ジブリと宣伝について考えること
スタジオジブリに関連する書籍の数は非常に多くて、宮崎駿のインタビュー本だけでも相当ある。さらに、プロデューサーである鈴木敏夫が書いた本もたくさんあるわ、NHKの密着ドキュメンタリーもあるわで、ジブリに関連する「資料」の量は、合算するとものすごいことになる。
僕は作品そのものも好きだけれど、そういった「舞台裏」というか、「作り方」のほうにより強い関心があるので、ジブリ関連の本は、可能な限りチェックしている(全部を読むのはとてもできない)。
なかでも、鈴木敏夫の書いた本で、ジブリの宣伝戦略に関する本は、仕事をすすめる上でも勉強になった。言うまでもなく宮崎駿は、アニメという枠だけでなく、日本映画の興行収入トップを総ナメしている大御所だが、最初から売れっ子だったわけじゃない。むしろ、若い頃は監督を干され、辛酸を嘗めた時期もあり、ヒットした「風の谷のナウシカ」が公開されたのは41歳の時だ。そのヒットのあとも、会社の経営は安定せず、順風満帆とはいかなかった。
いまでは辣腕プロデューサーとして知られる鈴木敏夫も、若い頃からしたたかではあったけれど、金儲け主義ではなかった。金を儲ける、ということにはあまり関心がなく、「いい映画を作る」ということに注力していたのだ、という。
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後年になるにしたがって、ジブリの宣伝戦略というのは洗練されてきて、「もののけ姫」「千と千尋」あたりが、宮崎駿の実力と鈴木敏夫の宣伝戦略が異常に噛み合った、そのピークだったのだと思う。
で、社会現象になるほどの超絶大ヒットを生み出したあと、宮崎駿は「映画がヒットしたのは、内容がよかったからか、それとも宣伝がすごかったからか?」というのをスタッフに聞いてまわったという。まあ、宮崎駿に直接聞かれたら、そりゃ「作品がよかったから」とみんな答えるんだけども(笑)。
そこで、その次の作品の「ハウルの動く城」のときには、宣伝手法を変えて、「城」のビジュアル以外をギリギリまで秘密にしたのだ、という。そうやって、みんなの関心をかき立てる方針にしたらしい。公開間際になって、一気に情報公開するという戦略だったのだ。
ここから学ぶべきことはいくつかある。まず最初に僕が感じるのは、ジブリほどの、全国民が知っているような有名なブランドであっても、「宣伝は重要」だということだ。みんなが知っているものですら宣伝が必要なのだから、誰も知らないようなものの場合は、なおさらだろう。社会現象になるほどのスマッシュヒットを打ったとしても、それは例外ではない。宣伝は軽視できない。
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いいものを作っても、手にとってもらえなければ何も起きない。手にとって、それを実際に見てもらわないと、はじまらない。
最近はSNSの発達によって、宣伝などしなくても口コミでじわじわと広がっていく、ということもあるけれど、それだって、「人に話したい」と思わせるようなものでないと、なかなか伝播しない。自分が「良い」と感じるものを、そうちょくちょく人に勧めるものだろうか?
僕は、「なぜ」を突き詰めることが大事だと思う。なぜこの作品を作ったのか。なぜこのタイミングなのか。なぜみんなに見てもらいたいのか。
そしてそれを、適切な方法で人に伝える。それが「宣伝」なのかな、と。プロではない僕が言うのもなんなのだけれど、人はストーリーを欲している。「なぜそれを作ったのか?」に納得できないと、みんなついてこれないのだ。(執筆時間12分45秒)