【詩】　乳がんサポートグループの彼女たち

モネの絵画の色をした
華やかなアームスリーブを
はめてる彼女
オンラインで買ったのよと
左腕を見せびらかす

腋の下のリンパ腺をとってしまった人は多い
リンパ腺は不要なものが流れるところ
なかったら流れないから
けがをすると　腕はだんだんふくれあがる
だからアームスリーブをはめておく

野球帽をかぶっている彼女は
手術の前に化学療法を受けている
髪がだんだん抜けてきたと
笑うけど　今日は脱げないわと
深く帽子のつばを引く

高校生の娘が怒ってるのと　ベリーショートのおかあさん
　おかあさん　どうしてお弁当作ってくれないの
　おかあさん　どうしてバレーの練習に送り迎えしてくれないの
　おかあさん　私の生活をめちゃくちゃにしてる
大変なのはこっちの方なのに

ひどいね　娘さん
でも　それが　娘さんなりの向き合いかたかも
支えてほしい母親に
病気になられた悲しみを
どうしていいかわからない思春期の子ども

始める前に　司会の看護婦さんが言った
みんな同じ病気でも
同じ経験の人はいませんから
誰かより大変　も　誰かと比べて　は
ここでは   なしで　お願いします

サバイバーじゃないよね　私たち
再発の可能性は１０年　１２年
うちの医者によると１５年
私たちは　まだまだ途中
終わってないよね　ファイターだよね

手術が終わって薬を飲み出し
更年期障害の状態が急に始まった私
落ちこんだっていいよ　と華やかなアームスリーブの彼女が言う
いつも強くなくったっていいんだよ
だって　あなたは強いんだから

とうとう乳首作ったよと胸を張る　30すぎの彼女
今は子供も欲しいと思っているその人は
若くしての　思いがけない発症に
新婚生活の甘さも消えて
何度も離婚を考えたと言う

７４才の彼女は　全摘手術をしたばかり
乳房再建？
なんで？何のために？
生きてたかったから手術したの
それだけよ