第7期指す将順位戦を終えて

 noteでは随分ご無沙汰しております。やきそばです。いつまでも続くかのような夏が終わり、さらに月日は流れ、私は今期の指す将順位戦を完走しました。半年に及ぶ長期戦、さまざまなことが起こるものです。第5期・第6期と続けてきたこちらでの自戦記投稿は完全にストップしてしまいました。ですがここに考えたこと、思ったこと、気持ちを綴るという営みは間違いなく私のモチベーションの源泉であります。プレーオフ期間が進み、第7期のフィナーレが近づくなかで、こうして改めて筆を手に取りました。さあさあ、今期の戦いを振り返りながら次の勝負へと歩みを進めていこうではありませんか。

悪戦苦闘の残留劇

 まずは今期11局の流れを再確認しましょう。リーグ全体の結果については大会サイトをご確認下さい。以下に各局の手番と結果、戦型をまとめました。

1回戦 先手○ 戦型:先手中飛車(△左美濃)
2回戦 後手● 戦型:四間飛車(▲5七銀左急戦)
3回戦 先手● 戦型:三間飛車(▲6七銀型─△左美濃)
4回戦 後手○ 戦型:相振り飛車(▲4→3美濃─△3→向金無双)
5回戦 先手● 戦型:三間飛車(△右四間飛車)
6回戦 先手○ 戦型:三間飛車(▲石田組換─△居飛車穴熊)
7回戦 後手● 戦型:三間飛車(▲右四間飛車)
8回戦 先手● 戦型:三間飛車(▲石田組換─△左美濃)
9回戦 後手● 戦型:三間飛車(▲金無双急戦─△5三銀型)
10回戦 先手○ 戦型:三間飛車(▲石田組換─△居飛車穴熊)
11回戦 先手○ 戦型:三間飛車(▲真部流─△端玉銀冠)

 それにしても、今期は苦しい一年でした。苦戦を決定づけたのは2回戦、アカサビさん戦での敗北です。この対局ではアカサビさんの急戦を四間飛車で迎え撃ったものの、準備不足・実戦不足が祟り力を出せずに完敗しました。その最たる要因は体力不足で、いわば夏バテですね。この敗北と同時に肉体疲労もピークに達しました。前期・前々期の原動力である、細やかな準備で相手を迎え撃つスタイルはここで崩れます。
 6回戦を終えて3勝3敗は開幕当初の想定ライン。B2に於いて圧倒的なレートを持つおちりすさん・のののさんと既に当たっている点を考慮すれば、これは昇級争いに食い込むに十分な成績でした。しかしながら将棋の内容に充実を覚えるには至らず、結果的には不調を引きずることになります。7~9回戦の3連敗は「辛さの山場」のように見えますが、実際には2回戦から続いていた長い長い低空飛行にすぎません。3局のどこかで勝っていれば…と思う気持ちは強いですが、流れで言えばその源流が重要。7月に根本の原因があると考えているだけに、覆しづらいものだったのかなぁとも思います。
 残留に至った転機は2つ。1つ目は9月に入院・手術を経験したことです。8月に鼠経ヘルニアが発覚。重い病気ではないのですが、治療方法が手術のみだったので観念して手術を受けました。ここで生活上の一区切りが生じたことでゆっくりと物事を考える時間が生まれました。退院後をスタートラインとして将棋の勉強を再開できたのです。勉強習慣をつける試みは今年の春に引っ越して以来続けていたのですが、先述の夏バテで完全に停止していました。ここに至ってついに毎日詰将棋を解いたり、週5以上のペースで棋譜並べをするような充実した日々が始まったのです。今も継続できていてとてもえらい。どこまで続くが分かりませんが、この成果は今期ではなく来期に現れるものだと信じて頑張っています。
 2つ目のきっかけは10回戦で勝ったこと。勝利というのは何にも勝る良薬で、この対局を落ち着いて指せたことが11回戦に向けての大きな弾みになりました。相手の方からは日程調整にあたり不戦を提案されたので、当初は動揺しましたし、それでも良いかとすら思いましたが・・・。誤解を恐れず、ストレートに言えば、それを蹴ってでも都合をつけてもらった価値があったなと思います。時期的には退院して2局目。勉強が軌道に乗り始めた頃合いだったというのも大きいです。因果は別としても、頑張り始めたことに1つ成果が舞い降りたわけですから感慨もひとしおです。残留争いに対して、楽しもうと気持ちが芽生えたのは盤を挟むの楽しさがあってのこと。本当に大きな出来事だったと思います。最終局も難しい将棋でしたが、どうにか白星をつかみ取って残留となりました。よかったよかった!

来期を見据えて

スタンス探しの旅路はこれからも

 指す将順位戦というのはとにかく「長い」大会です。「振り返ってみればあっという間」なんて言いますが、実態はとてもとても長い。やはり半年にわたるリーグ戦を複数回行うと、それだけの環境の変化が起きて、参加するたびに「指す順との距離感」を考えることになります。
 今期は特に指す順に対するスタンスに悩んだ一年でした。B3で戦った二年間で指す順に入れ込みすぎたのもあります。どこかで必死さを脱ぎ捨てたい気持ちがありました。指す順を通じて得た棋友はかけがえのない存在であり、いつしか僕の将棋を応援してくれる人も現れるようになりました。僕からお願いして、将棋や勝負について面倒を見てくれる人にも出会えました。ただそれは、将棋において「人の顔色を伺う」という副作用を僕にもたらしました。誰もそんなことは気にしていないはずなのに、「ここでこの戦法を指せばどう思われるだろうか?」みたいなことに囚われるように。

例えば燃えるような戦いに身を投じてみたり、あるいは遠くからつつくように参加してみたり。バランスはその時々で良いから、心に余裕を持って参加し続けていきたい。

 今期の開幕前に書いた記事の一節から。僕はここで「去年までみたいに入れ込むとは限らないよ!」と宣言することで、衆目への意識を削ごうとしたのです。その試みは残念ながらうまく行きませんでした。負けに意識が向くと、やはり周囲からの視線を勝手に想像してしまうのでした。それがどうにも辛かった。
 悲嘆に暮れてタイムラインを眺めていると、どこかのヤギさんのツイートが目に入りました。「それこそがやきそばさんである」という趣旨で、非常に鋭い指摘でした。僕にとって「将棋を見てもらうこと」には大きな価値があるということを見落としていたんです。自戦記の更新停止も影響していたかもしれません。他者意識というのは僕にとって指す順の醍醐味であり、また苦しみでもある。苦楽は独立したものではなく、両輪であり、表裏一体である。この大切な認識が抜け落ちていたのです。それを特に実感したのが9回戦の口火さん戦。上位争いに必勝を期する口火さんは、僕を負かすべく最善の準備を尽くしておられました。敗北の悔しさと共に、そうやって対策をしてくれる嬉しさというのを思い出すことができたのです。意識してもらえるというのがどれだけ有り難く、楽しいことか!
 これで「来期は思いっきり頑張ります!」と断言できればかっこいいのですが、確約はできないのが正直なところ。参加し続ける限り、指す順との距離感を探る旅はいつまでも続くことになります。指す順の事を熱心に考える方が楽しいな、というのが現在地の心境で、来期は今度こそ昇級争いに身を投じられたらいいなあと思います。

棋力向上を目指して

 今オフは気合いを入れて、棋力の底上げを目指します。幸いにも、ここ2年ほどで最高レートは400点ほど伸びました。B級2組を戦い抜くだけの力はつけてきたと自負していますが、昇級を狙うならもうひと伸びしたい。初秋から続けている勉強にも目標地点が欲しいところ。来年の開幕時、つまり2023年の5月末までに最高レート1600点を目指して頑張ります。これを書いている現在の最高レートが1477点。キツめの目標ですが、こういうのはやる気のある内が華というもの。できる範囲のことをやっていく所存です。
 内容としては、三間飛車の定跡強化・棋譜並べの継続・5手詰ハンドブックの周回をメインに進めています。ノーマル三間飛車の知識不足は特に痛感した反省点。今期は三間飛車の採用数を増やしたわりに序盤でこける将棋が多く、これは負け越しの要因と言えます。オフの勉強を通じて、互角で中盤のねじり合いに持ち込む技術を身に着けたいですね。棋譜並べは鑑賞の趣味も兼ねて、一番好きな勉強です。来期に向けては持久戦や中盤におけるテクニックを学ぶ意識で続けます。終盤力強化も色々とやりたいことがあるのですが、5手詰ハンドブックが習慣化しつつあるので、1週間に1周ペースを目標に解いていこうと思います。手が止まる問題が無くなって、すらすらと詰み筋を脳内に出力できるようになれば嬉しいですね。他にも色々と考えているのですが、あんまり詳細を話すと来期の対戦相手に狙い撃ちされちゃうかもしれないのでこの辺で。最速キメさん、如月モコナさん、ほかB級2組の皆さん!対局前に改めて読んでるって知ってるんですからね!!(唐突な名指しと未来予知)
 ただ、一番大事なのは計画的に勉強を続けることだと思っています。勉強習慣それ自体も目的の1つですし、先の見通しをもって勉強に取り組むことや、途中途中で振り返りを行うことが、指す順のシーズン本番にもきっと役立つだろうと思っているからです。何よりも、継続・努力というのが元来苦手だった自分にとって、半年規模の学習計画を実行するということ自体がとても挑戦的な試みです。これに関しては結婚して以来、奥さんの規則正しい生活習慣に引っ張ってもらって生活リズムが安定しているのがあまりにも大きい。日々感謝しながら楽しく勉強を続けたいですね。

リーグ戦へのアプローチを安定化させたい!

 リーグ戦期間の話や、対局準備について。作戦を立てて迎え撃つスタイルの復活をどう目指していくか。今期は準備が足らないばかりか相手に狙い撃ちされる回数も増え、序盤から苦戦を強いられる展開が続きました。此処にこそ大きな反省点があるので、来期を楽しむうえでぜひとも改善したいと思います。
 特に悔しいのが対局準備。僕はこんなこともあろうかと、対戦表が発表されたあたりで11局の大雑把な作戦を立てていました。そう、リアル事情によって指す順に割く余裕が失われることは想定済みだったのです。大筋はその通りに指しましたが、夏以降はそのメモ帳をほとんど参照することなく対局に向かっていました。対局直前になって棋譜を集め直し、ざっと確認して作戦を考えるわけですが、そこで春に作ったメモを参照すれば作戦の精度はもっと改善できたはずです。むしろ直前の対策ではすっかり見落としていて、メモを見返すと実は春先に気づいていた、みたいな情報もあります。(例えば、口火さんが金無双急戦を指すことは5月時点でメモに書いてあったが、対局本番では無警戒になっていた。)
 作戦を立てたのは5月ですから、実際の対局までには多かれ少なかれブランクが発生します。春先までの棋譜というのも確かに情報としては少し古い。ただ僕はそこで古いデータだからといって、疲れたからといって見返すことをしなかった。疲れるだろうと見越して、星取によって考え方が変わるだろうからと思い立って、用意したものを使わない。これがすごくもったいなかった。中長期的な取り組みと、棋戦における約2週間のサイクルをどうやって連動させるのか。そしていかに楽しむかというのが来期のカギです。
 計画的な勉強を頑張りたい理由はここにあります。公私色々な事情があるなかで、将棋をどうやりくりするのかという経験を積みたいのです。そうすればより勝てるようになるだろうとも思いますし、そんな風に指す順に参加できればかっこいいだろうな~~という気持ちもあります。スポーツ選手が短期間のサイクルで修正を施しながら一試合一試合臨むように…なんてついつい妄想が膨らみます。こういうのも指す順の1つの楽しみ方でしょう。来期に向けて充実感を蓄えていくようなオフにしたいですね!

おわりに

 来期の指す順に向けて、反省点や意気込みを綴ってみました。日々の頑張りを積み重ねて、来期の開幕を迎えることができればと思います。そしてそれは将棋に限ったことではありません。自らの心身についても同じことがいえます。来年も同じように夏バテしては困りますし、そもそも普通に日常生活がしんどくなっちゃいますからね!指す将順位戦への参加は大切な趣味。だからこそ生活の中に指す順をどう位置付けていくかが重要です。趣味を楽しむ余裕をもっと増やせるように、運動不足を解消してみたり、心身の休め方を学んでみたり、仕事や家事をより充実したものにしてみたり。人生を彩る存在として、これからも指す将順位戦を楽しもうと思います。自戦記の再開については未定ですが、noteには今後も指す将順位戦関連の記事を上げるつもりです。来年もどうぞお楽しみに。
 それではこの辺で。皆様、今期もありがとうございました!

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