YouTubeはテレビに勝ったのか?
奥さんがどこからか見つけてきた「ゆる言語学ラジオ」というYouTubeチャンネルの動画を最近はよく見ている。暇なときに見ているというよりは、主に食事どきではあるが。
内容は、言語学を中心とした雑学ネタを、言語学好きと雑学好きのMCが雑多に取り上げる、というものだ。「言語学」と銘打ってはいるものの、特に制約なくいろいろやっており、見ていて楽しい。
結構マイナー系のテーマではあるものの、それなりに視聴者も獲得できているようだ。
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ここ数年でますます、YouTubeが新しい段階に入っているのを感じる。いわゆる「人気YouTuber」と言われるような、「万人が見て楽しい」と思えるようなチャンネルは、一部のチャンネルに人気が集中し、もうあまり伸び代がなさそうな印象を受ける。
万人が見て楽しいと思えるものとは、つまり「前提条件が固定されていないもの」と定義できるだろう。つまり、どういう知的水準、前提知識の人が見ても、それなりに理解できる、ということだ。
ゆる言語学ラジオはあまり前提条件は固定されていないが、こういったものを楽しめる知的水準の人でないと楽しめない。もっとマニアックな、教育系の動画や、趣味の動画などは、それを全く知らない人が理解できるようなつくりにそもそもなっていない。しかし、そういう構成にしても成立する映像番組をつくることができるのがインターネットの強みであるような気がするのだ。
最近将棋にハマっているのだが、ここまで楽しめているのも、ひょっとするとYouTubeの影響が大きいかもしれない。YouTubeには将棋関連のチャンネルがいくつもあり、将棋棋士がアマチュア向けに解説してくれているものも多い。それどころか、プロの対局を解説してくれるチャンネルもあるし、ひたすら将棋を実況しながら指し続ける、というチャンネルもある。
こういったチャンネルは、もちろん将棋を指さない人にとってはなんにも面白くないのだが、指す人が見たら面白い。そういうマニアックなものは、これまでは書籍限定だったのが、最近はそれが動画というメディアに置き換わってきていると思うのである。
もちろん、NHK杯などの「テレビ棋戦」というのは昔からあり、NHKなどで棋士が解説しながら放映していたものはあったわけだけれど、ネット社会の到来によって、「前提条件を要求するコンテンツ」であっても、わりと気軽に発信できる土壌が整ったように思う。
将棋チャンネルには、将棋の駒の動かし方もわからない人は来ないのだが、それでもいいのだ。逆に、テレビというのは視聴者層が大雑把すぎるので、複雑すぎるとちょっとついていけない、というような感じになっている。
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一番可能性を感じる、こういうメディアを通じて、もちろん広告収入を得たりするというのももちろんだが、書籍化したり、リアルイベントをやったり、何か別のところに誘導して、本業を成立させていく、というところだろう。店舗などを運営していると相性はよさそうだな、と思う。
最近だと、書店の有隣堂のチャンネルが面白い。
なんだかこういうのが当たり前の世代になってくると、「それのどこが特別なの?」と言われてしまいそうではある。しかし、そういう感想を持つということ自体が、真に「インターネットが人類に浸透した」なによりの証拠なんだろうな、と。
みんながお茶の間に集まって、同じコンテンツを見ていた時代というのは、もう基本的に戻ってこないのだろう。そのときはそれが一番楽しいと思っていたのかもしれないけれど、実はほかに選択肢がなかったからそうしていた、というのは考えられることである。
そのように、テレビというのは、あと10年も持たないんじゃないか、ということを思うのである。