやすくなります。このかゆみの悪循環を「イッチ(かゆみ)・スクラッチ(掻く)・サイクル」といいます。イッチ・スクラッチ・サイクルに陥らないためにも、かゆい時もなるべく掻くのを我慢することが大切です。乾燥肌(皮脂欠乏症)の治療
乾燥肌の治療では、乾燥状態の改善が重要です。そのために軟膏やクリーム、ローションなどの保湿剤を使用します。その他に、かゆみがある場合は、皮膚のかゆみや炎症を抑えるために、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤などが処方されることもあります。

皮脂欠乏症治療薬で押さえるべきポイント

◎保湿剤は「適切な量」を「正しい方法」で塗る

保湿剤を「かゆい場所にただ塗るだけ」とならないように、下記を参考に適切な量を正しく塗りましょう。

【適切な量の目安】
軟膏やクリームは「人差し指の先端から第一関節までの長さ」、ローションは「1円玉サイズ」が大人の手のひら2枚分の面積を塗る量の目安です。
・保湿剤を塗ったところに、ティッシュペーパーを貼ってみて、落ちない程度の量が適切です。
・もったいないからと少量にしてしまうと、保湿効果が落ちてしまいます

【塗り方】
・まんべんなくやさしく塗るのが基本です。
・ゴシゴシとすり込むように塗ると、ムラができてしまいます。すり込んだりしないで、皮膚の上に薬を置くというイメージで対応してください。
・手のひらに伸ばしてから塗ると、均等に薬が塗れなくなってしまうのでやめましょう。塗りたい場所の、何カ所かの皮膚の上に薬を置きそれを優しく掌でのばします

【塗るタイミング】
・可能であれば、入浴後10分以内に塗るのが効果的です。でもタイミングより、適正な量を塗る方が大切です。
・タイミングが合わない場合は、服を着替える時などに塗るようにします。
・処方されている薬は、医師の指示どおりに塗りましょう。

◎乾燥しないように入浴方法にも工夫を

皮膚の乾燥を防ぐには、皮膚を清潔に保ちつつ保湿することが大切で、生活においては入浴が大きく関係しています。空気が乾燥する冬場だけでなく、高齢者は夏場でも乾燥しがちです。かゆみがない様子でも乾燥がみられる場合は、以下のような入浴方法を意識しましょう。
・泡洗浄で身体や髪を洗う
・洗う時はこすりすぎない
・ナイロン製のボディタオルなどは避ける
・熱いお風呂は必要な皮脂まで奪ってしまったり、皮膚の温度が上がってかゆみが強くなったりしやすいため入浴温度は低めにする
・保湿剤入り入浴剤の使用も検討する

◎皮膚の状態に気を配り、変化があった時には医療職に報告を

入浴や着替えのタイミングで、皮膚の状態を確認しましょう。皮膚の変化は乾燥によるかゆみ以外にも、「処方された薬が合わない」「新たな皮膚の病気」「褥瘡(じょくそう)の発生」などさまざまな可能性を示します。何か変化に気づいた場合は、医療職に報告してください。
またかゆみの原因がわからないうちは、市販の保湿剤などを安易に使うことは避けるのが望ましいです。患部を冷やすなどの応急処置をした上で医師に相談しましょう。


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<監修>
堀美智子
薬剤師。医薬情報研究所(株)エス・アイ・シー取締役/医薬情報部門責任者。一般社団法人日本薬業研修センター医薬研究所所長。名城大学薬学部卒・同薬学専攻科修了。著書、メディア出演多数。
株式会社エス・アイ・シー https://www.sic-info.co.jp/