「野宿をしながら自転車で日本を横断した話」 5/27 静岡→浜松→湖西 98km
静岡市民の朝は早い。
この日のルートはこんな感じ。
今日も早起きで、朝5:15には起床。おそらく静岡で野宿している人の中で、一番の早起きだろう。
しかし、周りを見回してみると、既に公園内には人影が。ほうきとちりとりでゴミ拾いをしているおじいちゃん&おばあちゃんや、ランニングをしている人。
基本的にこの野宿の旅の鉄則は、夜は人がいなくなってから、朝は地元住民が朝活をする時間になる前まで公園にいることとしている。掃除などのお邪魔にならないように、少し急ぎ目に顔洗いと荷支度を済ませる。
寝袋を所定の袋に片付けて、出発しようとした際、この辺りに住んでいるであろうおばあちゃんが声をかけてくださる。
「旅してるの?」
やんわりしたトーンで僕に言う。
「そうなんです、この自転車で東京から鹿児島までいく予定です。」
と、旅の内容を少しばかり説明した。すると、最後まで頑張ってねという温かいお声がけと一緒に、Fitsのフルーツガムと1000円を小銭でいただく。
「自転車旅をしていると、道行く人に声をかけられる」といったようなことは、ネットやYouTubeの動画での下調べでよく耳にする。が、実際に自分が本当にそういう経験をするとは思わなかった。なんだか、今日1日はいつも以上に頑張れそうな気がする。
命と引き換えに○○を失う?
静岡市を出発する前に、昨日見学することができなかった駿府城公園へ。城跡ということで、実際のお城は無かったものの、弥次喜多像や徳川家康の立像が見れて十分満足。
また、朝日に照らされた公園内では、大勢の高齢者がラジオ体操をしている。全国どこの公園に行っても、こういった光景が広がっているのは、なにか地元感のようなものが感じられてほっとする。自転車を降りて、青森代表としてちゃっかり参加をする。ラジオ体操を完走した後、公園からすぐの所にある浅間神社で今日の安全を祈った。
駿府城公園を発って5分ほど経過した後、とんでもないことに気づく。自転車を漕いでいる時に使っているグローブをどこかで紛失してしまっていた。さっき、神様に「落とし物をしませんように」と頼んでおくべきだったが、後の祭り。こういうドジは日常でもたまに発生するのだが、まさか旅が始まって数日目で早速起きてしまうとは。
結局来た道を戻ってみると、公園内に落ちていたのでセーフ。結果的に少し出発が遅れてしまったが、とりあえず一安心。
静岡ならではのあの光景!
静岡市の中心地を出ると、川や広大な海の景色が広がっている。爽やかな風に当たり、初夏を感じながら漕ぎ続ける。お隣町の焼津市に入ると、「東海道」という文字を看板に見つけることが多くなる。もちろんのことだが、青森に住んでいると全く縁もゆかりも無い土地だ。
しばらく漕いでいると、ある異変に気づく。ずっと緩い登り坂を進んでいたはずなのにも関わらず、ペダルが少しずつ重くなっていく。ふと前を見渡してみると、目の前にはスイッチバック(急勾配な坂のくねくねした道)が広がっている。なぜGoogle Mapsはこんなに残酷な道を通らせるのかと、悪口を言いたくなるような急な坂だ。
ここからは、数km自転車を押して歩いた。後輪の上に荷物を積んでいるので、この坂は流石に登れない。日差しも照らされて気分は落ち込むばかり...と思われたが、意外とそんなこともなかった。
というのも、上に登っていくにつれて、何か本などで見覚えのある一面緑の景色が広がっていたからだ。近くで作業をしていた農家の方に話を聞くと、予想していた答えが返ってくる。静岡県といえば...そう、お茶っぱだ。地元の青森やアメリカでこんな大規模の茶畑を、今まで見たことがあっただろうか。おそらくない。絶対にない。さすが静岡、期待を裏切らない。
道路の両側に広がる果てしない日本の田園風景。この茶畑をみるためだけに、静岡にまた来てもいいくらいだと、心からそう思う。
隣町の掛川市へ
自転車は更に進む。かつて甲斐の武田氏が築城した諏訪原(すわはら)城跡や、事任(ことのまま)八幡宮をささっと見学しながら、次の経由地である掛川市へ到着。道路標識に、「掛川城大手門」と書かれていたので、ルートからは外れるものの、なんとなく立ち寄ってみることに。
この時点でおわかりだと思うが、目的地の街周辺の観光地以外はあまり下調べをしておらず行き当たりばったりなのだ。まあ、これはこれで旅の情緒があって良い。城内を散策しようと一瞬思いはしたが、この日の気温に圧倒されて、周りから城廓を見る程度にする。それに加え、山内一豊(尾張出身の土佐藩主)をあまり知らない。日本史が好きとはいっても、所詮ミーハーだ。またの機会まで城内見学はお預け、ということで目的地へ。
浜松のりんごは○○県産?
その後は、「げんこつハンバーグ」という看板メニューでよくメディアに取り上げられている「さわやか」のお店を通り過ぎる。
天竜川という、これまたどこかで聞き覚えのある川を越え、無事に浜松に到着。大きな駅ビルの地下街へ行き、半額シールが貼られていた刺身用のブリに狂ったようにかじりつく。
余談だが、浜松のスーパーで売っているりんごは青森県産のふじりんごとジョナゴールドである。長野県産ではない、青森県産だ。
浜松城のユニークさとは?
この時はまだ夕方前だったこともあり、せっかくなので駅からすぐの所にある浜松城を見学。ここにも徳川家康の立像。ここまで静岡県内のいろいろな場所に設置してあると、家康でワンチャン経済を回そうとしているようにも見受けられる。
ちなみに、浜松城は少し高所に位置してあるため、浜松市内を一望できる。さすが静岡県一の人口の街だけあって、360度どの方向を見渡してもビルなど建物が立ち並んでいる。少し羨ましい。
浜松城の本丸は、規模こそ他の城廓に劣るものの、大きさや色合いのことなる石垣の連なり、右下の特徴的な石落とし(敵が攻めてきた時真上から攻撃するための拠点)には浜松城のユニークさが感じられる。先ほどの茶畑といい、浜松には何か魅力を感じさせるものが多いのだろう。
明日は晴れるかな?
城内見学の後、マクドナルドで小休憩。すると、明日は天気が崩れるという予報を見て、この日のうちに湖西市へ向かうことを決断。明日の目的地に街に少しでも近づいておきたい。
道中、おそらく人生で初の「MEGA」ドンキでカレー・サラダセットを食べ、再び道を進む。自転車のライトは点灯しているものの、万が一の事故を避けるために、人が少ない場所は歩道を進む。気温は既に低くなっていたため、真夏のような日差しの日中とは違い、とても走りやすい。
道中、有名な浜名湖、弁天島などを通り過ぎたが、真っ暗でよく見えなかったのは心残りだ。といったところで、厩舎のような匂いの広がる湖西市に到着。街全体というわけではないが、この日寝泊りをする予定だった公園の近くが特に馬の匂いがした。それもかなり強烈な匂い。どこからだろう。
幽霊より○○が怖い?
ということもありながら、なんとか目的地の公園に到着。公園の規模の割に電灯が少なくて薄暗いため、霊感がある人にはうってつけだ。ただ、1人で野宿することに関してはエキスパートなため、あまりお化けなどには驚かない方だ。多分。それより血を吸う悪魔の方が厄介。
人が全くいないのだが、たまに公園のそばを通り過ぎる車がいる。仮に運転している人が、薄暗い公園の中にポツンと歯磨きをしている僕を見たら、恐怖でしかないだろう。夜10時をすぎると、街灯のほとんどが消えて、真っ暗な公園で1人寝る準備をする。暗くて人気がない、これ以上に快眠が期待できる公園は初めてかもしれない。
今日は予定外の街まで漕いだことにより、合計で100km近くの旅となった。達成感を存分に感じた、静かな夜だった。