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将棋観戦記#3~A1A3団体戦第3局 ゆーげんさんvsゴッゴルさん~

 昨日の敵は今日の友。リーグ戦でしのぎを削ったかつての敵と肩を組み、共に盤上に立ち向かうA1A3団体戦。第3局は第2局と同日、1月31日(日)に行われました。ここまではA1勢の2連勝と下馬評通りの結果となっています。1勝目を期待するA3側にも、このまま全勝街道を突き進みたいA1側にも、少しずつこれまでとは違ったプレッシャーがのしかかってくる頃合いですね。団体戦特有の緊張感は勝負の場に様々な影響を与え、対局にさらなる深みを与えてくれたことでしょう!本観戦記は相変わらずのヤムチャ視点でお届けして参りますが、本局の魅力を少しでも多くお伝えできれば幸いです!

クラシック中飛車

A1A3団体戦第3局
令和3年1月31日22時30分
於・将棋倶楽部24 大阪道場「自由対局室」
▲ゆーげん △ゴッゴル(持ち時間各15分、秒読み60秒)※敬称略
▲7六歩 △3四歩 ▲2六歩 △4四歩
▲4八銀 △3二金 ▲6八玉 △9四歩
▲9六歩 △5二飛 ▲2五歩 △3三角
▲5六歩 △4二銀 ▲7八玉 △4三銀
▲5七銀 △6二玉 ▲5八金右△7二玉
▲7七角 △8二玉 ▲8八玉 △7二銀
▲7八銀 △5四歩(第1図)

 本局の先手番はA1のゆーげんさん。Twitterのアイコンにしているギャラドスが印象的ですね。A1監督を務めるゆーてんさんと名前が似ていますが、アイコンと紐づけて覚えれば間違えることはありません!(変更されても責任は負いかねますが!)今期のA1リーグでは序盤の5連敗を押しのけて、最終的に6勝5敗と驚異の復活劇を見せて勝ち越しを決めました。
 後手にはA3所属のゴッゴルさんが座ります。ゴッゴルさんも今期の指す順では苦戦を強いられた1人。リーグ後半に連敗を重ねてしまいますが、最後は昇級争いの渦中にあった強敵を打ち破って5勝6敗で残留を確定させました。リーグ戦は参加者に様々な試練を与えますが、この二人もまた修羅場をくぐり抜けて本企画に参加されています。
 そんな二人の対局はゴッゴルさんの6手目△3二金から、事前にも予想されていたノーマル中飛車になりました。第1図より先にも駒組みは続いていきますが、△5四歩と突いた形が昔からありそうな陣形。自信の持てる形で戦おうというゴッゴルさんの作戦なのでしょう。先手のゆーげんさんにも戦型選択の余地がありましたが、第1図の時点できれいな左美濃が完成していますね。A3監督のずーさんは事前に穴熊を予想していましたが、これがゆーげんさんの作戦選択だったのでしょうか。指し手は軽やかに両者1分ずつほどで、しかしながら盤上にはゆったりとした時間が流れるように、なだらかな駒組みが進んで行きました。

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見合って見合って・・・

第1図以下の指し手
▲8六歩 △8四歩 ▲8七銀 △8三銀
▲7八金 △7二金 ▲4六歩 △5一飛
▲3六歩 △1四歩 ▲1六歩 △7四歩
▲6六銀(途中1図)△7三桂 ▲5九角 △4二角
▲3七角 △3三桂 ▲7七桂 △4五歩(第2図)

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 持久戦らしく互いに攻守の間合いを測るように駒組みが進みます。互いに美濃囲いを銀冠に発展させ、先手は右辺の歩を突き出して攻撃態勢を、後手は△5一飛と引いてバランスのよい陣形を整えました。▲6六銀と出る手が印象的で、これが将来的な△7三桂~△6五桂の先受けになっているんですね。角がにらみあうとはいえ、対抗形において角筋は常に気になるもの。▲6六歩型との比較は難しそうですが、5筋に効きを足す分の得が大きいと見ているのでしょうか。さらに▲5九角~▲3七角と綺麗に配置転換を行って、後手陣を攻める準備は万全といった形に仕上がりました。
 後手も△4二角と引いてから△3三桂。これは△4五桂が実現すれば角にあたって味がよさそう。▲6六銀型に対応するかのように角のラインも7・8筋方面へとシフトしています。互いに方針が見えつつあるなかで△4五歩と後手が突き、本局もいよいよ開戦となりました。

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加速

第2図以下の指し手
▲6五桂 △6四角 ▲7三桂成△同 角
▲4五歩 △3七角成▲同 桂 △7三角
▲2七飛 △5二銀(途中2図)▲3五歩 △4三銀
▲4四歩 △同 銀 ▲3四歩 △4五桂
▲同 桂 △同 銀 ▲3三歩成△1九角成(第3図)

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 先手は仕掛けを相手にせず▲6五桂と反攻。後手も角を手順に交換させて、互いにやりたい事を通していくようなやり取りが繰り広げられます。曲線的ではありますが、ここの数手は何度見ても美しいですね!流れるように駒が動いていくので惚れ惚れしてしまいます。取れる駒をすぐには取らず、模様の良さを追求するような手順が勉強になります。ですが実際には先手が少し得をしているようで、感想戦でも▲6五桂の対応を中心に検討が行われていたようです。

 途中2図の△5二銀から戦いは急加速していきます。銀を引いて攻めてこいという姿勢を見せますが、ゆーげんさんもここは攻めどころだと▲3五歩と桂頭をいじめていきました。図はひと目▲4四桂の打ち込みが見える局面でしたが、見送っての桂頭攻めが印象的でした。△4三銀と戻す手に▲4四歩と突くのが幸便で、桂交換後の銀がつり上がったところを▲3三歩成が会心の一手!歩をうまく繰り出すことで、これほどにもきれいな攻めを演出できるのですからA1勢の技巧に驚くばかりです。しかしこれにひるむようではA3が廃るというもの。金取りを相手してしまえば▲4二角が激痛ですから、ここは△1九角成と踏み込みます。先手のゆーげんさんが上手くペースをつかんだところで、ゴッゴルさんも負けじと攻め合いを見せていくのでした。

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と金の遅早

第3図以下の指し手
▲3二と △6四香 ▲4二と △2一飛
▲5二と △6六香 ▲同 歩 △3一飛(途中3図)
▲3三歩 △同 飛 ▲3七歩 △6五桂(第4図)

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 当然の▲3二とに、後手のゴッゴルさんがペースの糸をたぐりよせるべく攻め合いを目指します。△6四香~△6六香とわかりやすく迫りますが、その間にと金をどんどん活用していくのがゆーげんさんの分かりやすい攻め。3三に成った歩が気付けば5二まで這い寄ってきました。
 途中3図の△3一飛から、成り込みで速度を逆転できるかというところで先手は▲3三歩の中合い。これもまた曲線的ですが、たしかに△同飛▲3七歩と受けた形は▲6二とや▲5一角、▲4四角に▲6五桂などやってみたい手がたくさん見えます。私目線には変則的に見えてしまう手にも、強い人ならではの意図が含まれているはずですから、きっと他にも狙いがあったかもしれませんね。さりげなく▲3七歩とした手も、飛車馬両方の効きを止める効率的な受けになっています。飛車の狭さが気になりますが、と金を軸にした攻めが通るのであれば先手は飛車を遊ばせる余裕があるのでしょう。△3七馬には手抜く余地もありそうで、そうなると先手の攻めが十分間に合いそうに思われます。
 流れが止まってしまったかに見えた後手ですが、まだまだ手段はあったとしたもの。ゴッゴルさんは一閃、盤上に△6五桂(第4図)を放ちます。敵の打ちたいところへ先着していく勝負の一手。先手としては取っても放置しても味の悪い桂馬。今後のさらなる反撃に期待を膨らませながら、勝負はいよいよ終盤戦に差し掛かっていきます。

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刃の交わる時

第3図以下の指し手
▲6七金右△7七銀 ▲同金寄 △同桂成
▲同 金 △5六銀(途中4図)
▲6八桂 △3七馬 ▲5六桂 △2七馬
▲7三香 △3九飛成(第5図)

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 ▲6七金右と形を整えて7七の地点での清算に備えた先手。△7七銀から局面がさっぱりしたところで、後手は盤上の駒を使って△5六銀(途中4図)と攻めを繋ぎます。ここで▲6八桂!と打った手が最後のターニングポイントになったのではないでしょうか。私の目には異色の受けに見えますが、ゴッゴルさんもきっとここで踏み込む手段を探したはず。銀取りに構わず△3七馬と眠れる獅子を動かします。しかしこれにも構わず▲5六桂!と金と桂馬だけではまだ攻めに時間がかかりそうですが、△2七馬の飛車取りを間に合わせてくれないのが将棋の速度感覚。▲7三香が軽妙な一手で、これが本局の決め手になりました。相手にしづらい小駒の攻撃を織り交ぜるゆーげんさんの寄せが光ります。ゴッゴルさんも△3九飛成(第5図)と最後の踏み込みを決め、詰ましてこいと勝負を預けました。

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A1の連勝続く

第5図以下の指し手
▲7二香成△同 銀 ▲7一銀 △9三玉
▲8二銀打△8三玉 ▲7三金 △同 銀
▲同銀成 △同 玉 ▲6五桂 △8三玉
▲7三金 △9三玉 ▲8二銀不成(終局図)
まで105手でゆーげんさんの勝ち
(消費時間=▲15分、△15分)

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 ▲7二香成に△同銀と取ったところで検討陣も詰みを発見。▲7一銀から最後まで丁寧に寄せきってゆーげんさんが勝利しました。じっくり組み合う序盤戦から打って変わって、斬り合いに持ち込んだゆーげんさんの技術力。ゴッゴルさんもさすがの勝負術で果敢に先手陣へ攻め込みましたが、ここは上位クラスの実力をゆーげんさんが見事に発揮。一手の差が遠い一手勝ちとなりました。

 これで団体戦はA1勢の3連勝。最初の週末3連戦でA1の底知れぬ実力があらわになったと言えるでしょう。A3B3団体戦で猛威を振るったA3の皆さんが次々に倒れていく姿を見るのは、B3勢としてはなかなかに衝撃的です。2つもクラスが違えば当然のことなのかもしれませんが・・・。A3勢の逆襲に想いを馳せながら、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。相変わらず無責任で拙い文章ではありますが、今後もどうぞご笑覧くださいませ!

令和3年2月11日
やきそば

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