あまやどりの後に行く場所はーー第1話:書店と居酒屋
仕事に疲れたサラリーマン、
育児に追われるワーママ、
新しい環境に不安な大学生――
あまやどりで彼ら彼女らは何を見たのか。
そして何処へ行くのか。
全3話の予定の小説です。
※弊社のローカルWebブランディング事業で企画・制作しているシリーズコンテンツのサンプルになります。
贈り物のように素晴らしいあなたに出会えたことに感謝を。
本記事の執筆は、株式会社yahDoryのtnimが担当しております。
雨が降る。
1つ、2つ、3つ……黒いアスファルトを濡らす染みは、瞬く間に増えた。
――嘘だろ、やめてくれよ。
慌てて、革の鞄を頭の上に乗せ、走り出す。
頭上ではしばらくパシャパシャと軽いリズムが刻まれていたが、すぐにバシャバシャと洒落にならない響きに変わった。
――あそこでやり過ごすか。
目についたシャッター前の軒先に駆け込み、やっと一息ついた。
寝ても疲れが抜けきらず、朝起きられなかった。
起きられなかったので、天気予報を見はぐった。
晴れていたのでまさか雨が降るなんて思わず、先日使ったばかりの折り畳み傘を鞄に入れ損ねた。
……結果がこれだ。久々に、定時で帰れたのに。
「……はぁ……」
雨音が、パシャパシャくらいの軽い音に戻っていた。
じきに止むのだろう。
定時上がりと言っても、予定があったわけでもなし、どうせテレビでも見ながらスーパーで買ったビールとつまみを口にするくらいだ。
多少冷えるが、ここでスマホをいじって雨をやり過ごしても、支障はない。
……ふと、夜空が目に入った。
丸く切り取られ、月が淡く雲を照らしている。
何の気なしに彼はそれを見た。
パシャパシャという音が、やがてポツポツとに変わり、すぐにそれも止んだ。
「……ちょうど通る駅だな。」
地図を確認し、歩き出す。
――車の雑誌もあるかな。
その日彼は、スーパーの代わりに書店に寄り、隣の居酒屋でそれを眺めながら一杯やった。
同じ夜空を見たのだろうか、似たような連中がおり、居心地は悪くない。
それから偶に定時で上がれた日には、
途中下車して、その書店と居酒屋に寄るのが、
彼の密かな楽しみになった。
続く。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や場所とは関係ありません。
※画像はOpenAIのDALL-E 3を使用して生成されたものです。
※第2話はこちらからどうぞ。
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