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この嘘がばれないうちに 川口俊和 サンマーク出版

登場人物に憧れたり、感情移入したりすることがいつの頃からか少なくなったのだけれど、無理に自分事に引き寄せなくても、誰もがみぞおちの奥に痛みを感じるようなツボというのがある、と思う。

相変わらず、そこを心得ている短編集。

「出会えたことにはきっと意味がある。たとえそれが短い時間だったとしても。そして、過去を変えることはできなくても、心の持ちようで未来は変わる。」

この一言が、この著者の芯のようなものなのだろうと、数冊のシリーズを読んでいてそう感じた。

ただ言葉で言われても納得できない。
文字にしたらありきたりすぎるような正論に思える。
でもそんな、綺麗事に見える台詞に思わず頷いてしまう、そういう気持ちになれるのがこの本のアッパレなところ。
この台詞に頷ける、そうなるためにここまでのいくつものお話が紡がれている。

そんな気がする。

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