将棋自戦記#32~第9期指す将順位戦第7局~vsずほさん
実に1年ぶりの自戦記となりました。みなさんお元気でしたか?2020年から投稿してきた指す将順位戦の自戦記ですが、近年は1回戦から投稿を再開しては途中で力尽きて中断…を繰り返していました。精神衛生上よろしくないなということで、今年は自戦記の休止を決めておりました。
棋戦運営のグループからも抜けることにして、久しぶりにいち参加者として臨むことになった今期。自分のペースを改めて作っていこうと思っていた矢先のことでした。同クラスのずほさんの記事が投稿されたのです。
こんなこと言われちゃったら、そりゃあもう書くしかないですよね!いやぁ本当に嬉しかったのを今でも覚えています。前期は同クラスながら対局がつかず、なかなか交流のチャンスがありませんでした。私も今年は対局できるかなと楽しみにしていたところだったので、こういう風に言ってもらえるのが本当にありがたかったです。いつもの書き方を思い出しながら、本局を振り返っていくことにしましょう。
また、本局はずほさんも自戦記を書いて下さっております。ぜひぜひこちらもお読み頂いて、双方の視点から対局を楽しんで頂けると嬉しいです!!ずほさん、素敵な記事をありがとうございましたー!!
局前の準備~ずほさん編~
ずほさんは中飛車・三間飛車を中心とした振り飛車党。後手番では居飛車の対抗形を持つこともあるようですが、基本的には相振り飛車も歓迎するスタイルをとっています。中飛車をメインにしているだけあって攻め棋風です。その攻撃力が活かされてか相振りの勝率が高く、警戒すべき相手だという認識でした。
細かい準備をする余裕はありませんでしたが、序盤の組み方などを中心に相振りの戦い方を検討することに。先手番の検討では3手目▲7五歩に対して△8八角成を選択していることが判明。角交換型の相振りで勝負するのは分が悪いのではという印象でした。私はどちらかというとある程度組み合う形の方が好きなので、今回は可能な限り角道を止めて戦う方針にしました。後手番では初手▲5六歩からの中飛車が本命。対三間では左穴熊や左美濃を採用していることが多く、それならこちらも力を発揮できそうです。
局面検討の代わりといってはなんですが、ずほさんの自戦記にも一通り目を通しました。直近の記事で攻め・受けのバランスについて言及していたため、実際の対局では棋譜を並べたときと印象が変わってくる可能性にも注意が必要そうです。実戦でそこまで気を回すのは難しいところですが、せっかくの対局ですから、指し手を通じた会話を楽しみたいなと思いました。
対局当時は7回戦が進行中で、私は3勝3敗の指し分けの成績でした。悪くはないのですが昇級争いを目指すには今一歩という位置。直前の6回戦が首位を走るボロさんとの直接対決で、そこに敗れたというのも痛かったですね。モチベーションも沈み気味でしたが、そんなときにずほさんとの対局を迎えることとなったのは幸運でした。せっかく自戦記を書くんだから良い将棋を指したいなと、自然に気持ちが高めることができました。
上位が混戦模様になっていたのも大きかったですね。直対だけでは順位の差があってずほさんを捲ることは叶いません。しかし4勝3敗の2位集団を生み出すことができれば、まだまだ面白いリーグにできそうです。実はまだまだ上を見ていいんだぞと、少しずつ現状をリフレーミングすることで勝負に対する前向きさを取り戻していきました。
対局は日曜日の午前に決定。今期は日中に対局予定を組んでいるのでありがたいことでした。朝からルーティンとなっている神社へのお参りへと赴き、気分を高めていざ対局の時を迎えます。
すれ違う思惑
ずほさんの先手番で対局開始。初手▲5六歩からこちらも振り飛車に構えてここまでは想定通り。ところがずほさんは左銀を繰り出してから▲3八金(途中1図)と、金銀を早く動かす作戦を取ってきました。後手番では左穴熊を本命視していたからこれにはびっくり。二枚銀を繰り出して強引に攻めてくるやつか!?と緊張が走ります。しばらくしてずほさんは▲8八飛と向かい飛車に振り直し、中央からの仕掛けは消えました。次に気になるのは左玉調の将棋。普段は指さない早期の△1三角を決行して先手陣を牽制します。一方的に手探りな将棋になっている感覚は既にあって、何かしらの準備がまだあるのだろうという雰囲気を感じていました。
飛車先交換に▲4七銀の対応で先手の狙いがあらわになりました。私の三間飛車に雁木で対抗する作戦のようです。手厚い陣形には引き飛車から矢倉崩しを狙うのが部分的な対応策。△3一飛(第1図)と引いてこちらも準備を始めます。矢倉ではなく雁木に組むことで4筋を手厚くする意味があるのかと思うと、矢倉崩しの形に誘導されているような気もしてきます。実際、矢倉系の相振りには同じ攻め形を多用しているのです。ここを狙い撃ちしてきたか!!と思っていたのですが、ずほさんの考えは少し違うところにあったようです。この辺りのすれ違いも面白いところですね。
銀出を巡る錯覚
ずほさんは▲8五飛と中座飛車に構えてきました。こちらとしては△3四銀と出て攻撃形を完成させたいのですが、このとき私は▲8四歩△同歩▲同飛から▲4四飛と掠め取られるのではという錯覚に陥っていました。銀が浮いている形を気にしたのですが、実際には△4三金で飛車が捕まります。他の候補手としては△5四銀の腰掛け銀も考えましたが、そうなると3筋方面への攻防両面の薄さが気になって・・・。悩みに悩んで△7四歩(途中2図)を選択。飛車のラインを遮りつつ、次の△7三桂で中段から追い払う狙いです。このままでは△4五歩からの仕掛けもやりづらいですから、飛車にも早く動いてもらいたいところ。
ずほさんは少考の後に▲7五歩と合わせてきました。ここで桂跳ねもありそうでしたが、桂取りの▲7四歩がずっと玉頭に残りそうなのが気になりました。7筋は平穏におさめることにして、その次に△3四銀(第2図)と構えます。先手は2枚目の歩を切ることができましたが、▲7五飛・▲6六角の形が悪く後手も戦えるはずという判断でした。
攻め駒を責められて
ずほさんは▲3五歩のB面攻撃を選択。厚みを活かした戦い方で、こちらも押し切られないように反発していかねばなりません。△2五銀のぶつけに▲4七銀とかわされましたが、ここは▲同銀△同桂▲3二銀が怖かったので少し安心しました。ところが続けて△1五歩(途中2図)と銀を軸に端攻めを狙った手が手拍子の失着。当然の▲2六歩に△同銀▲3四歩とした局面で飛車の横利きが通っており、△2五桂と逃げる手が失われてしまったのです。ここは端を伸ばす前に△4五歩の突き捨てが必要でした。飛車のラインを止めていれば△2五桂を実現できていたはず。本譜は駒損不可避となって、無理攻めを誘う先手の狙い通りの展開に……。
とはいえ攻めを止めるわけにはいきません。取られる前もうひと仕事、△4五桂と跳ねて第3図。どこまで暴れられるかという勝負になりました。
”次の攻め”を示して喰いつく
先ほどの桂跳ねに▲4八銀が冷静な対応。暴れる手段を求めて端に手を付け、持ち歩も盤上の銀も使い果たして香車を拾います。いかにも切れ筋ですが、そこで△3五香(途中3図)が狙いの攻め筋。3七の歩を活かして、王手で金駒を補充してやろうという狙いです。先手も3四の歩が残っており、これを遮断できないのが非常に大きい。先手に反撃の手番が回ればそれまでなので、とにかく次に攻める手段があるんだぞというのを見せて勝負勝負と迫ります。3八の地点で清算してから△4六角と飛び出して、取られそうだった桂馬がなんと生還しました。この角も先手陣をにらんでおり頼もしい限り。このまま圧をかけて行きたかったのですが、残念ながら攻め駒が足りません。歩切れが痛く、角桂を使った有効な攻めが見当たりません。
仕方のない△2八銀に▲2七金とかわされていよいよピンチ。玉周辺がだめならば、左辺の飛車角を狙いたいところですが手段がありません。なおも攻めを繋げるにはこれしかないと、イチかバチかの勝負手△2九銀成(第4図)を放ちました。
泥臭く勝負手をつなげて
△2九銀成(再掲第4図)は▲同玉で攻めが途切れるので感触としては良くない手。あえて銀を成ることで同玉以外の選択肢があるように見せかけようという魂胆です。代えて△2九銀不成では王手となり、同玉以外の手でも玉が移動してしまいます。拾った桂馬で△4六桂の両取りを実現するには、こうして先手に委ねるしかありませんでした。祈りが通じて先手は▲5五歩。桂馬の両取りが実現し、ここに来てついに息を吹き返します。
角筋は止まりましたが金が手に入りました。少々重いですが△7四金~△6五金~7六金と大駒に圧力をかけます。手順中のどこかで角金交換を受け入れてくれれば大成功ですし、角が最後まで逃げれば△5五角が飛車取り。これはひと目好調な流れです。自陣に近くにはすでにと金が居ますから、二の矢を撃たれる前にとにかく手番を握って攻めることに集中しました。
たんに△5五角では▲6六銀と弾く手があり不満でした。▲6六銀に次の手を生み出す手段はないか……そう考えて見つけたのが△2八成銀(途中5図)でした。取ってくれれば△5五角が両取りになります。もちろん金銀交換なので大きな得とはいえませんが、馬を作れるならそれに越したことはありません。ずほさんは角を封じるべく▲4六銀と投入しましたが、それが結果的には敗着だったようです。
拾った金で飛車を詰まし、△1八飛(第5図)まではほぼ一直線。こちらも角を喪失しており、先手陣は挟撃形とはいえまだまだ粘りが効く形。寄せに至る道筋がなかなか見えず、心理的には追い込まれたまま最終盤に突入します。
粘りを振り切る
▲2九金と弾く手はこちらも第一感。飛車を引き成って、攻めが遠のいてしまいます。どうにかしてもう少しだけ攻めを厚くしたい。そう思ったときに見えたのが△3七桂成~△4五歩(途中6図)でした。渋滞していた4筋がほぐされて、良いところに拠点ができました。数手進んで△4六銀と打ち込んで、先手玉を下段に落としてからは一手一手の寄り。何度か即詰みを逃していたようですが、すっぽ抜けが怖くて踏み込めないところもありました。とにかく自玉が安全なので、攻めが途切れないように慎重に慎重に迫って、幸いにも最後は詰ますことができました。
最後は間違えないことを第一にした指し回しで勝てたことは良かったと思います。ただ本音を言えば、こういう場面で踏み込めるだけの読みの力が欲しい。反省点も多々ありながら、内容の濃い一局でした。ずほさん対局ありがとうございました。
振り返りと、次局以降に向けて
本局は無理攻めを誘われる展開から、受けが崩れる瞬間まであの手この手で攻めを繰り出していくような将棋でした。今期は似たような形で勝つ将棋が多く、ここ最近の傾向がよく表れた内容と言えます。勝負手を捻り出してそれを押し通すのはいかにも駆け引きという感じでたまりません。ただこのスタイルには限界があることも事実です。ひねった手段に頼らず形勢を掴んでいく中盤力が必要だなと改めて思い知らされました。仕掛け周辺の鈍感さをどうすれば改善できるか、これから考えていく必要がありそうです。
短期的に改善できる部分で言えば読みの精度でしょう。今期はシーズン中の勉強量がかなり減っているので、せめて詰将棋を解く習慣だけでも復活指せておいた方が良いのかなとも思います。悔いなく今期を走り切るために、今できることをコツコツやっていきたいなと思います。
本局を勝って今季の成績は4勝3敗に。幸いにも昨年の勝数に並ぶことができました。あと1勝で自己ベストの”B2で5勝”に到達、2つ勝てば初となるB2での勝ち越し。3つ、4つと積み上げればさらに良いところが見えてくるかもしれません。リーグは相変わらずの混戦模様で上に抜け出すには難しいところもあるのですが、こうやって前を見ながら将棋を指せるのは本当に久しぶりです。残り4局も思いっきり楽しもうと思います。
久しぶりの自戦記、とても楽しく書くことができました。次の機会はいつになることでしょうか。それもまた楽しみにしつつ一旦筆を置こうと思います。お読みいただきありがとうございました!
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