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【短文レビュー/ミステリ小説】『明智恭介の奔走』今村 昌弘・著

『屍人荘の殺人』から始まる剣崎比留子シリーズの前日譚であり、シリーズキャラクターの中でも特殊な立ち位置である明智恭介の活躍を描く連作短編集。なお、剣崎比留子は登場しない。

ミステリ小説に登場する名探偵に憧れる一般人(という変わり者)が、ロマンを求めて日常の謎に首を突っ込んでいく定型パターン。「泥酔肌着引き裂き事件」では助手役の葉村譲との丁々発止なやり取りが見られるし、「手紙ばら撒きハイツ事件」では明智恭介の信念に周囲が感化されるし、王道のキャラ萌えとして抜かりがない。剣崎シリーズの本編のような、ジャンル批評を伴う重厚感は微塵もないが、こういう作品も必要なのだろう。


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