指す将順位戦9th振り返り
毎年長い長いと思いつつ、終わってみればあっという間の指す将順位戦。私も今期の11局を指し終えました。今年は自戦記の更新を停止して臨んだので、自分の将棋について語る機会がぐんと減ったように思います。1本だけ書いておりますので未読の方はこの機会にぜひ!!……と記事の宣伝もしつつ、今年1年の戦いを振り返りながら来期に向けて色々と整理していきましょう。
盤上の話:昇級の原動力はどこに?
まずは今期11局の結果をおさらいしていきましょう。今期は7勝4敗の成績をおさめ、リーグ全体2位で直接昇級となりました。めでたい!!
指し直しを除いて先手4局・後手7局と振り駒は若干負けているようですが、指していて気になるほどではありませんでした。これぐらい偏るのが普通な気もします。
特筆すべきは相振り飛車の勝率です。今回は相居飛車で0勝1敗、対抗形の振り飛車で3勝2敗、相振り飛車で4勝1敗という成績でした。苦手としていた時期の長かった相振り飛車が、いまや白星を稼げる戦型になった。これは間違いなく好成績の要因と言えるでしょう。相振りの勉強を始めたのは7thのオフのこと。時間をかけて実戦感覚を培うことができたのではないでしょうか。過去の努力が少しでも報われると嬉しいものですね。
1局1局の内容に目を移せば反省点がゴロゴロ出てきます。なかでも今期は序中盤の失着が目立ちました。今年に限った話ではないのですが、やはり仕掛け周辺でミスが出るんですよね。捌き合いまで互角以上で勝負できていても、その後の折衝で失着を指すことがありました。将棋にミスはつきもので、アマチュアであればなおさらなのですがここは大きな反省点です。形勢を大きく損ねるような失着が多すぎます。ミスをゼロにするのは困難ですが、大ミスを小ミスにしていくことはできるはず。近い内に棋譜を並べ直して、不安定さの原因を洗い出していこうと思います。
ではそのような状況で7勝を挙げることができた要因は何だったのか、理由は2つ考えられます。1つ目は勝負手の通用率。無理攻めと分かっている局面をどうにか繋げていく……という展開が多く、そこでひねり出した手順がうまくハマったというわけです。特に相振り飛車ではこの傾向が強く、対抗形よりも逆転術が通用しやすかったと言えそうです。もう1つは最終盤の着地。6回戦のボロさん戦こそ悔やまれるものの、勝勢になってからの押し切り方が以前の水準に戻ってきたように思います。昨年は寄せの段階で大きくすっころぶ将棋が目立ちましたから、その点を改善できてとても良かったと思います。
盤外の話:体力と気力を巡るアレコレ
盤外ではどうでしょうか?まず思いつくのが日中対局への移行です。今期は11局中8局を日中に行いましたが、これにより身体への負担をかなり軽減できました。夜の対局も20時開始なら集中力を維持できるのですが、21時を回ると眠気に負けてしまうんですよね。昨年まではレッドブルを摂取するなどして改善を図っていましたが、そうすると今度は寝付けなくなるという……。翌日以降のダメージが大きくて日常生活に影響が表れ、疲労の蓄積が悪循環を呼んでいた面も否定できません。日中に指すことで生活リズムを維持し、健康的に対局に臨むことができました。また、対局直前の過ごし方という意味でも日中対局の方が快適でした。対局を意識するとついつい浮つく時間が生まれてしまうので、個人的にはすぐに対局時刻が来た方が気持ちも切り替えやすかったです。直前に準備する時間が取りづらいというデメリットもあるのでそこは要改善ですね。せっかく良い習慣を生み出すことができたので、来期以降も継続していこうと思います。
もう一つ実感したのがモチベーションの変化です。モチベーションの総量はここ数年でも低めでしたが、それが精神的な安定に繋がりました。「勝ちたい!」というよりも「負けるわけにはいかない!」という感じの、いわば”負のモチベ”と呼ぶべきものが私にとっては源泉になっていました。こうすることで自分の中に物語を構築できて心地良いんですよね。B2に復帰して以降、私は指す順における目標をA3昇級という2つ先の地点に設定しました。遠い目標への道しるべとして、また自戦記を書き記していく補助エンジンとして、この”負のモチベ”が大いに役立ったわけです。ところが、これが負けた途端に物凄い威力の武器となって自分に返ってくるんですね。すると今度は戦う前から、敗れたときに負うダメージを想像するようになります。そうやってどんどん逆噴射してきたのが一昨年や去年の私でした。今期の序盤あたりまではその傾向が続いていて、結構苦しかったのを覚えています。それをどうやって覆すことができたのかと言えば、いくつか転機が思い浮かぶもののこれが一番!とは意外にも断言できません。指す順放送局の存在は間違いなく大きかったし、例外で自戦記を書いた7回戦も一つの岐路でした。リーグ中盤まで昇級争いに絡んでいなかったのも一因でしょう。それらが組み合わさるなかでグラデーションのようにじわりじわりと負のモチベが減っていって、いつしか現状を受容したうえで対局に臨むことができるようになりました。心の内側の話なので、自分でもうまく言語化できないところがまだまだたくさんあります。これもまた、この半年の貴重な経験としてゆっくり咀嚼していこうと思います。
オフと来期の話:理想の構築に向けて
さてさて、ここからは来期に向けての話をしていきましょう。遂にB級1組の門を叩くに至りました。最終目標のA級3組まであと1つ、分厚い壁がここに立ちはだかっています。かつては「級位者リーグその1」として設定されていたB級1組。24でいうところの1~3級が集うリーグというわけで当時から実質有段者向けリーグだったと推察されます。第10期という節目を迎えてこのクラスにもインフレの波が押し寄せて、今では24初段経験者が多数派になっています。現在Rベースでは級位者の方が多いんですかね。少なくとも上位陣は二段まで到達しているわけで、ここを勝ち上がるのは相当大変なことだろうと思われます。改めて実力を高めていかねばなりません。技術的なところは時間が掛かってもいいので丁寧に勉強していきたいと思っています。
そして棋力向上と同じか、むしろそれ以上に取り組みたいことがあります。「理想的な2週間のルーティン」の構築です。相手の情報を調べて、対局の方針や対策の方向性を決定し、実際に手順を掘ったりコンディションを調整して当日を迎える。そして対局結果から次の対局に向けた修正箇所を洗い出し、また次の相手の情報をもとに次の将棋を構築していく……。という一連の過ごし方のことです。準備の部分は今までも挑戦していたことで、私にこういうことをやる人だというイメージをお持ちの方も多いと思います。ただ、まだまだ計画性や連続性というものが欠けています。仕事やその他の状況に振り回されて、やる気があるときだけのめり込むという状況です。その場の思いつきを繰り返すのではなく、1期≒11局≒半年という長期の取り組みとして戦略的にやるのがカッコイイ・・・!皆さんもそう思いませんか??思いますよね???中身も対局相手のことばかりが主になっていて、自己分析が全く足りません。振り返りが甘くなって準備に偏重するのもそれが原因でしょうから、プレーヤーたる自分自身を中心に置いた準備というのをぜひぜひやっていきたいのです。
かつては7thオフ~8thの頃にも同じことの実現を目指していて、当時は「オフに勉強を頑張る」→「勉強を計画的に行うために日常のルーティンを作る」→「シーズンに入ってからは対局をベースにしたルーティンに切り替える」という想定で動いていました。ですが勉強計画に対するフィードバックで得られるのは勉強計画の立て方だけなんですよね。8thの開幕後も学習の継続に終始するばかりとなり、最後の切り替えに失敗しました。苦い思い出ですね。オフのうちにシーズン中のルーティンを作る練習をしておくべきだったと後になって気づいたわけです。にっし~さん提案の指す将オープン戦企画に参加するなどして、指す順を念頭に置いた実戦機会をどうにか作って経験値を溜めていこうと思います。
おわりに
今年も楽しい半年間でした。B級2組の12人による総当たりリーグはほどよい密度で、互いを緩やかに労いながら指し続けていく感覚があったように思います。積極的に声を掛け合う機会は少なくとも、何となく互いのことを気に掛けるような雰囲気が心地よかったです。最終局のほぼ一斉対局というイベントも9thB級2組だからこそ実現したことだったのかもしれません。素敵な対局の時間、感想戦の時間を作って頂いた皆さんに改めて御礼申し上げます。観戦にお越しいただいた方、自戦記を読んでいただいた方、皆さんにも感謝の気持ちをお伝えしつつ、また来期を楽しみに待ちましょう。もちろん、進行中のプレーオフも忘れずに!ここまで読んで頂きありがとうございました。