山口タカ
オーガニックをライフスタイルの新しい価値観と捉えて、私たちの意識の現在と近未来予測を食を中心にレポートしていく。
杵塚敏明・かづ江夫妻 3回目 未来につなげる 「父から無農薬栽培を始めた頃の大変な苦労の話はたくさん聞いていて、今17年やってきて、父が経験したような当時の感じではなくなってきています。周りの認識というか、農家さんたちの認識もどんどん変わっています。それこそ自分が始めた17年前と比べても変わっていて、逆にその刻一刻と変わっていく状況に有機農家自身も遅れないようにどんどん合わせていかなきゃいけないとすごく感じています。 この仕事を続けられているっていうのは自分だけのためじゃ
無農薬茶は“百姓”の心意気杵塚敏明・かづ江夫妻 2回目 幻の紅茶 その昔、セイロンがまだイギリスの統治下にあった時代。紅茶づくりの名匠といわれたイギリス人ルイ・アームストロングがこの地から送り出した〝セイロンティー〟は、ロンドンのオークションでは〝最高級の代名詞〟と評されたという。しかし、いくつもの時代を経て、茶畑の環境、製法もすっかり変わり、伝説となったセイロンティーの味わいもいつしか幻となった。 その〝幻の紅茶〟がほんの数年間だけ、現代によみがえったことがあった。
無農薬茶は“百姓”の心意気杵塚敏明・かづ江夫妻 1回目 子どもも大人も大はしゃぎでお茶摘みに精を出す。この後のお弁当とお茶がまた格別においしい。 風薫る5月は新茶の季節だ。毎年、ゴールデンウィーク明けから新茶が店頭にずらっと並ぶ。お茶好きには、毎年必ず訪れるとはいえ待ち遠しい時期である。 静岡県藤枝市の山間にある「人と農・自然をつなぐ会」のお茶畑では、GW初日から一泊二泊の茶摘み会が開かれる。毎年、全国から80名近い人が集まる恒例のイベントになっている。お茶摘みと里山
第2回 自然農法家 須賀一男・サカ江夫妻(ともに故人) つぎの50年がスタートしている 11月中旬の小春日。須賀利治さんを訪ねた。 この地域特有の遅い米の収穫を終え、一息つくのも束の間、冬野菜の収穫が始まっていた。これから年末まで、朝7時から毎日が戦いである。利治さんは夜明け前から動き出し、点在する畑を軽トラでぐるっとひと回りして収穫予定の作物の様子をチェックする。 約束の7時10分前に到着したら、ちょうどひと回りした帰りのタイミングだった。7時になると他のメンバー
第1回 自然農法家 須賀一男・サカ江夫妻(ともに故人) 4世代にわたる自然食の食卓 50年前の1974年(昭和49年)10月から翌75年6月までの約8ヵ月半、朝日新聞の小説欄に有吉佐和子氏の「複合汚染」が連載された。連載中の4月に上巻、終了後の翌月7月に下巻が新潮社より単行本として出版され、大ベストセラーとなった。 「複合汚染」はレイチェル・カーソン氏の「沈黙の春」と並んで環境問題、有機農業の古典的作品として知られている。 そして、この小説の中に須賀一男さんが登場す
オーガニックの世界では2000年、有機JAS認証がスタートし2006年に有機農業推進法が施行された。有機農業の世界はマーケットが存在しているが、日本は極めてゆっくりと成長している。 一方で食育は2005年に食育基本法が施行された。食育は教育であり、マーケットは存在しない。主たる現場は学校、家庭、そして行政との連携活動である。 ともに食がテーマの世界ではあるが、活動現場では直接的な接点も、消費者や食業界へのアプローチ内容も似て非なるものであるという認識が潜在的にあった。
2024年3月22・23・24日に愛宕山・さくらマルシェ開催しました。 昨年オープンした麻布台ヒルズ、東京メトロ日比谷線の霞ヶ関と神谷町間にオープンした虎ノ門ヒルズ駅。周辺エリアを中心に虎ノ門ヒルズの高層ビル群が注目されています。 加えて、隣り合わせの愛宕山エリアの再開発に伴い、愛宕神社の境内も新しく整備された。いま全国的に注目されている場所となっている。 ここで全国の“オーガニックビレッジ宣言”の市町村の品物を通して“各地のもの・ひと物語”を伝える新しいマルシェを
レポート NO 001 2024 5.26. SUN 「オーガニック電話帳」第8号を2024年11月に発行します。 2001年11月に創刊して以来、不定期に発行してきた「オーガニック電話帳」も第7号を出してすでに8年が経過。すでに本屋さんの棚からは姿を消しています。イベント参加もコロナ禍前に比べて積極的ではないので、その存在を新しく知る人はほとんどいないでしょう。という極まった状況なので、ソロソロかなと重い腰を上げました。 A5判サイズ、約560ページ、背幅27mmの厚
脱炭素社会、CO2ゼロエミッションへ舵を切った日本。それを受けて農水省は「みどりの食料システム戦略」を法制化し2050年に向けたビジョンを示した。 そして、「みどりの食料システム法」に基づき、オーガニックの普及を目指す「オーガニックビレッジ宣言」する市町村が続々と誕生している。 今年8月段階で61市町村だったのが、9月になってその数が91市町村(12月現在92)と発表された。一気に30市町村増加したという印象だ。 2025年に100市町村、30年までに200市町村の目標
オーガニックの世界では2000年、有機JAS認証がスタートし2006年に有機農業推進法が施行された。有機農業の世界はマーケットが存在しているが、日本は極めてゆっくりと成長している。 一方で食育は2005年に食育基本法が施行された。食育は教育であり、マーケットは存在しない。主たる現場は学校、家庭、そして行政との連携活動である。 ともに食がテーマの世界ではあるが、活動現場では直接的な接点も、消費者や食業界へのアプローチ内容も似て非なるものであるという認識が潜在的にあった。
つぶやくのははじめて。たまにセミナーに呼ばれて話すのだけれど、今日は「食育とオーガニックの親和性」テーマのズームセミナーで70分話してきた。ズームでの講師は初体験だった。視聴者の顔が見えず、反応が伝わってこないのはやっぱり困った。寝つきはメチャいいのに今夜はモヤモヤして寝れない!
農業が「汚い、きつい、キケン」と敬遠される3K職業といわれて久しい。 とんでもない話である。農家はカッコイイ。とくに有機農家は「カッコイイ、かせぐ、かなりモテル」の3K職業だ。 最初に気づいたのは20年前。雑誌の取材で長野県茅野市の柿澤宏仁さんに会ったときだ。ひとしきり米作りの話を聞いた後、田んぼに入ってもらって撮影をした。 7月下旬の午後、炎天下だった。自然栽培の稲は青々と勢いよく伸び、見るからにエネルギーに満ちていた。その中に入っていった柿澤さんが麦わらを被ってこちらを振
幻になった伊坪さんのトマト 届いて1週間。そろそろ完熟。わが家に到着したときはヘタの緑は鮮やかで鋭く反って輝いていた。 栃木県・那須塩原の伊坪さんが育てるトマトをはじめて食べたのは13年前。以来、毎年4月も中旬を過ぎると「そろそろだなぁ」と思い出す。その瞬間までうっかり忘れていたりする年もあるけれど、何かの拍子にいきなり思い出す。トマトは一年中手に入るものと錯覚氏ているのか「この時期にしかない」ということをついつい忘れてしまう。 手元に届くのは5月中旬から6月中旬の約1