【番外編7】自分の練習を考える(自己評価編)Jazz Sax:アドリブ練習の目的別構造化
勢いで会社を辞めてしまった(っていうか今週で辞める)のでww、それなりにサックスを練習する時間ができてしまった(まあ、それを望んで辞めたわけだが)。とはいえ、ただ漫然と楽器いじっていてもしょうがないので、今までぐちゃぐちゃ書いてきたサックス練習法を実践してみたらどうだろうと思いついた。
というわけで、日本のジャズテナーサックスを代表するサラリーマン(元)らしく、まずは自己分析、要は強みと弱みの理解からはじめて、重点練習項目を決めてみたら面白いかと思い、試しに書いてみる。
分析に当たっては、私の作ったフレームワーク(項目)を参考にするが、折角なので★を使って強み弱みを表現してみる(会社員ごっこですw)。
なるべく客観的に評価しているつもりだが、全体的にちょっと甘めかな。異論・反論も多数あろうが、批判含めたコメントウェルカムでございます。
1.「サックス演奏力」に関する自己分析
まずは目的別構造化の絵の右側半分の話から。ジャズサックス技法的な項目です。
(1) 音・音色:★★★★☆
いきなり自己評価が高くて読んでる人から見ると興覚めかと思うがw、「音」についてはそこそこイケてるのではないかと思っているのだ。特に、ビッグトーン(無駄にデカい音)は、小さめの音で繊細に吹くプレイヤーが増えている現状、自分の個性として訴求できるストロングポイントになり得るのではないかと思う。
とはいえ、近年特に音が「拡散」気味なので、もう少し焦点を絞る、言い換えると音の密度を高められるとよいとは思っている。あと、左手のサイドキーを使う高音域は最近音が痩せ気味。下記するオーバートーンの練習等でそこら辺の改善も意識してみたい。理想とするイメージとしてはやっぱりクリスポッターだな。
(2) オーバートーン、フラジオ:★☆☆☆☆
「音が良い」とか書いた傍からナンだが、実はオーバートーン(フラジオ)は私の最大の弱点なのだ。学生の頃それなりに練習したつもりなのだが、全くできない(フラジオ出ない)www 。なので、星ゼロでもいいぐらいだww。
長いこと極端なローバッフルのマウスピースを使っていることもあり、マウスピースや、もしかすると楽器のセッティングも関係があるのかもしれないが、同じセッティングでもできる人はヒョイヒョイ吹くし、できないのは私の喉や口腔の構造上の問題ではないかとすら思っている。
とはいえ、コンテンポラリーなジャズサックスではフラジオ音域の使用は避けて通れないので、改めてチャレンジせざるを得ないのだ。誰か教えてください。
(3) 音程:★★★☆☆
ブラバン出身の私としては、そもそも正確な音程を吹く能力、あるいはアンサンブルで周りと音程を合わせていく能力は「強み」だった。のだが、40年近くジャズのルーズなアンブシュアで適当に吹いているせいか、どんどん音程が悪くなっていると認識している。いや、それなりに気づいてはいたのだが、なかなか練習もできないしいいか、と見て見ぬ振りをしてきたということだと思う。いろいろな練習の中で多少意識していく必要があるだろうし、場合によっては奏法そのものを見直す必要がある領域かもしれない。
(4) タンギング/アーティキュレーション:★★★☆☆
私はどちらかと言うと、派手で分かりやすいアーティキュレーションをする一派だと思っている(例の「タンギングしない派」に比べると顕著だw)。もともとコルトレーンとか初期ブレッカーだとか、比較的淡白な表現だったはずだったのだが、いつのまにか、ジョーロヴァノあたりのワザとらしいアーティキュレーションも取り入れて、特に八分音符に関しては、自分でもちょっとやり過ぎではないかと思うくらいである。といいつつ、これもいまや私の個性であり、ネガティブに考えるよりも、「強み」として活かしていくという方向がいいんだろう。
とはいえ、特にこの数年で、練習不足(あるいは老化?)なのか、一音一音の解像度、あるいは、強弱の付け方が曖昧だったり(要は「モゴモゴ」する)、舌と息と指が追いついていなかったり、自分のやりたい事と実際に出てくる音を合わせるような練習が必要であろうとは思っている。ついでに言えば、やはり練習不足で音程とか音価とかがダメダメな演奏も増えているので、ここは謙虚になって基礎からやり直す時期なのかもしれない。
(5) タイム:★★★★☆
タイムについては、例の八分音符理論の話もあり、私にとっては「強み」の一つだと思っていた。と、過去形なのは、20年ぐらい前までは、そこそこのプロでも「なんかタイムがイマイチだな」と思う人が結構いたからだ(言っちゃったww)。しかし、時は流れ、今の若い人はみんな普通にタイム良いよね。その意味ではようやく「平均」ぐらいなのかもしれない。
まあ、タイムと言うのは文字通りのタイム感、だけではなく、音価やアーティキュレーションも含めていかに「スイングするか」に通じる話ではあるので、とりあえず、「強み」とさせてもらって、さらに強化すべきポイントと位置付けておくことにしよう。あと「タイム」の話とはちょっとずれるが、最近当たり前のリテラシーになりつつある「変拍子」については全くついていけてないので、そこも多少意識する必要があるか。
2. 「ジャズっぽいことを思いつく力」についての自己分析
続いて、構造化の図の左側ですね。いわゆる「ジャズリテラシー」に関する自己評価です。
(1) ジャズ理論の理解:★☆☆☆☆
突然だが、ジャズって理系の音楽だと思うんだよねえ。っていうか、音楽そのもの、特に、ハーモニー的な美しさが「音の波」の物理的な現象の帰結だと考えると、理系の考え方の産物と言った方が良いと思う。その意味で、ジャズは感性だ、とか、パッションだ、とかいう言説に関しては私は否定派だ。
と言うわけで、生まれつき文系脳の私にとって、ジャズ理論と言うのは実にハードルが高いわけです。いや、真面目に勉強すればいいのかもしれないけど、今までなんだかんだ避けて生きてきたのは反省でしかない。この間ようやく「ペンタトニックとは何か」が理解できてちょっと感動したぐらいだしwww
幸いにも、子供のころから音楽を聴き、演奏している私としては、経験則上、あるいは、それこそ直感的に、この音やフレーズはイケる、イケないという判断はできる。しかし、その一歩上を目指そうと思えばやはり理論的なアプローチは避けられないだろう。ってのは40年前から分かってるのだが、無精なのでやってなかったのだwww
よって、ちょっと勉強してみようかなと思っているところであります。それこそ、体系的に誰かに教わった方がいいのかな。バークリーでも行くか(嘘)。
(2) フレーズ発想力(音感):★★☆☆☆
まず、大前提として、私には「絶対音感」はありません。特にジャズのアドリブにおいて絶対音感の有無と言うのは功罪あり、あまりポジティブにとらえられないことが多いような気もするのだが、個人的に、管楽器に関してはやはり「思いつく」あるいは「思いついたことをピンポイントで再現する」ために絶対音感があった方が便利だろうなとは思う。羨ましい。
というわけで怪しげな「相対音感」の世界でどうにかしなくてはいけないのだが、これは、簡単なキーならそれなりに出来る、と言うくらいかな。例えばトランスクライブをしていて、調性のわかりやすいフレーズとか、あまり飛躍がないフレーズだとかはそのまま聴こえる≒思いついてその場で再現できる。また、いわゆる「ジャズっぽい(ビバップっぽい)」フレーズも知らないわけではないので、これも、簡単なキーなら思いついて吹くことはできる。
一方で、何かモチーフを思いついて、例えばそれを違うキーで発展させる、ようなことをやりたくなるけど、よく分からなくって断念するようなことはよくある。要は、頭の中でもやっとした音列のイメージはあるんだけど、階名(ドレミファ)に出来ないので吹けないのだ。絶対音感がない以上、頭の中で理屈建てて「転調する」という行為をしなくてはいけないのだが、それができないもどかしさと言うのはたびたび感じるところだ。
結論としては、私が今まで書いたコンテンツで言うと、「インターバル」とか「パターン」とか「トランスクライブ」あたりに真面目に取り組んで、まずは、聞いたこと(≒考えたこと)を音符にする能力を高め、さらに、感覚と理屈を頭の中で結びつける(たとえば、Cのキーで出来ることをF#でもできるようになる)能力を身に着けることが必要なのであろう。
(3) 手持ちフレーズおよびバリエーション:★★☆☆☆
前項は「素から(ゼロから)フレーズを思いつく」みたいなことを前提に書いているが、キースジャレットやウェインショーターみたいな天才(またはキ〇ガイ)以外は、なかなかそんなことはできないのだ。というわけで、以前の論考の中で触れた「リック」とか「キメフレーズ」みたいなものを自らの中に多く蓄積しておくのはイケてるアドリブソロを行うためには極めて重要であろう。
かく言う私にも「八木印のリック(手癖・指癖とも言う)」は何種類かある。どうやって身に着いたのか全く覚えていないのだが、怪しげなクロマチックなフレーズみたいなものもあるし、よく吹いてる。ただし、それをどこでどうやって使うかと言うのはあまり理屈で納得していないw アドリブ中、ここで例のヤツいけそうだな、と思って無理やり使ってみる、という実にアバウトな状況だ。
量で言うと、私の体内に染みついている「リック」は極めて少ないと思っている。ちょっと聴くといろんなことやっているように聴こえるかもしれないが、実は毎度同じことをやっているw (まあ、同じフレーズやリックを繰り返して説得力を持たせるというのは、それはそれで、テクニックの一種ではあろうが)。実証的なリック(要はトランスクライブから得たフレーズ)、理論的な発想から生まれるフレーズやそこからの発展(転調等)も含め、もう少し手持ちフレーズ(リック)のバリエーションは増やした方が良いだろう。
(4) レパートリー(持ち曲):★★☆☆☆
私、あちこちに行っていろんな曲を吹いていると思われがちではあると思うが、実はレパートリー的には非常に限定的だ。特に「リフ(メロディ)を空で覚えていて」「コード進行もなんとなく理解している」曲というと、数えるほどだ(ブルースとアナザーユーとグリーンドルフィンぐらい?)。まあ、曲が始まればどうにかなるというパターンも無くはないが、それにしてもいい加減だ。
特に、オープンなセッションに行くとあまりやる曲がなくて、毎度同じような曲をコールしている。そもそも、曲を覚えようという気がないのかもしれない(最近、色々なところで "East of the Sun & West of the Moon"をコールされるのだが、出来なくて毎回謝ってるwww)。メロディがなんとなく吹ける曲でも、コードが不安なので、お守り代わりにiReal前に置いてチラ見したりというのもやる(結局見ないで適当に吹くことが多いけど)。
やはりそれではイマイチなので、特にスタンダードを中心に、もう少しレパートリーを増やしたい。当然、メロディとコード進行をそれなりにセットで覚えるということであり、コード進行についてはおそらく多少なりとも分析的なアプローチをやりながら覚えるのがいいんだろう(今までやったことが無いのだww)。
(5) 「ジャズ(サックス)っぽい」演奏:★★★★☆
と、上記一つ一つの採点はイマイチだが、全体として「テキトーにジャズっぽく」吹く、というのはそこそこイケてると思うww。曲/曲調によって音色、アーティキュレーション、フレージングを変えたりというのはそれなりにやってるし。以前、素人っぽい演奏の特徴を考えるという嫌味な記事を書いたが、逆に言えば、これをそれなりに避けて演奏できる(少なくともしようとしている)ということで「ジャズっぽい」の複数の要素をそれなりに理解し、咀嚼して吹いているつもりである。評価甘いか。上の方にも書いたが、最近とにかく演奏が雑なので、色々な要素を考えたうえで、丁寧に吹くことを心掛けるべきだとは思っている。
3. 総評
以上の自己評価・分析を改めてまとめてみる。
(1) 「サックス演奏力」についてのまとめ
流石に50年もサックスを続けていたので「サックス演奏力」はそこそこ。
特に「音(ビッグトーン)」と「タイム」については、自らの「強み」として訴求可能な要素である。
一方、まともな基礎練習を40年間やっていないwこともあり、「音程」「タンギング」については課題あり。評価はしなかったが、いわゆる指の動きについても、それなりに衰えている。老化現象なのかもしれないが、全体的に演奏が「雑」になってきており、基礎のやり直しも含めて、練習メニューを組む必要がある。
さらに、若いころからの課題である「オーバートーン、フラジオ」に関しては、改めて一からの取り組みが必要。
(2) 「ジャズっぽいことを思いつく力」についてのまとめ
やはり長いことサックスを吹いていることもあり、それっぽく、は吹けるし、アイディアもあるが、「思い付き」をサックスで再現し、さらにそれを応用していくことに関してはまだまだ。音感(思い付いたものを正確にドレミファで再現する)の一段の強化が重要。
また「思い付き」のバリエーションを増やすために、改めてジャズ理論を用いたアプローチにトライすべき。アドリブについては、理論と実践/感覚を両側から組み合わせるようなアプローチが自然にできるようになるのが理想。
今更だが、レパートリー(持ち曲)が少ない。上記した通り、ただメロディが吹けるだけではなく、コード進行をそれなりに理解できて、理論的なアプローチが可能な曲の数を増やしていく必要がある。
さて、ここまで書いて、これらの分析からどんな練習をしていくかをまとめようと思ったのだが、異常に長くなったので、記事を改めることとする。
というわけで、次回は「重点練習項目編」です。乞うご期待(これから書く)。
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