スリーピース

文:弟 写真・イラスト:姉   不定期に創作短編を書きます(たまに日記も)

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最近の記事

弟の日記⑤緊張腹痛狼狽好調説

私は物凄く緊張しいである。 五厘のバリカンが友達だったころの丸坊主時代、(野球部員の言い換え)幸いにもレギュラーとして試合に出させてもらっていたが、試合前は必ず腹を壊していた。 特に、次の回の攻撃、自分の打席から始まる時は最高潮の腹痛が私を襲う。 スリーアウトチェンジで、守備からベンチに戻り監督の前に集まるのだが、私は最高齢の監督を無視してトイレに駆け込む。 監督のありがたい話を聞いていたら、先頭打者の私は、打席で目も当てられない状態になるだろう。(1番距離が近い相手の

    • 弟の日記④ 待ち合わせ恐怖症

      久しぶりの友人が集まるような同窓会や結婚式などがあると、前日に必ず見る夢があるのです。 しかもこの夢は5種類あります。(多いな) 一つずつ詳細に書くと大変なので、それぞれざっくりと…… 1つ目は「寝坊」 待ち合わせ関連のネタとしてはオーソドックスなもの。 一度は遅刻防止のために余裕を持って仕掛けたアラームで起きるのですが、朝に弱い私はそのままもうひと眠り。次に起きた時は「やらかしたな」と書かれた友人からのメッセージが届いている夢だ。 現実世界でも私は朝が苦手で、エンジン

      • 弟の日記③ 親友ニッちゃんの気まぐれ

        ※下記文では、ニキビの事を『ニッちゃん』と呼んで、怒りを抑えています。          〇  おでこに一つ、ニッちゃんが「コンニチハ」と顔を出した。  私の顔には、必ず最低一つニッちゃんが出現する。鼻の下にポツッと、寝る前に薬を塗り続けて治ったと思ったら今度はおでこにポチッと、やれやれ治ったと思ったら顎の下にプチッと……、いい加減にしろ!  おでこ、鼻の下、鼻の横、顎の下。観測できたニッちゃんの活動拠点はこの4か所、これらの拠点をランダムに移動しているようだ。そして

        • 弟の日記② ドヤ顔の蚊

           駅近くのカフェチェーン店のコンセント付きカウンター下。この場所こそ、我々、蚊にとって最適解である。  最高気温が毎年更新されていく現代、特に今年の夏は日差しで羽が焼けてしまうのではないかと心配になるほどだ。そんな環境下で行き交う人々の血を求め、ブンブン飛ぶのはこちらの体力が持たない。  だからと言って、人の住処で飛び交うのは危険だ。 「お前馬鹿だな、人の住処にいるのが一番吸える確率が高いじゃねえか」と言って、人の住処に飛び去ったアイツは元気だろうか。吸える確率は高いだ

        弟の日記⑤緊張腹痛狼狽好調説

          弟の日記① ワンオペ聖徳太子

           とある銭湯へ行った。なんでも、そこは銭湯だけでなく岩盤浴も楽しめるのだという。無類の岩盤浴好きのY氏と一緒に向かった。  今回、私の人生二回目の岩盤浴。数か月前に岩盤浴デビューを果たして、完全にハマった私は二度目の岩盤浴も「汗に溺れよう」とY氏に若干気持ち悪がられるテンションでいた。  入り口の自動ドアをくぐると、木をふんだんに使用したオシャレ空間が広がっていた、木のいい香りが鼻をくすぐる。  慣れた様子で入り口から靴箱へ向かうY氏、後ろをフラフラとついていく内に、い

          弟の日記① ワンオペ聖徳太子

          れもねーど

           授業が終わって屋外に出た瞬間に、日中の熱をいっぱいに吸い込んだコンクリートが行く手を阻んだ。  あまりの暑さに絶望をしていると、汗だくの野球部員が目の前を走り去っていく、その様子に思わず顔をしかめた。  何が楽しくて、あんなに苦しいことをしているのだろうか、中学・高校と由緒正しい帰宅部に所属している自分にとって、酢豚にパイナップルを入れるくらい理解ができない。  日が沈むまで冷房が効いている図書室で、熱気が収まるのを待とうと決めた。  一瞬、屋外に出ただけでじんわりと汗

          Sandwich House

           新学期、新社会人など、何かと「新」が付くこの季節。  私と妻も「新」生活を迎えるべく新たな土地へ行く準備を進めていたのだが、私が仕事の引継ぎ作業に足を引っ張られていたせいで、荷造りが大幅に遅れていた。  日中は上司に振り回され、荷造りをする夜は妻に睨まれていた。考えもなく引っ越し業者の予約をした私が全面的に悪いため、妻の厳しい指摘は甘んじて受けている。  今日は土曜日。 「片づけのコツは思い出に浸らないこと」  そう言って夕飯の買い物に出た妻の言いつけ通り、荷造り