Do the little thing

中日ドラゴンズの根尾選手が投手に転向するという。かなりの球速もあり期待されているようだ。野球というのは、基本的には投手と、それから投手になれなかった人たちによるスポーツであり、投手というのはそれだけ特別な存在だ。投手から野手への転向という例は多いし、プロ入りして何年か経過してからというのはなかなか難しいようだが成功事例もなくはない。近年でもリック・アンキールのようにMLBで勝利投手になった経験もありながらの野手転向というケースもある。

しかし、その反対に実績ある野手から投手に転向して成功した例はほとんどない。それだけ投手というのは特別なものなのだ。

でも、全くないわけではない。特に、根尾のように野手としての実績が乏しい選手の中には、投手になって大化けした例もある。

例えば、ティム・ウェイクフィールド。大学では強打の一塁手として記録を残しドラフトされたものの、プロでは大成せず、引退前に遊びで投げていたナックルボールで投手として再挑戦したところ大成功し、優勝まで果たしたボストン・レッドソックスの先発陣の一角として活躍し、通算200勝を挙げた。

それから、マット・ブッシュ。高校から2004年にドラフト1位でプロ入りするも翌々週にはクラブで乱闘を起こし告訴されるなど素行に問題があり、いくつかチームを渡り歩く中で打撃が伸びず、小柄ながら高い身体能力を活かすために投手に転向、2012年にはいよいよMLBでの活躍が期待されるところまでの成績をあげるようになったが、その矢先にチームメイトの車で飲酒運転の上で轢き逃げ事件を起こし、2015年まで収監された。その後テキサスでMLBデビューを果たして中継ぎ投手として活躍。2度のトミー・ジョン手術を受けているものの通算でも100イニングを超える程度の登板しかないのでベテランの割にはもう少し現役生活が続きそうだ。

そして忘れてはいけないのがオークランド・アスレティックスの元クローザー、ショーン・ドゥーリトルだ。前年にFA移籍したバリー・ジートの補償として2007年ドラフト1巡目追補として入団し、一塁手兼外野手として膝の故障を抱えながらも2010年には40人枠に入るなど高く期待されていた。しかし結局野手としては大成せず、そのままロースターを外れるも、学生時代は投手も経験していたことから最後の挑戦で投手として2011年の秋のアリゾナの教育リーグに参加したところから運命がいい方に回り始めた。翌2012年をA+級のストックトンで開幕を迎えると、ほぼ直球だけしか投げないのに誰も打つことができず、圧倒的な成績でわずか16試合でマイナーリーグを駆け上がると、6月には打者としては果たせなかったMLBデビューまで達成する活躍を見せた。そして球速は95mp/h程度ながら回転のいい直球でミゲル・カブレラでさえ三振に打ち取る投げっぷりで瞬く間にそのリリーバーとしての地位を不動のものとすると、2014年にはオールスター出場を果たすなどリーグを代表する抑え投手となった。また、ソーシャルメディアの人気者として多くのフォロワーを抱え、ワシントン・ナショナルズ時代には優勝してホワイトハウスに訪問するのがMLBの好例だがドナルド・トランプが障がい者を揶揄するような言動を見せたことに抗議して参加を拒否するなど社会問題に関する発言も多い。2015年にはオークランド・アスレティックスのチームとしてのLGBTサポートを批判するファンに対抗してチケットや数万ドルの現金を地元のLGBT支援グループに寄付するなどの社会活動でも知られている。また、遠征中に各地に独立系書店を訪問しては好きなSFを探してTwitterに写真を載せている。

根尾選手も、ナックルはちょっと難しいので、あとはマット・ブッシュかショーン・ドゥーリトルの二つの道が示されているわけだけれど、どちらに進むべきかは明白なので、頑張ってもらいたいものだ。

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