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途方もなく高い山に登るモチベーション
相変わらず、暇を見つけては将棋ばかりやっている。
将棋の世界は勝負の世界だ。当たり前の話だが、ごくわずかな例外をのぞいて、ひとたび対局がはじまれば、勝者と敗者に分けられる。
将棋ウォーズというアプリで将棋を指すことが多いが、格上の人に当たるとコテンパンに負ける。しかし、将棋ウォーズは面白い仕様で、自分のも含めて全戦の棋譜を見ることができるので、自分を負かしてきた相手の棋譜を見てみると、その人もそれより強い人に当たるとボロ負けしていることがわかる。完全なる弱肉強食の世界で、上には上が常にいる、というわけだ。
といっても、自分もまだ将棋をはじめて一ヶ月程度だ。最初は30級からスタートしたのだが、いまはやっと7級まできた。30級から7級というとずいぶんスピードが速いように思えるが、実際は8級ぐらいまでは1勝すると必ず昇級する仕組みになっているので、一日に3~4級昇級することもざらにあった。
だが、8級は抜けるのにだいたい一週間ちょっとかかってしまった。やっと7級になれたものの、ここからどんどん昇級に時間がかかるようになるらしい。1級から初段にあがるのに一年ぐらいかかるとも言われる。一応、いまは初段を目指しているものの、道のりは険しい。
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僕は将棋ソフトを2つ使っている。ひとつは「ぴよ将棋」というソフトで、iPhoneやiPadのアプリとして使うことができる。
可愛らしい名前だが、搭載しているAIの実力はなかなかのもので、最高位の「ぴよ帝」というモードにすると、棋力はアマ6段ぐらいになるらしい。アマ6段というと、僕の実力からすると神にも等しい存在で、当然ながら真っ向から勝負しても全く歯が立たない。
もうひとつのソフトは「やねうら王」というソフトだ。
こちらは、パソコンに入れて使っているのだが、AI将棋の大会で優勝したり、プロ棋士を平手で打ち負かしたりしている強豪ソフトである。
もちろん、僕のMacBook Airに入れて使っているものなので、実際にこのスペックでプロ棋士を打ち負かすことができるかはわからないが、十分すぎるほど強い。というか、とにかくデタラメに強い。
試しに、「ぴよ帝」と「やねうら王」で対戦させてみると、「やねうら王」の圧勝で、自分から見れば神にも等しい「ぴよ帝」は、成すすべもなく詰まされていた。自分からすると、神と神の戦いの領域の世界である。
だいたい自分の棋力からすると、2級ぐらいの級位者にはほぼ勝てない(たまにまぐれで勝つことはあるが)。しかし、そんな人たちも、ぴよ帝にはもちろん勝てない。
ぴよ帝の棋力はアマ6段ぐらいだと述べたが、アマ6段というと、将棋のプロ養成機関である「奨励会」に入れる最低レベル程度とされ、その選りすぐりの「奨励会」から、年間4人だけが「プロ」になれる……、という、そんな途方もない世界なのである。
そんなプロの中でも、もちろんヒエラルキーがあり、トップ中トップの10名だけがなれる「A級棋士」というスターが頂点に存在するわけである。ちなみに、A級棋士の中で行われる「名人戦」を戦い抜いて、現在名人になっているのが渡辺明という棋士なのだが、その渡辺明名人を、別のタイトル戦でコテンパンにストレート勝ちで倒しているのが藤井聡太五冠なのである。
もう、ドラゴンボールも真っ青のインフレ状態だ。いかに藤井聡太がすごいかがわかるというか、とにかく人間離れした強さだ、ということがわかる。
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もっとも、将棋の世界の構図がそうなっているからといって、別に気負いする必要はない。全国に数百万人いるとされる将棋ファンの一人として、一歩一歩、着実に棋力をあげていけばいいのだ。
とりあえず、アマ初段になるのに一年ほどかかるとされているので、まずはそこからかな、と思っている。
いい趣味を見つけた、とむしろ微笑ましく思っている。高い高い山があるのなら、頂上など見ずに、変わりゆく景色を楽しみながら登っていくとしようか。
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