「お元気ですか?私は元気です」
もらった手紙は大切にしている。筆跡からはその人の空気感が思い出される。便箋の模様といい、言葉といい、どうしてこれを選んだんだろうと想像するのが大好きだ。読むたびに気が付くことや感じることが変わるので、自分の体は一つだけれども、中身は変わっているんだなと気づく。
ここ2~3年くらい、一気にライフイベントが押し寄せてきた。苦手なことや初めてのことばかりに苦戦していて、少々自信をなくしていた。自分がどんな人間だったのか、何が強みなのかを思い出せずにいたので、もらった手紙を読み返してみたのである。当時はわからなかったけれど、この人はもしかしてこういう気持ちだったんじゃないかとか、新しい発見があったりして面白かった。この便箋に書いてある言葉はすべて私のためだけにむけられたものだ。なんて贅沢なんだろう。
とまあこんな感じで、自分がもらうと何年も何度でも楽しめるし、なによりその手間が嬉しい。
人に書くことも好きだ。手軽な連絡はLINEで済ませるが、相手に真っ直ぐに向き合いたい時や、自分にとって大事な報告は、自分の字で伝えたいというこだわりがある。今回は両方の目的で一通ずつ書いた。相手は、離れているし頻繁には会わないけれど、好きなものから生き方まで色んなことを話す人。
相手との思い出を振り返る。前にどんなことを話したか、出会いがなんだったか。意識したことはなかったけど実はもう何年もの付き合いになることに驚く。お互い環境も変わって、それぞれの年数を生きてきている。中身が変わっても、関係が続いていくのはとてもありがたい。
伝えたいことは決まっているので、あとはどんな言葉を使うかだ。どうしてこの人に、あえて手紙という形で伝えようと思ったのかを考える。気持ちを誰かに伝えるとき、自分との対話は必須だ。言葉を組み合わせては解体して、また新しく組み込んで、ということを何度か繰り返し、完成した。最後には感謝の言葉を添えた。
手紙は会話と違って一方的だから、相手の反応がすぐにはわからない。ドキドキしつつ、届け、という願いをこめて封をする。住所を書きながら、あんなに近くにいたのに、今はこんなに離れているんだなとちょっとだけ寂しくなったりもして。