ひとり居酒屋12〜農耕型マーケティングVS狩猟型マーケティング
日曜だってのに、立花氏の追加暴露で持ち切り。一応これも政治ネタとするなら、維新代表選なんて片隅に追いやられた感さえ。
さて、広告屋の端くれとしては、折田氏プレゼンにあった「種まき→育成→収穫」の農耕型マーケティングについては書かなければならない。
▫️手垢のついたオールドSNSスキム
あの農耕型スキムは、10年以上前にマーケティングセミナーなどで良く聞いた手法で、この世界で仕事してる人なら「え、まだそれ通用するの?」と思ったはず。通用というのは、実際に効果があるか無いかではなく、「あれで客を納得させられるか」という意味で。それぐらい手垢のついたプレゼンで、もし客から「あー、それ前の業者も言ってたけど上手く行かなかったんだよね」なんて事になったら赤面して帰るしかない。オールドメディアならぬオールドSNSスキムだ。
▫️短期選挙に向かない農耕型
EC関係だと、どうしても早期に結果を求められるお客さんが多く、「戦略は分かったけど、初期目標到達が半年後じゃ決算期を跨いじゃうよ」てな具合。それが積み上がって、2年後3年後まで見据えられる事業/経営であればフィットするだろう。
で、折田氏プレゼンは、投開票までの1ヶ月半で収穫というもの。しかも、あの時の状況はマイナススタートであったし、悠長に種まきする時間はなかった。
もし、折田氏が本気であのスキムを提案したのなら、それは大学なりで習ったとこで止まってるよと言いたい。逆に「他の行政もこれで受注できたから」というなら、随分と舐められたもんだし、のこのこ発注する側も勉強して欲しい。
▫️狩猟型の立花スキム(ここからが本題です)
他方、立花氏のやり方は対照的に狩猟型と言える。短絡的に言えば炎上商法である事は間違いないのだが、良くも悪くもSNSマーケティングには不可欠な要素がある。
農耕型が「種まき→育成→収穫」であるなら、狩猟型はさしずめ「獲物サーチ→点火→捕獲」か。
1獲物サーチ
立花氏は東京を拠点としている。当初は兵庫県庁で起きていた事も無関心だったと言っている。自分も首都圏から見ると対岸の火事ぐらいであったが、日に日に、特にネット上では大きな話題となった。
立花氏の一連の動きを見ていると、政治の場に立ってはいるが、基本は迷惑系ユーチューバーと変わらない。(というか、彼が元祖みたいなもんなんだが)
つまり、火事場を、ハレーションを起こしやすい場所/人を探す。騒ぎがあるなら正直どこでも良いんだ。敢えて言い切るなら、それが今回は「たまたま兵庫だった」と解釈する。
2点火
これが、ひとり居酒屋9でも書いた「火種」。狩猟に例えるなら、火種どころか敵の敵を巻き込み、罠を仕掛け、バンバン撃ってるわけだが。これが、折田氏/農耕型に決定的に欠けている部分で、悲しいかなSNSマーケティングには不可欠な要素。
3捕獲
選挙戦という事で言えば集票となるわけで、結果的には当選した斎藤氏への恩恵となったが、立花氏の利得はそこではない。
再生数/登録者数を稼ぎ、更に全国区で顔を売った(その意味では彼が批判するオールドメディアも上手く利用している)。熱狂を起こし、一定数、彼の正義を認める群衆を捕獲した。
▫️ウブな斎藤氏/折田氏(農耕型)と、狡猾な立花氏(狩猟型)
上に書いた2つのスキムは、筆者としてマーケッターとして対比させるのであれば、結果も同じ土俵でなくてはならない。しかし、狩猟型での勝者は立花氏になってしまっている。でもそれが現実だ。
悠長に耕していて当選できたと思っているなら、本当に斎藤氏も折田氏もおめでたい。生馬の目を抜く様な世界で、昨日の一大事が瞬時に掻き消されるSNSの世界で、他人に火種を作ってもらっただけ。
▫️余談
ひとり居酒屋9の繰り返しになるが、唯一、折田氏側の投稿や拡散戦略が寄与したとすれば、正に(公選法の件で)話題となった二馬力だ。単に二候補の合算という話ではなく、真逆の戦略が同時並行で進むという非常に稀なケースであった。
独りぼっち朝立ちから始まり、クリーンで生真面目、不器用とさえ感じる折田/農耕型と、手段を選ばない暴露と対立候補ネガキャンを展開する立花/狩猟型は、通常なら同居できない。その意味においてだけは、今回の農耕型が数パーセントは意味があったかもしれない。