人生で初めて訪れた”難民キャンプ”でサイエンスショーを見た話
マラウイの協力隊の活動シリーズ第二弾。1回目はこちら👇
🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐
2019年9月の上旬に、マラウイの難民キャンプでサイエンスショーを見てきました。
きっかけは、マラウイで理科教育を教えている竹本隊員のこの投稿です。
”開催決定!”という言葉がまず目に飛んできましたが、”サイエンスショー”、”ザレカ難民キャンプ”などの言葉が次々頭に入り込んできました。
理科実験は見たことがあるものの、”サイエンスショー”は、見たことがありませんでした。また、”難民キャンプ”にも行ったことがありませんでした。
「とりあえず行ってみよう!」
そんな軽い気持ちで”難民キャンプ”で行われる”サイエンスショー”を見に行くことにしました。
マラウイの難民キャンプ概要
マラウイの難民キャンプについて概要を調べたので、簡単に紹介します。
ここからの情報は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)のページから取ってきています。
マラウイには、北部と南部に2箇所難民キャンプがあり、今回は北部の難民キャンプ「Dzaleka(ザレカ)」に行ってきました。
Dzaleka refugee camp(ザレカ難民キャンプ)は、DOWA(ドーワ)地区にあります。
2019年4月30日の時点で38,808名の方がザレカ難民キャンプで生活しています。そのうち大半はDRC:Democratic Republic of Congo(コンゴ民主共和国)からの難民です。
このザレカ難民キャンプから他の国に移住した人もおり、2018年度には、1,069名の方が、Canada, Australia, Finland, Sweden, USAに移住しました。
その他、各国の支援の内容や難民キャンプの現状など、もっと情報を知りたい方はこちらのページをご覧ください。
なお、首都のリロングウェからザレカ難民キャンプまでは、1時間半くらい。
バスで行く場合、ザレカ難民キャンプまでの道のりについては、以下の通りです。(竹本隊員の投稿)
首都から近すぎず、遠すぎず、かつ国のど真ん中にある、それがザレカ難民キャンプです。
ザレカ難民キャンプの中の様子について
初めて難民キャンプに足を踏み入れたが、想像とは違い、難民キャンプといってもマーケット、レストラン、バー、学校など色んな施設がありました。
いくつか写真で紹介します。
コンピューター室
バスケットボールコート(NBAから寄贈)
エチオピア料理屋もありました。
このザレカ難民キャンプには、UNHCR、UNICEF、スウェーデンなどなど色んな国の支援が入っており、マラウイの一般農村地域よりも施設自体は、充実している印象を受けました。
また、ここに住む人たちの顔が、普通のマラウイアン(マラウイ人)とは違うことに不思議な感覚を覚えます。他国からの難民で構成されているから当たり前ではあるのですが。
また、キャンプ内で主に話されている言語はスワヒリ語であり、スワヒリ語の挨拶である「ジャンボ」と声をかけられることもしばしば。僕の好きなチェワ語の「Zikomo(ありがとうの意味)」もあまり通じない。
ここは、マラウイにいながらにして異国のような雰囲気を感じます。
難民の方に話を聞いた。彼は、コンゴ民主共和国で医者をやっていたが、自国での内戦の影響で祖国を追われ、ここに辿り着いていたという。「1日でも早く祖国に帰りたい。」そう彼はおっしゃっていました。
一見すると充実している難民キャンプであるが、”難民”という立場の人々にとって、そこは祖国ではなく、あくまでも一時的に住んでいる仮住まいである。そんな状況にいる人々に自分は何かできるのだろうか、そんなことをモヤモヤと考えていました。
撮影許可をいただいて、子ども達と記念撮影
サイエンスショー「PICO FACTORY」やるまで
今回は、竹本隊員と石川隊員がやっているサイエンスショーを見に行きましたが、これは「PICO FACTORY」と呼ばれ、かつてマラウイの理数科教師分科会が行っていたものです。
「PICO FACTORY」は、子どもたちに科学の面白さを伝えることを目的として、マラウイ全土の各都市や村で無声劇スタイルの実験ショーと現地語による実験解説を行ったそうです。
公演は理数科教師に引き継がれながら、2011年から2015年にかけて64公演、延べ1万人を超える子どもたちの参加を記録。子供たちや現地の教育関係者に科学の面白さや楽しさを伝えることを目的とした本活動は、現地メディアに取り上げられました。
JICAでも、何度か記事になっています。
しかし、協力隊の参加人数の減少に伴い、徐々に活動が縮小。
かつてザレカ難民キャンプでもPICO FACTORYが開催されたとのことだが、しばらくはできていませんでした。
2019年に入り、かつてザレカ難民キャンプでのPICO FACTORYを覚えていたジョンさん(彼自身も難民です)からオファーを受けて、竹本隊員と石川隊員は、PICO FACTORYを開催することになったそうです。
以下、竹本隊員のFacebookより経緯について紹介です。
そんな経緯があり行われたPICO FACTORYでした。
PICO FACTORY開演!
以下が、2019年に行われたPICO FACTORYの様子である。(右が竹本隊員で、左が石川隊員である。)
講演は午前と午後の2回行われたが、2回とも会場が溢れんばかりの人だかりができていました。
そして、子どもだけでなく、多くの大人もPICO FACTORYの活動を見ていました。
「おー!」や「きゃー」というどよめき。
PICO FACTORYは、2名の理数科分科会の隊員による周到な準備によって大成功だった、と個人的には思います。
当日のステージ設営も自分達で一から行い、どこに物をおけば、どう見せれば、子供たちに一番見やすいのか工夫されていました。
一つ一つの準備すべて、観客である子どもの目線になって進められていました。
ショーが終わった後、「あの実験はどうなっているの?」「何で?」と質問する子どもの様子から、PICO FACTORYの目標であった「子どもたちの科学に対する興味関心を育てる」は、大成功したと言えるのではないかと思います。
将来、この中でも1名だけでも「あのサイエンスショーで、僕の人生が変わった。」そう言う子どもが一人でも現れればいいですね。
当日の様子は、マラウイの全国紙でも取り上げられました。
理科教育とは
竹本隊員と石川隊員が書いた報告書からマラウイの理科教育への思いが書かれていました。
これから途上国の理科教育の現状について知りたい人、これから理科教員として青年海外協力隊を目指したい人にぜひ読んでほしいです。
理科教育において、なにか新しいものに触れた際、「なぜだろう?」と思う気持ちを育てることこそが大切であると、現場での活動を通じて強く感じている。理科とは、「なぜ」と思うことから始まり、これまでの知識を基に考え、検証し、答えを導いていくものであると考える。理科や数学の知識だけではなく、答えを導く際の論理的な思考が、社会生活、特に農村部で生活する上でも十分に役に立つものと考えており、長期的視点から見ると、論理的思考のできる人を育てることが、科学技術の発展に貢献すると強く信じている。農村部における小学校はほぼ全般的に、また中高等学校においても地域の進学校を除き実験材料や指導教員が不足しており、授業で実験がなされることは少なく、生徒が実験に触れる機会は少ない。結果として、理科の授業は板書を書き写すだけのものになりがちで、生徒も「理科は暗記をして勉強するもの」という印象をもってしまい、「なぜだろう?」と思える気持ちが芽生える機会が少ない。なので「子どもたちの科学に対する興味関心を育てる」ことを目指すためにサイエンスショーを行う必要性は、隊員だけではなく現地の指導者も強く感じている。
マラウイの途上国が発展していく上では、科学技術分野での人材をもっと増やしていく必要があります。
しかし、農村地域に生まれた子供達はそもそも実験も見たことがないし、科学の楽しさを知る機会もほとんどありません。
そういう状況にサイエンスショーPICO FACTORYという形で、子供達に科学の楽しさを伝えて、科学への好奇心のタネを植える活動は、素晴らしいと思います。
たとえ、それが1回だけになったとしても、いつか、どこかで花開くかもしれません。
2019年9月末で竹本隊員は帰国しました。今後1名となった石川隊員が、このPICO FACTORYをどう継続していくか楽しみです。
🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐🐐
帰国する竹本隊員が作ったYoutube、Malawi Channel(マラウイチャンネル)を引き継ぐことになりました。
よかったらチャンネル登録お願いします!
マラウイチャンネルの創設ストーリー
石川隊員との対談もアップしてます!