将棋自戦記#27~第8期指す将順位戦第2局~vsひぐらしさん
みなさんこんにちは、やきそばです。熱戦渦巻く指す将順位戦、その2回戦の自戦記です。1回戦は序盤から苦戦を強いられる展開でしたが、辛くも逆転に成功し勝つことができました。この勢いに乗って2回戦も連勝と行きたいところ。昇級を目指し挑む激闘の様子を、今回もしたためて参りましょう。
局前の準備~ひぐらしさん編~
本局の対局相手はひぐらしさん。指す将順位戦には第3期から参加されています。第4期が初参加の私にとっては先輩にあたる存在です。昨年の7回戦で対局しており、その際はノーマル三間vs右四間飛車の急戦調から負けています。1回戦に続いて2局連続となる右四間飛車使いとの対戦。この2局をどう切り抜けるかが今期を左右するに違いないと、開幕時から強く警戒していました。
とはいえひぐらしさんは居飛車・振り飛車問わず指しこなすオールラウンダー。過去の棋譜を見ると「①居飛車党には四間飛車」「②振り飛車党には4筋(6筋)を軸に攻める急戦」「③変化球としてアヒル戦法」と、巧みに戦法を使い分けている様子でした。
特に注目したのが今期1回戦の「ひぐらしさんvsなちゃちゃさん」の棋譜。三間飛車との1局で非常に早い仕掛けを見せていました。リードを奪ってからの慎重な指し回しも特徴的で、自陣に駒を埋める手などは特に印象に残りました。どこで仕掛けが飛んでくるか予想が難しいため具体的な序盤の検討は断念しました。
・序盤の早い動きには特に警戒すること
・中盤以降は受けの手に反応して、切り崩す展開を目指すこと
代わりに上記2点を考え方の軸に据えて、自分の三間飛車をぶつけようと決心した次第です。体調優先で調整を重ね、いざ鎌倉。
じっくりとした立ち上がり
本局は月曜日の夜に行われました。日程調整としては個人的に次善手というべき設定で、水~金あたりに比べて仕事による体力の消耗が少ない点にアドバンテージがあります。若干の疲労と充実した気力を抱えて対局を迎えました。
右四間飛車の立ち上がりは予想通り。速攻を警戒していたら、▲8六歩(途中1図)と一転持久戦の方針があらわになりました。天守閣美濃はヨコの戦いに強いものの、組みあがるまでは玉が不安定になるイメージ。であれば駒組みを優先して速攻の可能性は低いだろうと安堵します。ひぐらしさんはそのまま端玉銀冠を目指していきますが、対する私がどのように駒組みを進めるか。4筋へのケアを考えるとすぐに高美濃を目指すのは自信がありません。飛車の活用を見越して△4二飛と振り直し、△6四銀(第1図)が決断の一手。部分的に△5五歩を見せつつ、△7四歩~△7三銀引と固める構想で迎え撃つことにしました。
待つ時間。凌ぐ時間。
慎重な序盤戦が続きます。△1四歩~△1二香と手待ちをしますが、まだ仕掛けは来ません。△7四歩の瞬間コビンが空くのに恐怖を感じつつ大山美濃への組み換えを決行。▲6五歩と角筋を通す手で初めて駒がぶつかりました。これには6六の地点が将来的な傷になったということにして、位を取らせて△7三銀引(途中2図)と戻ります。続く▲4五歩が本格的な仕掛けの合図。▲6六角と好位置の角打ちに、△4三飛(第2図)と浮いた局面は先手が歩切れ。相手の主張を通しながらも第一波を凌ぐことができ、不満のない展開で中盤まで辿り着くことができました。
主導権を握って
▲7五歩△同歩▲同角に△4六歩と伸ばし、▲3一角成と成り込みを許して△5五歩~△4七歩成までが一連の読み筋。正確には指しながら読みを固めているのですが、この辺りは指したい展開を実現できています。▲4四歩と取り合いを目指す手に、当初△4八と▲4三歩成△同金で金が上ずるのが嫌だなぁと考えていましたが、本譜の△4四同飛(途中3図)を発見して形勢の良さを感じ始めます。
攻め駒がと金一枚で、継続手段に悩んで打ったのが△4五角(第3図)。ここは手の広い局面で手番を握って難しいところでした。代えて△5八とや△7七歩、△4九飛、△3八飛、△5二歩など色々な手が見えるだけにどうだったか。連結の良い端玉銀冠を崩すことに意識を切り替え、勝負はいよいよ終盤戦の入り口を迎えます。
急所を突く
第3図で▲3七桂と催促され、心理的にはとても焦る状況に。△7八角▲同金の局面からようやく△7七歩の叩きが見えて、光明が差してきた気分でした。続く△5八飛に▲7八金打と持ち駒を消費させたところを△7六歩~から△6六金(途中4図)が厳しい攻め。金銀の連携を崩す流れになってはっきり後手良しです。簡単には倒れないひぐらしさんですが、▲7五馬と引き付けた局面で△6六歩(第4図)がまたも味の良い攻め。手番を握り続けることができれば、寄せが見えてくる。そんな段階まで辿り着いたのですが・・・。
着地失敗!!
第4図から▲3四角が見落としていた飛び出し。この手の何が嫌かというと、ちょうど▲6一角成と切る手が生じているんですね。中盤の難所を乗り切ったところで、自玉の安全度に対する危機意識が頭をよぎります。角切りから▲2二飛などと下ろされて、受けに1枚使わされる展開は避けたいものです。そこで△7四歩と馬を追い払ってから△6七銀と打ち込みます。清算して△7八銀と打った手がひとまず詰めろ金取り。△6四銀と馬を取ってしまう手も考えられるところでしたが、一気の寄せを目指すべきと判断しました。▲8八金と受けられて、色々な手が頭を駆け巡ります。
第一感は△6七銀成。次に△7八金や△7九角などが厳しそう。一方で敵玉から遠のく攻めなので、二枚飛車を使った反撃に若干の不安があります。
次に△6九角。△8七金からの詰めろが継続していますが、持ち駒を使い切るのでどうか。
迷った私が下した決断、その一手が・・・。
△7九角!!!!
△7九角!?!?!?!?
そう、このときの私は銀がタダだということにも、次に△9七金を打ったときに駒が1枚足りないということにも気づいていなかったのです。なぜかこれで寄ってると思っていた。思っていたから打っちゃうんですね。
クリックミスではありません。早い決め手を求め、焦った私が放った大失着。冷静に▲7八銀と取られて己のミスに気づきます。こういうとき、怒りや辛さや悲しみではなく、笑いが込み上げてきます。あはは!とこらえきれずに笑ったのは忘れられません。
なにせ寄せの要だった銀が失われ、取れるはずだった金は既に手中にありません。そのうえ角取りまで残っている有様。開き直って攻めを続けますが、第5図の△7九角(2回目)がまたも失着。ここでも▲7八金と寄って節約できることに気づいていません。以下はひぐらしさんの受け間違いに期待しながら、遠くなった先手玉を必死に追いかける展開となりました。
逆転負けで1勝1敗に
それからはひぐらしさんの手厚い受けに対して、むしろ粘るような気持ちで攻めを続けていきました。徐々に重い反撃を食らい、自玉の寿命が少しずつ縮んでいくのを実感します。こうなると端玉がやけに遠いんだなぁ。
第6図が最後のチャンスでした。ここで△6二同金直なら後手にもチャンスがありましたが、本譜は▲5一飛成を嫌って△同金右を選択。気づけば長い勝負になっていましたが、命運も尽きもはやこれまで。最後は再三の△7九角で下駄を預け、即詰みに打ち取られたのでした。
ひぐらしさん、対局ありがとうございました!
振り返りと、次局に向けて
本局は△7九角の大失着に尽きます。感想戦でも色々な筋を検討させて頂きましたが、「△7九角に代えて冷静に△6七銀成と指せていれば良かった」という結論が覆ることはありませんでした。考えるべきはなぜ△7九角を指してしまったのか。思うに心技体の全てがちょっとずつ欠けていたのではないか、というのが私の考える原因です。逆に言えば、方針通りの展開にできていたし、リードを広げる流れも、失着後の戦い方も決して悪くはなかったと思います。では何が足りなかったのか。
心理面においては、「序盤の速攻を警戒したい」という思いが序中盤の良さに繋がった一方で、難解な中盤戦を抜けたところで気の緩みを生み出してしまったわけです。反撃に対する恐怖心もまた、攻め筋を考えるうえでの焦りに繋がってしまいました。技術面では、やはり寄せに関わる感覚の鈍りがありました。詰み逃しとも少し違う、着地失敗型の負けは5~6月に散見されているところでした。終盤に関する学習も、ルーティンをこなしていた一方で惰性で流していた部分があったように思います。体力という観点ではどうでしょうか。直前の土日が忙しいことを踏まえての月曜開催でしたが、寄せの時点で集中力が切れてしまったのは事実です。
そうやって考えてみると、本局は今後に向けてとても良い反省材料を見出せる一局でした。序盤から押される展開ではなく、受けミスの一手ばったりでもなく、寄せのミスだったというのが不幸中の幸いです。去年は根本的な修正を求められるような負け方ばかりだったので、同じ負けでも随分と前向きに受け止められます。次は上記の反省点を念頭に、一歩一歩クオリティを押し上げて対局本番に挑みたいものです。
3回戦の対局相手は兜 四郎さんです。年始に行われた広島オフでお会いした方で、こうして指す順の舞台で対局できることが嬉しくて仕方ありません。となれば良い将棋を指したいと考えるのが指す将心というもの。面白い将棋が指せるように日々精進あるのみです。次回もどうぞお楽しみに!
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