ライオンが運ぶもの
ふみぐら社さんがメシも食えてない。
あ、食えているのか。
ヤギ先輩のnote、その感想等を寄せる企画。
僕が選んだnoteはこれ。
*
雨の夜のバス停。
濡れ鼠になったライオンが来た。小包を持っている。
ライオンだから濡れライオンか。聞いてみる。
「バスに乗るのですか」
「ええ、ヤギの処に行こうと。別のヤギから小包を預かりまして」
バスが来た。ライオンは器用に料金箱に小銭を入れる。
二人で座る。その大きな体で座れるかなと思ったけど上手に体を丸めた。
ライオンはもじもじして言う。
「ヤギからヤギの小包。何が入っているか気になりませんか」
「そんなこと、言っていいの?」
「ヤギ、あいつらしょっちゅう他人の手紙喰っているからこれでイーブンパーです」
何がイーブンパーなのかわからないけど。
「その中身、何?」
ライオンは嬉しそうに言う。
「月の匂い詰合せです。お届け先のヤギは月の匂いが好きなんです。今回は新月から二日月、三日月、満月やら全部揃っています。それと牛乳石鹼」
「新月は見えないけど匂いあるの?」
「勿論あります。見えない月に細部は宿る」
「誰の言葉?」
「私」
「牛乳石鹼は?」
「大昔、ライオン社が作っていたんです。これは私からの贈り物。月の匂いと牛乳石鹼の匂いはセットで夏の香りです」
ライオンはいつの間にか風呂から上がったかの様に毛がさらさらになり、石鹼の香りを漂わせてバス停で降りた。
僕は窓から大きな声で言う。
「渋谷で月の匂いを感じましょうと伝えてくれ」
ライオンは大きくうなづいた。
雨はやみ、月がふわりと漂っていた。
*
小説になってしまった。
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