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【アラ還セカンドライフ#16】「気安いアタッチメントに気をつけます」の3度めデート

マッチングアプリでマッチしてメッセージを交わすようになり、2度の面会後に一緒にバハマ旅行をする運びとなってしまったことは、これまでの超保守的思考のわたしからすると、地球がひっくり🐸規模の行動です。

海外旅行に出かけることが冒険なのではなく2度しか会ったことない男性と旅に出ることがです。もし娘がそんな行動に出ると知ったら、わたしはまちがいなく母として止めていると思うわけです。

この時点で、彼に対して特別の思いがあったわけでもない。ただただ夫と楽しんだカリビアンリゾートへの旅に対する「惜別の念」がマックスに達していたのだと思います。

わたしの中で、今新しい一歩を踏み出さなければ二度とそんな日々は取り返せないかもという、何の根拠もない焦りと「安全・安心な方」という彼に対する安心感がわたしの背中を押したような気がします。

それにしても、メッセージのやりとりは毎日しているものの、2回しか会ったことないのですからお互いのことはまだよく知りません。スポーツ観戦や音楽を聴くことが好きでハーレーに乗る、離婚歴2度の"誠実そうな男性"といった程度ですが、日々のメッセージから人柄は伝わり、コミュニケーション能力が控えめながらも心地よく、会話のキャッチボールが成り立つ方と……とただそれだけです。

旅の予約をしたあと最初の週末がやってきました。

10月21日金曜日のことです。


👶🏻「おはようございます!金曜日だ〜。素晴らしい1日をお過ごし下さい」

👸「おはようございます。はい、あなたもね。今日はわたしにとっては特別な日です」

👶🏻「特別な日ってどんな?」

👸「今日は息子のアルバムがリリースされる日なの。2020年に出る予定だったのがパンデミックで延期、さらに夫の癌闘病で全ての予定が変わってしまったけど2年半の時を経て今日がきました。彼らの全ての活動を見守ってきたわたしにとって、これ以上の喜びはないぐらいに幸せな日なので、お祝いに今夜は🍷🥂飲みまくりますよ」

👶🏻「それは素晴らしいですね。あなたとご家族がお祝いするのは当然です。どんな音楽かとても興味があります。そして、あなたにとってはたくさんの感情が音楽と重なることでしょうね」

👸「どんなプラットフォームでも聴けますから是非聴いてやって下さい。彼の音楽は単純なロックやカントリーではないのでちょっと難しいです。たくさんの楽器を使い重厚なハーモニーとリズムへの拘りが強いのでシンプルなサウンドではありません。聴くほどに味わえる感じかな。でも、1曲だけアコースティックソロの曲が含まれていて、それは闘病中の夫に息子が贈った曲なの。わたしにとっては、どの曲にも思慕がこもっているアルバムとなりました」

👶🏻「あなたにとって、息子さんのアルバムがどれほど意味深いものかと想像できます。音楽と人生の瞬間はよく一体化しますが、それが息子のオリジナルのアルバムという形で表現されてこの世に形を残すなんて、なんて素晴らしいのでしょう。あなたにとってこれ以上の“特別”はないことわかります。さっそく聴いてみます」

わたしにとって、この日は確かに「かけがえのない日」でした。

そして彼とのメッセージ交換がなぜ心地よいのかを理解した瞬間でもありました。単純に「どんな曲?良かったね」という反応ではなく、彼の応答は常にわたしの内側にある感情に寄り添える人だということがわかってきました。

そんなことに気づいた10月後半の週末、この界隈では秋の紅葉がとても美しい時期です。

先週2度目の面会に彼が訪ねてきたばかりでしたが、この週末はちょうど中間地点にあるダウガーデンに紅葉を見に行こうということになり、ダウガーデンの入口で待ち合わせをしました。

年末年始にかけて二人で旅にでることが決定しているわりには、現実はこの日が3度目のデートですからなんとも奇妙な感じ。車の運転が大嫌いなわたしが45分ほどの距離を運転し、待ち合わせ時間より少し遅れてなんとかたどり着きました。

秋のダウガーデン

真っ赤なシャツにジーンズのスタイルで彼は待っていました。

👶🏻「Hi! ドライブどうだった?」

👸「ふだんはこんなに遠くまで運転しないので緊張したわよ。遅れてごめんなさいね」

エントランスを入ると色とりどりのミシガンらしい秋の景色がとびこんできました。すると彼はとてもさりげなく自然にわたしの手をとりました。

わたしは夫以外の男性と手を繋いだことがなかったので、彼の手が伸びてきた瞬間からびっくりしてしまいました。

かといって、ここで彼の手を跳ね除ける勇気もなくて、されるがままに手を繋いでしばらく歩きましたが、繋いでいる手が気になって気になってしかたありません。

わたしの頭の中で、「アラ還なのに手を繋ぐぐらいでびびってどうするよ」とあざ笑う別のわたしが囁きますが、繋ぐ手が緊張して汗ばんできました。🤣

やっぱり気になるので勇気を出して言いました。

👸「あの〜わたし夫以外の人と手を繋いだのはじめてで……」

👶🏻「えっ?ごめんなさい。自然に仲良くなれるまで気をつけます。ボクが気に入っているからといってあなたが心地よくないことは慎むべきですから」

そう言いながら

「61歳なのにまるで16歳同士みたいだよ」と彼は笑いました。

抜けるような秋晴れの中、たわいない会話しながら並んで歩きました。

手を繋がれただけで、ドキドキしているわたし自身に自分で呆れたのと同時に、こんなわたしがこの人と旅行するなんてほんとうにだいじょうぶかしら?という一抹の不安がよぎりました。

わたしの中では、

一歩一歩慣れていくしかない。そのためにも少しずつ少しずつ、この安心・安全な小ぶりのおじさんのことを知っていかなくちゃと思ったのでした。信頼への道はまず知ることから始まる。恋愛感情は微塵もないけど、人として信頼できるかはそれ以上にたいせつ。そもそも信頼できない人なら恋愛関係は成り立たないと思っているからです。






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yahoi /ライフエディター・エッセイスト
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