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【映画/特集上映】神保町シアター「忘れられない90年代映画たち」特集に通い詰めた記録

※ 2024/08/26までは無料公開、その後は有料となります。ご注意ください。


2024年6月から8月にかけて、神保町シアターで「一度はスクリーンで観ておきたい 忘れられない90年代映画たち」という特集上映が組まれた。テレビ局や広告会社の主導で製作され1990年代に上映された日本映画の特集である。

この時期の映画はソフト化といえばVHSであり、今回ラインナップされた作品のほとんどはDVDにはなっていないし、もちろん配信もされていない。つまりデジタル化されていないので、フィルム映写機が現役の名画座でないと上映できないのである。そしてこんな映画史の本流から外れた作品群は、お高く留まっている名画座には無視されがちであり、神保町シアターでしか実現できないかもしれない。

そんな、もしかしたら二度と映画館で観られないかもしれない90年代の日本映画のうち10本を鑑賞し、簡単にレビューを書いてみた次第である。

『就職戦線異状なし』(1991)

監督:金子修介/脚本:福田卓郎、金子修介/原作:杉本伶一/配給:東宝/上映時間:103分
出演:織田裕二、仙道敦子、的場浩司、和久井映見、羽田美智子、坂上忍

面白かった。テレビ局による内輪ノリの悪ふざけが、30年の時を経て芯を食った社会批評へと変容していて感動する。主人公の大学生が受験する「エフテレビ」を筆頭として大手マスコミはどこもいい加減だと描かれるわけだが、もちろん本作はフジテレビ製作であり、「こんな自虐しちゃって面白いでしょ」というおふざけなのである。しかし職権を濫用して学生の人心を弄ぶ社員とか、セクハラ質問を繰り返す面接とか(しかもその会社のモデルはNHKだ)、現在の観点からだと深刻な社会問題をリアルに描写しているようにも見えてくる。それ以前に重要な点として、物語そのものは「自分にとって本当に大切なものを見つける」という真っ当な成長譚であり、普通にちゃんとしている。監督・脚本が金子修介だから当然ではあるが。ちなみに脚本協力は今をときめく坂本裕二。

『ベル*エポック』(1998)

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