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【ショート・エッセイ】 らしくない彼ら

80年代に、大阪にコブラというバンドがいた。パンクと一目でわかるなりをせず、わざと普通の格好をしていた。パンクも、音楽シーンで、もう珍しいものではない頃で、私でさえ、パンクの制服化みたいなのは滑稽だなと思ったりすることもあった。それでも、彼らが初めてだった。雑誌に載る程度には人気のあるバンドで、本当に、パンクでございという格好をしていないのを見たのは。

それから、音楽にハマりこむことも、聴く習慣もろくになかった私だが、ここ何年か、コブラに感じたような、爽快な、裏切り感を味あわせてくれるパフォーマーやバンドが増えている気がする。私にとっての筆頭は、知った順に、岡崎体育、Official髭男dism、藤井風だ。(敬称略)

見た目や格好のことではない。もちろん、岡崎体育にかぎっては、それもなきにしもあらずだが。彼の格好をパッと見て、彼が生業にしていることや、音楽の種類は、私には当てられない気がする。

この人たちへの驚きは、彼らが地方出身で、その地方との濃いつながりを、まったく悪びれずに出すことだ。それも、岡崎体育は、まだしも京都だが、ほかは、かっこよさのイメージはない地方の出身なのに、だ。

岡崎体育は、実家住まいだ。子どもの時から使っている勉強机においたキーボードで、音楽を作るという。同居の母のことも話す。

Official髭男dismは、島根大学に通っていて知り合ったメンバーだと言う。どこで知り合ってもいいが、そのマイナーな県、そして、島根大学と言う固有名詞にびっくりした。そんな地方大に通おうと思った人が、まあ、バンドを組んだり、全国区でやってみようと思ったりするのは、自由だ。でも、ほんとにそうしてみたことに。

藤井風に関しては、プロフィールに書いてある、人口1万人の町出身であることに驚いた。岡山出身と言うだけで、もう十分じゃないかとさえ言いたくなる。

自分にうんざりする。ものごとを決めつけ、世間の目とか人がどう思うとかにとらわれていることに。だから、私は、いつまでたっても、かっこいい人になれていないのかもしれない。

私は、コブラの時は、らしくない身なりばかりがおもしろく、そこにずっととらわれた。音楽は、二の次だった。当時の数少ないメディアでの取り上げられ方も、その、制服化に抗う格好のことばかりだった。コブラに失礼なことをした。イロモノを見る目でしか見てなかった。

らしくない人たちは、もちろん、上にあげた人やグループ以外にもたくさんいる。古い価値観にとらわれていない世代は、かっこいいなあと思う。世に出た、作り手の彼らも、彼らを世に出したプロデューサーらも、彼らの音楽を支える聞き手も。感じる世代差が気持ちいい。ついてけるかな、まだ。

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