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「ヤジは公職選挙法違反」ではない

 朝日新聞で、わりと分量を割いてヤジ排除の話を取り上げていたので、紹介しておきます。朝日新聞の北海道版に掲載された記事(2019年9月16日)で、なぜかリンクによっては「有料記事」と出るけど、このリンクだとタダで読める。仕組みがわからない笑 

 記事の趣旨は、これまでの「ヤジ排除」についての警察による説明の変遷を振り返りつつ、「そもそもヤジって違反になるの?」ということについて解説しています。ネトウヨのみなさんは、この話題について、二言目には「ヤジは公職選挙法違反だ」「排除されるのは当たり前だ」と騒ぎ始める傾向にありますが、過去の最高裁判例をもとに考えるなら、肉声で、単独でヤジを飛ばす行為が、公職選挙法が定める「自由妨害(いわゆる選挙妨害)」に当たるということはない。そういう極めて当たり前のことが書かれています。

 その上でより重要なのは、ヤジという一見「迷惑」で「失礼」にも思われる行為が認められないとしたら、それは民主主義社会においてまずいことになる、ということが述べられている点にあるでしょう。

 言論法が専門の山田健太教授(専修大学)と、元・道警幹部の原田宏二さんの二人のコメントが、それぞれ冴えているので、ぜひ実際に目を通してみてほしいです。

https://digital.asahi.com/articles/CMTW1909170100017.html?fbclid=IwAR1gXeP1H4ksGR5ZIrAs-3J6oi7RYfKUkbciM1RZGMxpFoWvHh-9Gql7dog

<2019年11月23日追記>

(上のリンクが切れていたので、本文をこっそり転載しておきます)

政治家にヤジも言えない? 元道警幹部が指摘する危険性

斎藤徹、伊沢健司 2019年9月17日08時00分

 街頭演説中の政治家に「ヤジ」を飛ばした市民を北海道警の警察官が強制的に排除した問題が起きてから、15日で2カ月がたった。道警はいまだに「事実確認中」とくり返し、詳しい法的根拠の説明をしていない。そもそも、政治家にヤジを飛ばすことは許されないことなのだろうか。

 7月15日夕、JR札幌駅前。参院選で応援演説をしていた安倍首相に向け、ソーシャルワーカーの男性(31)が「安倍やめろ」「帰れ」と連呼した。直後、男性は複数の警察官に体をつかまれ、後方へ移動させられた。男性が理由を尋ねると「演説を聞いている人の迷惑になる」と説明された。

 演説会場周辺は与党支持者らで埋まり、保守団体などが「安倍さんを支持します」と書かれたプラカードを配っていた。「会場の雰囲気にちゅうちょしたが、格差が広がる現状への不満を直接首相に伝えたかった」と男性。「周囲の支持者とトラブルになっていないし、暴れてもいないのに犯罪者のように扱われたのはおかしい」と振り返る。

 ヤジをめぐっては、札幌以外でも話題になった。柴山昌彦文部科学相(当時)は8月27日の記者会見で、3日前に埼玉県知事選の自民推薦候補の応援演説をした時の出来事を引き合いに出し、集まった人は候補者や応援弁士の発言を聞きたいはずだとして「大声を出すことは、権利として保障されているとは言えないのではないか」と述べた。

 辞書で「ヤジ」と引くと、「第三者が当事者の言動を大勢に聞こえるよう大声で非難しからかうこと」とある。

 柴山氏の発言については、SNS上で「表現の自由の侵害だ」と批判があった一方、「ヤジは騒音」「演説を聞きたい聴衆にとって迷惑でしかない」と支持する意見も多かった。

 実際、ヤジは攻撃的な文言のくり返しになることが多く、聴衆が不快感を覚える場合も少なくない。ヤジを飛ばす人と演説を聞いている聴衆の権利は、法的にどう整理されているのか。

 札幌市の男性を排除した道警は取材に対し、当初は公職選挙法が定める選挙の自由妨害違反(演説妨害)の疑いがあると説明していた。ただ、1948年の最高裁判決は演説妨害について「聴衆がこれを聞き取ることを不可能または困難ならしめるような所為」としている。

 言論・表現の自由に詳しい専修大の山田健太教授(言論法)は「大音量マイクの演説に対し、単独・肉声でヤジを飛ばした今回のケースは『演説妨害』とは言えない」と説明する。

 山田教授は、街頭演説は支持者だけが集う屋内集会と違い、様々な考えをもった人が集まると指摘する。「賛意を示す拍手やかけ声があれば、反対意見を示すヤジも出る。ヤジは最も原始的な表現活動であり、ヤジを公共空間から排除することは、憲法が保障する『表現の自由』を狭めることになる」

 北海道警はその後、当初の説明を引っ込め、代わりに「現場のトラブル防止の観点から講じた措置」と強調し始めた。ただ、根拠となる法令については、2カ月がたった現時点でも「事実確認中」と繰り返す。13日の北海道議会本会義に出席した山岸直人道警本部長は「警察の中立性に疑念が抱かれたことを真摯(しんし)に受け止める」と述べた。

 北海道警の元釧路方面本部長で警察組織に詳しい原田宏二さんは、警察は「人の生命や身体に危険が及び、急を要する場合は、その行為を制止できる」と定めた警察官職務執行法第5条を拡大解釈した可能性があると指摘する。「治安維持のためなら、多少の法律違反をしても世論は目をつぶってくれるとでも思ったのではないか」と話す。

 そのうえで、こう言う。「選挙は、主権者である国民が自らの代表者を決める民主主義の土台だ。ほかの聴衆にとって迷惑な面もあるかもしれないが、聴衆が街頭演説でヤジを飛ばすことも選挙への参加形態の一つだ。明確な法的根拠なしに、警察権力が介入する危険性に、もっと自覚的になった方がいい」(斎藤徹、伊沢健司)

<追記ここまで>

 同様の趣旨では、以前も紹介しましたが、以下の現代ビジネスの記事が良かったので、そちらもどうぞ。民主主義とヤジの積極的な関係について。



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