ひとり居酒屋9〜兵庫県知事選を境に、日本はSNS選挙となるのか
斎藤氏が再選を果たし、一夜明けた月曜は「SNS戦略の勝利」「オールドメディアの終焉」で溢れた。
確かに斎藤陣営には400人とも言われるネットボランティアがいたそうで、本人が言う「自然発生的に」は無理があるとしても、ある程度恣意的な拡散(と相手側へのネガキャン)がうまく働いたのだろう。
しかし、SNS戦略→若年層囲い込み→リアルの熱狂という図式が、今後の日本全体の潮流に当てはまるとは思えない。
今回は「火種」があったから。
▫️暴露という火種
春先からウォッチしてきた身からすると、斎藤氏擁護/非難のどちらサイドに立っても再選は難しいと思えた。失職後のテレビ出演や駅前の朝立ちは逆効果にさえ見えたし、選挙戦前半は苦しい戦いと想定した。
潮目が変わったのは立花氏の動きだ。その手法は褒められたもんじゃなく、選挙を壊したと言われても仕方がない。しかし、そこには嘘も含めて「有権者が知りたい情報」があった。これは決定的に「斎藤氏が言いたくても言えない情報」であった。今後の百条委員会や将来あるかもしれない裁判を見据え、頑なにコピペ返答をして来た斎藤氏。クリーンで生真面目、無器用なイメージからも暴露でのネガキャンは出来ない。
そこに救世主が現れた。つまり、立花氏は「斎藤氏の代弁者」の役割を果たした。そして、元県民局長の醜聞やマスコミの偏重、県議会/議員の保身を吹聴し、、、その暴露が火種となった。
マーケティングの世界でもSNSは最重要であるし、皆が各々のビジネスで活用しているわけだが、この世界で「地道な投稿が」という様な成功例はあまり聞かない。やはり「火種」が必要なのだ。冒頭ですぐさま日本全体の流れにならないとしたのは、今回の様な強烈な「火種」がなければ拡散もリアルへの反映もしないから。
想像して欲しい。もし立花氏が立候補しなかったとしたら、どうなっていたか。
▫️嫌われる既得権益
マスメディアが嫌われるのはスポンサーの縛りというのを聞くが、敢えて擁護するなら「裏取り出来てない情報は流せない」というのはあるだろう。そこがネットとの差異でなくては存在価値がない。とは言え、斎藤氏への長時間の会見は紳士的でなかった。結論ありきで、偏向と言われても致し方ないものだった。
そして選挙終盤に音声が明らかとなった片山元副知事及び弁護士への詰問も、プライバシーを守る観点から正しい行動とは思うが、記者は聞く立場であって諭し説教するものではない。あれを聞いた有権者は「なるほど、こうやって核心の部分は報道されないのか」と思い、一事が万事となってしまう。
百条で斎藤氏を詰めたのは、自民と立憲(ひょうご県民連合)を主とする県議。20年(継承としては50年以上)続いた井戸/金沢体制を打ち破った経緯からすれば、彼らもまた既成勢力に見えたかもしれない。(3年前に党を割ってまで斎藤氏を推したのは既成も既成、自民の権化、西村氏なんだけどね)
そして稲村陣営に大打撃となったのは、間違いなく投票日間近の22市長の稲村支持だ。有権者にとって、「既成勢力の保身」にしか見えなかったであろう。無様な、そして状況判断が出来ていない応援だった。
とにかく、民衆は「既得」「既成」が嫌いなのだ。「今」の民衆は。
角栄さんが悪いことしようが、テレビも冷蔵庫も高速道路も新幹線もあって、子供2人を連れて温泉に行ければ文句はなかった。今は皆んな生活が苦しくて将来が見えない。アナーキーでパンクなのだ。
▫️翻弄される愚かな私たち
兵庫県民の方々を愚弄するつもりはないので「私たち」としたが、結局、他県も含めた民衆は立花氏に振り回された。
その前は「斎藤/片山〜牛タン倶楽部憎し」として、マスコミが面白おかしくネタにしたパワハラやおねだりに踊っていた。あれ?マスコミは信用しないじゃなかったっけ?
民衆は他人の醜聞が好きだし、それはネットに転がっている。ホントもウソも。
マスで読めるのは一応ホントだが、無料のは薄い上澄み。核心部分は有料。
今回、選挙前を含めて、情勢は「ネタ」に左右されていなかったか。愚民を翻弄して得をしたのは誰だろうか。