ドミニカ共和国/年越しパーティ【カリブ海クルーズ5】
船は朝7時にはドミニカ共和国のアンバーコーブに到着。船内でコーヒーとフルーツだけ食べたあと初めて船を降りた。5、6千人もの人が乗船しているが、出口は2個所だけ。船の乗り降り把握のためルームキーをスキャンしセキュリティチェックを受ければ下船できる。
船の出口には自転車を漕ぐタイプの人力車が何台か待ち受けていた。船着き場から港の出口までは歩くと少し距離があるので出口まで乗せてくれる。
利用するのはチップだけでいい。テリーとヨランダは楽だからこれで行こうとさっさと乗り込んだ。健康だし歩くことは平気だけど、彼らを待たせてもいけないと思いわたしたちも後続車に乗り込んだ。ほんの数百メートルの距離なので5ドルのチップをわたした。
ここアンバーコーブは、ドミニカ共和国北岸のカーニバルラインのクルーズ停泊港だ。世界最大の旅行・レジャー企業で、数々のクルーズラインを保有するカーニバル・コーポレーションが、10年前にドミニカ共和国のクルーズポートとして開発したのだ。
それまでは何もない小さな村が、開発によりたくさんのクルーズ船が寄港するポートと化した。プライベートポートのため、クルーズ客しか出入りできないうえ、港を出たところにあるショッピングエリアからプール付きラウンジのCoco Cana Loungeなど全てカーニバルが運営している。
クルーズ乗船客対象の数々のオプショナルツアーもほぼカーニバルが担っており、海、山を含めたアトラクションやディトリップでさらにクルーズ客からお金を取れる仕組みができている。
(ドミニカ共和国に来たというよりカーニバル共和国だな……)と感じた。
中米の貧しい島国が外貨を稼げるようになったとも言えるが、島の住民の平和だった暮らしが壊されてはいないのかとちょっぴり気になるのは、わたしがかつて南太平洋の島国に住んでいた経験があるからかもしれない。
クルーズ船が停まるたびにウン千人ものケバケバアメリカ人が降りてくるのだから、自然破壊や文化破壊にならなきゃいいがと、つい考え込んでしまう。
もっとも、地元の人々はクルーズ船が着く日には、自転車を漕げばチップがもらえてラッキー!なんて思っているのかもしれないが……。
何度もここに来ているテリーとヨランダは港すぐ横の Coco Cana Loungeに直行し、スタッフと交渉してプールサイドのいちばん良さそうな場所の日除け付きビーチチェアを6つ頼んだ。
ここで数時間過ごすためだけのチェア代に一人45ドルほど取られる。それにはジップラインと呼ぶ、プールの上空を滑車で行き来するアトラクション乗り放題が付いてくるが、飲み物や食べ物は別だ。
フレッシュココナツを飲んだり、QPさんとプールで戯れたり、日光浴したり。アラ還組はさすがにジップラインに興味ないけど、14歳のモーガン君はすっかり気に入り何度も何度もチャレンジしていた。
小国の安い労働賃金を利用し、資本主義パワーを駆使しさらなる金儲けを試みる大国の傲慢さを感じ取ってしまった。クルーズ船客の中でそんなふうに見えてしまうのはわたしだけかも……?捻くれ者ともいえるけど、わたしにとっては自分の旅経験から考えることが旅の醍醐味なのだ。
3時ごろには船に戻らなければならないので、1時半にはここを引き上げ、ショッピングエリアを覗いてみたが、ドミニカ共和国という異国にいる雰囲気はなにひとつ感じなかった。とくにお国柄を示すものが置いてあるわけではない“おみやげ”が並んでいるだけの味気なさを感じて船に戻った。
この日は大晦日で、夜のドレスコードはエレガントナイト(Elegant Nights)。部屋にいったん戻ってシャワーを浴びてドレスアップ!
誰もが「馬子にも衣装」な姿で王子様、お姫様が船の中でぞろぞろと歩いている姿はまるでハロウィーンのようだ。覚めた目で見ると滑稽ともいえる。こんなふうにドレスアップするチャンスはふだんはないので中には、かなり力を入れハリウッド映画から飛び出してきたような家族もいて微笑ましい。
あちこちにフォトグラファーが待機していて、この日ばかりは写真を撮ってもらう列ができている。フォトグラファーが撮った写真は、ルームキーのバーコードスキャンで紐づけされるので、スマホのカーニバルアカウントや部屋のテレビでも見ることができる。
デジタル時代ならではの、最新テクノロジーを駆使した効率的な仕組みだ。気に入った写真だけを1枚20ドル前後でプリント板、デジタルDLなど選択できる。
撮ってもらうだけならタダなので、とりあえず乗船客は撮りまくる。フォトグラファーとてまずは撮れば買ってもらえるかもしれないのでどんどん撮ってくれる。いろんなポーズを提案してくれて、なかなか上手い。
こんなお遊びのあと、夜は年越しのパーティで大賑わい。カウントダウンが近づくとデッキにいる大人にはシャンペン、子どもにはノンアルのグラスが配られた。10・・・5・4・3・2・1!“ハッピーニューイアー!”の嵐。人々はノリノリ酔ってるし、踊ってるしですごい熱気だった。
カウントダウンが終わったあとも夜明けまでパーティは続いていたようだけど、アラ還カップルのわたしたちは、とてもそれにはついてはいけない。
朝には次の寄港地、プエルト・リコに到着する。明日に備えてそっとフェィド・アウトさせてもらった。
続く