負けた気がしない

試合前に徳島ヴォルティスの選手たちと抱擁を交わしているのは、昨年J1へ導いてくれたリカルドロドリゲス監督だ。本当はこの舞台を一緒に戦いたかった。
ただ、次のシーズン敵というのは、プロのサッカーの試合では当たり前なのだろう。ただ、試合前の相手チームとの抱擁は、ちょっと特別な感じがした。

試合中にリカルドロドリゲス監督が鼓舞するのは当たり前だが、浦和レッズの選手たちである。わかっていても、寂しい思いが込み上げてくる。

さて試合はどうだったのだろうか。
前半は、徳島ヴォルティスが支配していたといっても過言ではなかった。リカルドロドリゲス監督が根付かせたスペインサッカーでだ。徳島ヴォルティスの選手たちは、成長した姿で恩返しをしたいと口にしていた。

まず魅せたのは、渡井がドリブルから左足のミドルシュート。惜しくもキーパーにはじかれてしまう。次は前線からのプレスから、宮代のシュート。またしてもキーパーに防がれる。そして、藤原志龍が独特なステップからミドルシュート。これもキーパーが防ぐ。
得点の匂いを漂わせたのは、徳島ヴォルティスの方が多かったように思う。

後半で先に動いたのは徳島だった。キャプテン岩尾が出てきた。しかし、修正が上手かったのは、リカルドロドリゲスの浦和レッズだった。やはり〝前半の戦いそのままに〟とはいかなかった。先制点は、デザインされたコーナーキックから奪われてしまう。
それでも徳島ヴォルティスの選手たちが下を向くことはない。恩師の前で、成長した姿を見せ続けていたように思う。前へ前へ。諦めない戦い。もう少し見ていたかった。

0-1。試合は負けた。連勝も止まった。順位も下げた。でも、最高のゲームだった。徳島ヴォルティスのサッカーは間違っていないと誰もが思ったはずである。それを恩師の前で見せられたことに、胸を張ってほしい。

試合後にも徳島ヴォルティスの選手たち、コーチ陣と抱擁、労うリカルドロドリゲス監督。本当に素敵な監督である。人格者だった。

リカルドロドリゲス監督のサッカーは、楽しい。浦和レッズも、どんどん強くなっていくだろう。徳島ヴォルティスがそうだったように。リカルドロドリゲスのサッカーが単純に好きだ。負けたのに、ちょっとうれしい。複雑な気持ちは、こういうところにあるのだろう。

次の再戦の時には、お互いもっと上位にいて、戦いたい。共に強く、進化を続けて。
思い出の徳島の地で、最高の戦いを見たい。そして、勝利で、最高の恩返しをしてもらいたい。

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