確率思考の戦略論 5.3 コンセプト・ユース・テスト

当時リチャードソン・ヴィックスとP&Gはマーケティングにおいて考え方が異なっていました。
 
相対的に見た場合、リチャードソン・ヴィックスは製品よりもコンセプトやTVCMに重きを置き、一方P&Gは製品のパフォーマンスに重点を置いておりました。

典型的な例が、当時米国で販売されていたP&Gの「ワンドラ」とリチャードソン・ヴィックスの「オイル・オブ・オレイ」というスキンクリームです。
 
「ワンドラ」は非常に優れたスキンクリームであり、先ほどのブラインド・テストでは、「ワンドラ」が「オイル・オブ・オレイ」に圧倒的に勝つのです。

しかし市場においては「オイル・オブ・オレイ」が、圧倒的に「ワンドラ」に勝っていました。
 
それは「オイル・オブ・オレイ」のポジショニングが当時の市場の状況に適応し、その便益に合った製品パフォーマンスを提供していたからです。

人の判断はコンテクスト(文脈や状況)に左右され、人は期待したことに対して評価するのです。

リチャードソン・ヴィックスを買収後、市場調査部では、製品テストにおけるコンテクストの重要性が強調されるようになり、コンセプト・テストや製品の使用を含んだコンセプト・ユース・テスト(C&U)が相対的に増えていきました。
 
コンセプト・ユース・テストの方が現実の購入を決断する状況に近いので、シングル・プロダクト・ブラインド・テストより消費者のプレファレンスを診るのに適しています。
 
一方シングル・プロダクト・ブラインド・テストはプロジェクトの初期における製品のスクリーニングに適しており、またプロダクトの予期せぬ問題点や便益を知ることができます。

コンセプト・テストは既存品の改善や新製品のアイデアの選択を診るために、コンセプト・ユース・テストはコンセプトと製品のマッチングを診るために使われます。

もっとも重要な質問は購入意向です。

購入意向の質問は表5-1(*)に記してあります。

コンセプト・テストの質問は表5・2(*)のコンセプト・ユース・テストのコンセプトの部とおなじです。

コンセプト・テスト、C&Uにおいて、購入意向・購入頻度がプレファレンスの強さを表す指標です。

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