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【アラ還セカンドライフ#10】ご対面で、ひと目惚れはなかった
いよいよ、ご対面です。
四輪駆動の黒いトラックから降りてきました。
「こんにちは。今日は誘ってくれてありがとう」
「こちらこそ、遠いのに来てくれてありがとう」
トラックから降りてきた彼の第一印象は小ぶり!でした。😂
彼の身長は163cmほどですから米国人男性としてはかなり小ぶりです。(ちなみに最強のネイバーさんパットもショートガイです)
以前、チャットのなかで自分のように背の低い男は女性には敬遠されるからと言っていたことを思い出しました。
わたしにとって背の高さは問題ではありませんが、巨体の多いここ米国で、日本人の夫よりも背が低いので印象に残りました。
それぞれが親の遺伝子から受け継いでいる生まれ持った容姿は、個人のコントロールは及びません。身長はその最たるものですから、背が低いことはわたしにとってはどうでもいいことです。外見至上主義、いわゆるルッキズムで人をジャッジするようなことがない自分でいたいと思っています。
ただし、恋愛の対象を探しているわけですから、生理的に受け付けないタイプは無理だし、超肥満の方については、生活習慣と健康上の問題で不安材料となるので気にします。
彼の場合は、お顔もプロフィールのお写真どおりで、盛っている感じもなく自然だったので安心しました。
彼のほうもわたしを見て、
「マッチのプロフィール写真より、実物のあなたは美しいです」
と初っ端から、彼らしい発言。
「お世辞を聞くのが苦手なので、賛辞をかますのは止めて下さい。あなたを信用できなくなります」
するとキョトン? とされ
「美しい人に美しいというのは、自然なことですよ」ときた。
初対面はそんなスタートでした。
まずは、家の中をご案内しました。
家の建築中に夫が亡くなり家族全員の協力を得て完成させ、息子夫婦と住んでいることはおおまかに伝えてありました。
夫が最後まで拘り続けた大きなガレージを見せ、わたしたち夫婦で楽しむはずだったマスターベッドルーム、バスタブ、大きなキッチンにリビングと家じゅう一周しながら、数々のエピソードを伝えました。
👶🏻「これほど素敵な家をデザインして楽しめずに逝ってしまったご主人の無念さを思うとほんとうに残念です。あなたたちご家族が、感謝と敬意を持って家を楽しんであげることが何よりの供養になると思います」
👸「はい、わたしもそう思っているので、この家をたいせつに守っていこうと思っています」
これまでいろんな人と交流してきましたが、そんな会話が成立する人って意外に少ないのが実感でしたから、彼の内面の良さにますます確信を持ち始めました。
それから、準備していたランチをいっしょに食べました。冷蔵庫にあった材料で、いつも作っているような簡単なものです。サラダにとんかつに玄米ごはんと、焼きたてのパンです。
食べながら、知りたかったことを聞きました。
👸「2度離婚されているんですよね。差し支えなかったらその経緯を教えてくれますか?」
👶🏻「もちろん」
今思えば、最初の結婚は若さもあり未熟でした。
30歳を目前に、子どもがほしかったのと結婚願望が強かったところに9歳年下の可愛い女性と出会い、外見に惹かれて結婚したのがまちがいの元でした。
すぐに子どもができたのは嬉しくて最初の1年ほどは楽しかったのですが、彼女の育った環境に問題があったようです。精神疾患レベルで気分の落ち込みや妄想が激しくなり、常に褒められていないと怒り狂い、些細なことで彼女は警察を呼ぶようになりました。正直、手におえませんでした。警察からはあなたのほうがそのうちDV扱いをうけると心配されたほどです。
子どもはかわいいので、なんとか結婚生活を維持しようと、カウンセリングを受けたり努力したのですが結局3年の結婚生活でした。
精神が不安定なことに関してはかわいそうな部分もあったのですが、変わった女性でした。自分と離婚した直後にすぐ別の男性と結婚したのにも驚きましたが、その方ともすぐ離婚したようです。
結婚相手としては失敗でしたけど、息子タイラーを産んでくれたことには感謝しています。息子とはとっても良好な関係です。
そんな失敗があったからこそ、次の結婚相手選びは慎重になれました。
自分の息子とは離婚後も父として週末ごとに面会し責任を果たしていました。そのころ、同じ職場で出会ったのが元妻です。彼女はシングルマザーとして、タイラーと同年齢の息子を育てていました。
落ち着いた女性で、息子同士も仲良くできたので意気投合して付き合い始めました。歳が14も若かったけど、意を決してプロポーズしたのですが、即答ではありませんでした。やはり年齢差か?と思っていたけど、最終的にYesということで結婚しました。彼女の家族と親しい友人とメキシコのカンクンでウェディングをしました。
2度目こそ失敗しない結婚を望みましたが、今思えば「この人じゃなければ」というタイプの大恋愛ではなかったかもしれません。お互いが子連れで「この人ならやっていける」という感じかな……?
でもその割り切りがあったことで、安定した結婚生活をおくることができました。彼女の息子の義理の父となり、その後は私たちの息子も生まれて、父親としても楽しい思い出もあるので、良い21年の結婚生活だったと思っています。
結婚後、彼女が再度大学に戻り勉強するときも支えたし、彼女の描くゴールを自分なりに応援してきました。最終的に彼女はより自分が望む職にキャリア変更しましたが、結果としてそれが転機となりました。
ソーシャルワーカーから、保険のエージェントになってからは稼ぎも増えて交友関係も彼女も少しずつ変わっていきました。家庭より何より仕事という感じになっていきましたが、それは彼女が望んでいたことです。
2020年に私は心臓疾患がわかり、開胸手術を受けたのですが、その回復を待つかのように、ある日彼女の方から、弁護士を立てて離婚を言い渡されました。確かに二人の仲は少しずつ冷えてはいましたが、悪いというわけでもなかったので(少なくとも自分としては)青天の霹靂でした。
正直、二人で話しあうまえに弁護士まで準備されていたことにショックをうけました。でも、もうそこまで彼女の心が固まっているのだとすれば、やりなおしは無理だと思いました。今さら何を話そうが、自分自身も彼女を信頼できるとは思えませんでした。
結局弁護士を通じ、2021年の4月には家から出ていってほしいと言われました。こんなことで、自分も高い弁護士料を払いたくもなかったので、彼女の雇った弁護士に自身で対応し、ほぼ先方の条件をのんで離婚に至りました。
息子はハイスクールがまだ2年残っていたので家は彼女に渡し息子の養育費も全ての条件を受け入れたため離婚はスムーズでした。
2020年、パンデミックの突入と同時に彼女の発案で、キャンパーを買ってあったので、彼女に家を渡した代わりに自分はキャンパーをもらいルナ(彼の犬)を連れて自分の荷物をまとめて、住居がみつかるまでキャンパーに住んでいました。
もう歳の離れた恋愛はこりごり。年齢差が少なくて価値観の似ている人と、心地よく残りの時間を楽しみたいと思ってマッチングで探しているところにあなたが現れたわけです。
こんな感じで、彼は自身のことを語ってくれました。
本来、どんな話も双方に言い分があることは承知していますが、これが彼からみた経緯であることにかわりはありません。
嘘があるようにも思いませんでしたし、恨みつらみを列挙するような語り口でもなく、とても穏やかに自身を回想しているように思えました。
「話してくれてありがとう」とお礼を言うと、大きな目でわたしを見つめながら「聞いてくれてありがとう」とにっこりしました。
人としてできた方で、思ったとおり誠実な方だと思いましたが特にときめく感覚はわいてきませんでした。でも「ないな」という感覚もありません。ニュートラルとしか言いようがない初対面でした。
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ただ、知らない人には吠えまくり簡単には懐かないイナリがすぐ静かになったことにはびっくりしました。
とにかく、語り口も立ち振舞いも穏やかな方なのはわかりましたが、これほどワクワクもドキドキもない人とこれからどうなるんでしょうね?
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